ホンダ「GB350」とロイヤルエンフィールド「ヒマラヤ」 いま日本で買えるネオビンテージ系単気筒の共通項とは

世界で生産されたバイクの3分の1を売り上げる2輪大激戦国インド。そのインド市場を狙ったホンダ「GB350」と、インド生まれのロイヤルエンフィールド「ヒマラヤ」には、納得の共通項がありました。

インド狙いの「GB350」とインド生まれの「HIMALAYAN」、その共通項とは?

 2020年は2000万台を突破したというバイクの大消費国インド。そのインドマーケットでも大きな存在感を持つ「ホンダ」が、2021年春に日本でリリースした「GB350」は、インドでは「ハイネスCB350」というモデル名で、インド戦略を念頭に置き2020年に発売されました。

ホンダ「GB350」(2021年型)に試乗する筆者(松井勉)

 単気筒エンジンはバーチカルシリンダー、つまり直立したシリンダーとなっており、LEDヘッドライトやABS、トラクションコントロールなど現代モデルとして必須装備を持ちながら、車体全体から醸すスタイルはトラッド系バイクです。

 と同時に、排気量348ccの空冷単気筒エンジンは、ボア×ストロークの数値が70mm×90.5mmと、まれに見るロングストロークタイプ。単気筒400ccクラスで長年孤軍奮闘してきたヤマハ「SR400」のそれが87mm×67.5mmですから、「GB350」の前ではショートストロークタイプと言っても差し支えないほどです。

 エンジンから感じる味わい、風合いには、「SR400」も「GB350」もそれぞれの個性がありますが、ここではインド市場を睨んだその特性作りや全体のムードを、インド生まれの単気筒モデル、ロイヤルエンフィールド「HIMALAYAN(ヒマラヤ)」との比較で確認してみようと思います。

 ちなみに「ヒマラヤ」のエンジンも空冷単気筒、バーチカルシリンダーです。しかもシリンダーの大きさやクランクケースのどっしりとした佇まいまで、両モデルの共通性を感じます。このあたりは、元々オフロードバイク用エンジンとして開発され、コンパクトさを狙った「SR400」のそれとは大きく異なっています。

ロイヤルエンフィールド「HIMALAYAN(ヒマラヤ)」とホンダ「GB350」

「ヒマラヤ」のエンジンは排気量411ccと、日本で運転するには大型自動二輪免許が必要です。また輸入車ながら62万5000円(税込み)というクラっとくるプライスも魅力。それはさておき、エンジンのもうひとつの共通項は、「ヒマラヤ」もボア×ストロークが78mm×86mmと、「GB350」ほどではないもののれっきとしたロングストローク型エンジンです。

「ヒマラヤ」にトラクションコントロールは装備されませんが、ABSは標準装備。ロイヤルエンフィールドとしては初めてのアドベンチャーバイクというポジションで、15リッターの燃料タンク容量まで「GB350」と同じです。

 乗ってみると、大きなボディながらオフ車系とは思えない足つきの良さ。ツーリングに有り難いフェアリングや、夜間も明るく道を照らす大きなヘッドライト、ブレーキやクラッチのタッチはホンダに一歩譲るものの、全体に不満はありません。そのエンジンはドコドコと鼓動感がありつつ、振動を効率的に抑えるバランサーを備えるため、ロングツーリングでも不満なく走れます。

 また、高回転まで回しても、パワーとトルクがダレることがありません。「GB350」よりはダイレクトなレスポンスがありますが、決して鋭いエンジンではなく、ゆったりした気分にさせてくれます。

 しかし、ひとたびダートに足を踏み入れると、トラクションコントロールなど無くてもエンジンの一発一発の爆発をしっかり路面に伝える印象です。「ズズ」とは滑りますが「スザー」とは滑らない。グリップ感が凄いのです。実際に「ヒマラヤ」で、インドのヒマラヤにある5000メートル超のルートを走る冒険ツアーをする人もいるとか。

ロイヤルエンフィールド「HIMALAYAN(ヒマラヤ)」に試乗する筆者(松井勉)

 なるほど、インドの道に合わせた設定なのでしょうか。あるいは、イギリス時代に入ったバイクの印象がそのまま大切に受け継がれているのか。いずれにしても現在に通じる魅力を持っています。

 その視点で「GB350」に乗ってみました。「ヒマラヤ」より排気量は63cc少なくても、ピストンが上下に動く長さは「GB350」の方が4.5mm長い90.5mmです。走り出しはマイルドですが、2速にシフトしてアクセルを開ければ、ヒマラヤ同様「ダダダダ」という蹴り感を伝えつつ、速度を増す力強さが魅力です。

 この路面を掴む印象や、市街地から扱いやすいサイズの上限当たりを狙ってきたあたりは「ヒマラヤ」同様。インド人ライダーが求める部分なのかもしれません。

 そして、インドの交通環境、路面状況、天候変化といった部分にも、このゆったりしたポジション、しっかり路面を掴むエンジン特性はマッチするのではないか、そう推測するのです。

ホンダ「GB350」(2021年型)と筆者(松井勉)

 逆に、その路面を問わない「走破性」を持つ2台、とくに日本で話題の「GB350」は、どんな道でもしっかり走れる素質を持っています。話題性としてはネオクラ系な「GB350」のルックスです。生産中止になった日本メーカー最後のビッグシングル系ロードスポーツ、ヤマハ「SR400」の受け皿になるのか? という期待を持つ人もあるでしょう。しかし、インド戦略の個性は、元を辿れば、トラッドなブリティッシュバイクにも通じるスポーツ性とアドベンチャー感に溢れている、そう読み解くのも面白いかもしれません。

 さらに言えば、現在のトライアンフ等からこうした排気量クラスの単気筒モデルが出てくる可能性はそうは高くない、とも思うので、このインド由来の単気筒エンジンは、やはり注目なのです。

【了】

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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