モータースポーツの門戸を大きく広げるBMW ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.102~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、レーシングマシンを販売するBMWが凄いと言います。どういうことなのでしょうか?

大金を積む以前に、そもそも限られた世界の人間しか乗れなかったモノが!?

「BMWの純レーシングマシンが、販売店で購入可能になった……」

 こんな夢のようなニュースを聞いて、僕(筆者:木下隆之)は心が沸き立った。販売されるのは「M2 CSレーシング」だ。ドイツ本国のBMW「M」社と「BMWモータースポーツ」社が開発したマシンであり、直列6気筒3リッターツインターボを搭載。最大馬力は450psだというから、怒涛のパフォーマンスを誇る。

BMWのレーシングマシン「M2 CS Racing」

 アジアで唯一「BMW M MOTORSPORT DEARLER」の権利を株式会社モトーレン東都(Toto BMW)が取得。「BMW Team Studie」代表をスーパーバイザーに招聘し、マシンを販売することになった。

 なんて、いかにもスクープ記事風に書き始めたけれど、けっこう前からそのニュースは知っていた。というのも、僕はすでにBMW Team Studieとねんごろの関係にあるし「M2 CSレーシング」で富士24時間に出場もし、総合12位に導いている。

 ボディサイドには「Toto BMW」のロゴが燦然と輝いていた。ピットにはBMWジャパンのM担当者がピッタリと帯同している。いわば僕は、BMWの息のかかった首輪付き、子飼いのレーシングドライバーなのである。餌を与えられ、ご主人様の命令に従順に従ったわけだ。だから「M2 CSレーシング」が正規ディーラーで販売されることは、薄々気がついていたのである。

 この話の凄いところは、街道筋の販売店でレーシングマシンが買える、ってことだ。一般的にレーシングマシンはその特殊性ゆえ、レース界とズブズブの関係にあり、ゴリゴリのコネクションを利用しないと手に入らない。

 だが「M2 CSレーシング」は、24時間耐久レースでさらりとノートラブル完走を果たすばかりか、激戦のなか総合12位でクラス表彰台を獲得するという戦闘力を持ちながら、極端なハナシ「あのぉ、クルマください……」ってな気軽な感覚で(?)レーシングマシンを手にできる、ということなのだ。

BMW Motorradのレーシングマシン「M 1000 RR」

 これはモータースポーツの門戸を大きく開いたと言っていい。そう、輸入車のワークスマシンを、誰もが手にすることができる、そこが凄いのである。

 と、思っていたら、そもそもBMWは、レーシングマシンの販売には造詣が深い。すでにBMW Motorrad「M 1000 RR」を販売しているではないか。最高速度306km/hだなんて物騒な数字を掲げているのだから、これはもう狂気である。しかも「M 1000 RR」には、一般的にはまったく必要がない「ピットロードリミッター」まで装備されているモノモノしさである。

 つまり、今回の革命的な施策によってBMWは、2輪と4輪の両方のレース仕様を販売する正規輸入元になったというわけである。

 なんだか凄いことですな。「駆け抜ける歓び」ハンパないっす!

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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