新型コルベットに乗って思う、ホンダ「CB400SF」に通ずる伝統 ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.106~
レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、新型コルベットに乗って、あらためてホンダ「CB400SF」に通じる伝統を思うと言います。どういうことなのでしょうか?
乗らず嫌いはよろしくない、意外なところに発見がある
かつてはコルベットを所有していたというのに、この日は気が重かった。僕(筆者:木下隆之)が大好物のコルベット、その新型の試乗車が準備されているというのに、である。こんな日は滅多にあるもんじゃない。

というのも、新型コルベットは伝統のFR駆動から決別、ミッドシップに宗旨替えしていたからである。長いボンネットと小さなキャビン。呆れるほど太いタイヤと低い車高。これがカッコ良くてコルベットを買ったのに、趣きが変わってしまった。「フェラーリやランボを真似したコルベットなんか乗りたくねぇよ」って気分だったのである。
しかし、ドライブして乗らず嫌いを悔い改めた。搭載するエンジンは伝統のLT2型。V型8気筒6.2リッターNAだ。最高出力502ps、最大トルク637Nm、動弁系はいまだにOHVである。それでもエンジン回転数は上までシュンシュン回る。コルベットらしさの象徴であるV型8気筒を前から背後に載せ替えただけで、アメリカンV8魂には一点の曇りも無かったのだ。

アクセルペダルを床踏みしたらもう最後、虜である。排気量が6.2リッターもあるから低回転トルクが強烈なのはご想像の通り。回転計の針の上昇に比例してパワーが上積みされていく。同時に躍動感も倍々だ。トップエンドで回転リミッターに頭を叩かれて我にかえる。それまで脳天を刺激するのである。
バイブレーションも快感の源だ。8気筒もあるから爆発密度が整っている。胃袋を震わす振動が心地良い。8速ツインクラッチのシフトは電光石火の如く素速い。エンジン搭載位置が変わっただけでは、コルベットの魅力はまったく薄れていなかった。8気筒が減りつつある世知辛いこの世にあって、いまだにV型8気筒を受け継いでくれたコルベットに感謝である。
そこであらためて感じるのは、ホンダ「CB400スーパーフォア」と同質の感情である。

中型自動二輪免許最大の排気量であり、このクラスではもはや希少な直列4気筒エンジンを搭載するこのバイクも、マルチゆえの密度の整ったエンジンフィーリングがあり、腹に響くバイブレーションが心地良い。右の手首をグビッと捻り続ければグイグイと速度を上げていく。1万回転を超えたあたりから振動と音質が明らかに変化する。快感が足先から脳天に突き抜けるのだ。

コルベットと言ったらV型8気筒である。CBと言ったら直列4気筒である。やっぱり伝統って、頑固に守り続けることで生まれるんだよなぁ……と思い、この日はとてもいい1日になった。気分は晴れ晴れである。
【了】
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。







