【MotoGP第10戦スティリアGP】世界戦に挑む中上貴晶選手 追い上げのレースを展開して5位フィニッシュ

2021年8月8日、MotoGP第10戦スティリアGPの決勝レースがオーストリアのレッドブルリンクで行なわれました。日本人ライダーとして唯一、MotoGPクラスに参戦する中上貴晶選手(ホンダ)は、5位フィニッシュを果たしています。

シーズン後半戦開始、中上選手は5位フィニッシュ、ホンダライダー最上位

 MotoGP第10戦スティリアGPは、ひと月のサマーブレイクを挟んで始まる2021年シーズン後半戦最初のレースです。そしてこのスティリアGPの木曜日、話題をさらったビッグニュースがありました。ロードレース世界選手権に26年間参戦し続けたバレンティーノ・ロッシ選手(ペトロナス・ヤマハSRT)が今季限りでの引退を発表したのです。MotoGPはよく知らなくても、ロッシ選手の名前を聞いたことはある、という人もいるほど、高い人気、知名度を持つライダー。サマーブレイク中に来季の去就について決断する、そう語っていたロッシ選手は、2021年シーズンをキャリアの最後としたのでした。

ホンダのマシンを駆り、2021年シーズンのMotoGPクラスに参戦する唯一の日本人ライダー、中上貴晶選手(#30 LCR Honda IDEMITSU)

 こうして始まったスティリアGPは、不安定な天候のレースウイークとなりました。金曜日は午後に雨が降り、ウエットコンディション。土曜日は終始ドライコンディションとなりましたが、決勝レースが行なわれた日曜日の午前中は雨が降り、路面を濡らしました。

 幸いにも、MotoGPクラスの決勝レースが始まるころには路面が乾き、ドライコンディションでレースが始まりました。中上選手は4列目10番グリッドからのスタート。しかし、3周目に赤旗が提示され、レースは中断となります。コース上でバイクが炎上したためでした。

 アクシデントは3コーナーで起こりました。ダニ・ペドロサ選手(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)が立ち上がりで転倒を喫し、コース上に残ったバイクにロレンツォ・サバドーリ(アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)が突っ込んでクラッシュ。このクラッシュによって、コース上で2台のバイクが炎上してしまったのです。

 コースの状況を復帰させるため、レースは約30分間中断。ペドロサ選手はピットに戻り、再開後のレースにも出走しましたが、サバドーリ選手は欠場。右足くるぶしを骨折し、9日に手術を受けました。

再開されたレース序盤、中上選手は7番手にポジションを上げる

 再開されたレースは、当初全28周のレースだったところ、1周減算されて27周で行なわれました。中上選手は再び10番グリッドからスタートすると、序盤から7番手に浮上。レース中盤以降は6番手にポジションを上げて、5番手のヨハン・ザルコ選手(プラマック・レーシング)を追いかけました。その差は2.5秒以上。しかし、中上選手は少しずつザルコ選手との差を詰めていきます。その後、上位を走るライダーの転倒によってザルコ選手が4番手、中上選手が5番手に浮上しました。

 最終ラップを迎え、中上選手はついにザルコ選手をとらえます。4番手にポジションを上げた中上選手。しかしその背には、やはり後方から追い上げてきていたブラッド・ビンダー選手(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)がいました。中上選手はビンダー選手に交わされ、惜しくも5位でチェッカーを受けました。

スティリアGPで優勝したのは、ルーキーのホルヘ・マルティン選手(プラマック・レーシング/ドゥカティ)

 予選が行なわれた土曜日、中上選手はバイクのフィーリングに苦しんでいました。しかし、決勝レースでは10番グリッドからライダーとポジション争いを繰り広げ、さらにホンダに乗るライダーとして最上位の結果を残しています。レース後、中上選手に前日からどのような変更を施したのかを尋ねました。

「昨日の夜にミーティングをして、僕の感じていることを(チームに)詳しく説明し、バイクのフィーリングを改善したいと説明しました。そして、バイクをちょっと変更したんです。車高を少し変えたら、フロントのフィーリングがよくなりました。それでペースがよくなったんです」

 一方で、じつはレース中に、ガソリン残量についての警告が出ていたと言います。

「レース中、燃費が少し心配でした。警告が出ていたので、マッピングを切り替えないといけなかったんです。“レースを完走できなかったら……”とナーバスにもなりました。でも、マネジメントできました。

 次のレースに向けて、電子制御やバイクのフィーリングについて、よくしたい部分があります。でも、今日のレースでのパフォーマンスには満足していますよ。序盤から6、7番手を走ることができましたから」

レース中、燃費が心配だったという中上選手。それを感じさせない力走だった

 次戦は同地レッドブルリンクでの連戦となる第11戦オーストリアGPです。8月15日に決勝レースが行われます。同じサーキットでの連戦は、すべてのライダーが前週の経験、データを持つために差が詰まりやすい傾向にあり、より接戦が繰り広げられるはずです。その中で、中上選手がどのような戦いを見せるのか、注目していきましょう。

【了】

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Writer: 伊藤英里

モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。

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