KTM「250アドベンチャー」は手軽さと必要十分な装備で冒険の敷居を下げてくれる存在

KTMが得意とするアドベンチャーカテゴリーの中で、最小排気量モデルが「250アドベンチャー」です。日本へは2020年12月より導入され、車検不要の手軽さと本格的な装備が多くのライダーに評価されています。試乗しました。

KTMアドベンチャーワールドへのエントリーモデルとして

 KTMが得意とするアドベンチャーカテゴリーの中で最小排気量モデルが「250 ADVENTURE(250アドベンチャー)」です。2020年12月に日本へ導入され、車検不要の手軽さと本格的な装備が多くのライダーに評価されています。

KTM「250 ADVENTURE」に試乗する筆者(伊丹孝裕)

 ワンランク上のモデルとして「390アドベンチャー」がラインナップされていますが、大部分のコンポーネントを共有しています。異なる点は、排気量が373ccから248.8ccへ引き下げられた他、サスペンション調整機構やメーター、タイヤ、電子デバイス、ヘッドライトなどの装備が一部簡略化されたり、より低コストのモノに換装されています。

 結果、「390アドベンチャー」よりも10万円安い、72万9000円というなかなか魅力的な車体価格(消費税10%込み)を実現。ホンダ「CRF250ラリー」が74万1400円、ヤマハ「ツーリングセロー」(生産終了)が64万4600円、スズキ「Vストローム250」が61万3800円、カワサキ「ヴェルシスX 250ツアラー」が70万4000円から72万500円であることを踏まえると、「ヨーロピアンメーカー=割高」というイメージは当てはまらず、ちょうどいい隙間に投下されたことが分かります。

 ただし、ひとつだけ「やっぱりヨーロピアン規格だなぁ」と思わせる部分があります。855mmのシート高がそれで、身長174cm体重63kgの筆者(伊丹孝裕)が乗ると、両足のツマ先はなんとか接地する程度。車重は156kg(乾燥重量)と比較的軽く、車体がスリムなためプレッシャーはないものの、小柄なライダーは一度ディーラーなどで確認しておいた方がいいでしょう。基本的にアジアやインドのユーザーをターゲットにしていることを踏まえると、もう少し下がることを期待します。

シート高855mmの車体に身長174cmの筆者(伊丹孝裕)がまたがった状態

 さて、この足つき性がハードルにならないのであれば、あとはひたすら楽しめるでしょう。なにより印象的なのが心地よく吹け上がるエンジンで、スロットルレスポンスのダイレクト感はKTMならではのもの。30PS(22kW)/9000rpmの最高出力は、ライバルモデルを圧倒的に凌ぐだけでなく、単気筒ながら2気筒の「ヴェルシスX 250ツアラー」の33PSに迫るほどのスペックが与えられています。

 もっとも、高回転域のパワーに特化したエンジンだとオフロードやストリートで扱いにくくなりますが、ストップ&ゴーを苦もなくこなす十分な低速トルクを発揮。スリッパー機構を備えるクラッチはレバーの操作力も軽く、街乗りを快適にこなすフレキシビリティも持ち合せています。

 ホイールはフロントに19インチ、リアに17インチを装着し、ハンドリングにクセはありません。高速巡行時の安定感とコーナーでの軽快感がほどよくバランス。街中から高速道路、そしてワインディングへ至る長距離ツーリングをこなしたとしても、ストレスを覚えることなく一日を終えることができるはずです。

KTM「250 ADVENTURE」(2021年型)

 足まわりは特別ハイスペックなものではありません。とくに前後WP製のサスペンションは、リアにプリロード調整だけを備える簡易なものながらストローク感に不満はなく、ブレーキの制動力も然り。このブレーキにはROADとOFF ROADの2モードが用意され、OFF ROAD選択時にはリアブレーキのABSをキャンセルすることもできるのです。

 装備面でネガティブな要素を挙げるなら、標準装着されているMRF製タイヤの接地感でしょう。セミブロックタイヤであることを差し引いてもアスファルト路面でのグリップ力不足は否めず、オンロード走行がメインのライダーは、よりグレードの高いタイヤへの交換をおすすめします。

車体構成は「390アドベンチャー」とほぼ共通。フロント19インチ、リア17インチホイール、前後WP製サスペンションを装備。燃料タンク容量は14.5リットル、フレームはKTMお得意のスチール製トレリス(トラス)構造。乾燥車重156kg

「390アドベンチャー」にはトラクションコントロールが備わる他、コーナリングABSも機能。また、メーターはフルカラーのTFTディスプレイを採用するなど、ある程度の格差があるのは事実です。

 とはいえ、直接比較しなければエンジンには充分な余力があり、走りの本質は削がれていないこともまた事実。ツーリングでも高いスポーツ性を求めるライダーにとって、優れたコストパフォーマンスを提供してくれるモデルが、この「250アドベンチャー」と言えます。

【了】

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Writer: 伊丹孝裕

二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。マン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムなど、世界各国のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。

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