生まれたときからスポーツバイクでした ヤマハの250スクーター「XMAX」の走りはどうだ?

2018年に新登場となったヤマハ「XMAX ABS」は、上質なスタイリングと軽快な走行性能を持つ250ccクラスのスクーターです。2021年モデルでマイナーチェンジされ、あらためて2020年カラーに試乗しました。

精悍な顔つきと上質なスタイリング、走りはどうだ?

 フロントマスク、リアエンドに「X」をモチーフにしたデザインを取り入れたクール系250スクーター、ヤマハ「XMAX ABS」(以下、XMAX)は、LEDヘッドライト周りやリアのデザインからはどこかSFアニメの実写版に登場する異星から来た高い知能を持つ生物……という印象と同時に、人の想像や発想レベルの高いデザインルームでのびのび作られたと想像します。なんと言ってもドラマチックです。

ヤマハ「XMAX ABS」(2020年カラー)に試乗する筆者(松井勉)

 250ccクラスのスクーターが、大きさや威厳を誇るようなスタイルと装備だったビッグスクーター全盛期、ヤマハには「マジェスティ」や「グランドマジェスティ」、そしてアメ車のローライダーを思わせるスタイルがウリだった「マグザム」という3タイプのスクーターがありました。それらに比べると、スクーターのデザインは明らかに変わり(進化し)、2018年に新登場となった「XMAX」は、スポーツマシンがトランスフォームしたようも見えます。

 各部を見ても、インドネシアで生産されるこのモデルのクオリティに生産技術の高さが感じられ、どこ製なのか、ではなくヤマハ製のバイクであることは明解です。

 搭載されるエンジンはオフセットシリンダーの採用などでしっかりとパワーとフリクションロス低減を図った技術を盛り込み、走りと環境性能を両立させたのも特徴です。また、走りに注力するだけに「TMAX」同様フロントフォークをボトムブラケット、アッパーブラケットのふたつで支持するスポーツバイクと同様の手法を採ったのも特徴と言えるでしょう。

 フロント15インチ、リア14インチのホイールを組合せる足まわりも、ハンドリングを磨いたことがアピールされています。さて、乗ってみるとどうなのでしょうか。

シート高795mmの車体に身長183cmの筆者(松井勉)がまたがった状態

 跨がると、シートポイントとハンドルバーの位置関係から上体は後傾する印象ではなく、この点もスポーツバイク的。シート下にスズキ「バーグマン400」をも上回る45リットルの収納スペースを確保したトランクを持つためか、ややシート幅があり、地面への足付き感が他の250クラスのスクーターより高いかな、というのが第一印象。しかしこれは、走るウチに慣れてしまうタイプのもので、シート前方に座るとより足つき感が良いことも解ったので、体格の大きな筆者(松井勉)がシート後方に腰をおろしているのも一因のようです。

 タコメーターとスピードメーターの間にマルチファンクションディスプレイを備えるインストルメントパネルは、外観からイメージする斬新でドラマチックさはさほど感じませんが、見やすさに死角ナシ。情報を視線ひとつで正確に把握できるのはさすがです。

 ヤマハが「BLUE CORE(ブルー・コア)」と命名したコンセプトに基づいて作られたエンジンについて少し細かい解説をします。無駄な振動が少なく、ノイズレベルも低く抑えられています。そしてCVTを通じて後輪に伝えられるパワーは、右手ひとつで加速、減速を調整するスクーターにとって、両者のチューニングとそのマッチングが重要なファクターです。その点「XMAX」のそれは、3000rpmほどから力強い蹴り出しがあるギア比を選択し、180kg以下に抑えた車体を軽々と前に押し出します。また速度が乗り、一定速になってからの速度の調整も、アクセルひとつで追い越し加速も欲しい分を直感的に手に入れやすいもの。ライディングにストレスがありません。ゼロスタート時に少し高めの回転を維持しながらイッキに増速するところなど、文句なしに速いと感じさせるのです。

排気量249ccの水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ「BLUE CORE」エンジン搭載

 市街地でのハンドリングは、良く言えばどっしり、細かく言えばやや重たい印象がありました。交差点を曲がろうとすると、ややフロントが切れ込むような挙動があったので、少々タイヤの空気圧が少ないのでは、と計ってみると、逆に規定よりも1割ほど高めでした。とりあえずガソリンスタンドでタイヤの空気圧ゲージをお借りし、空気圧を合わせてみると、これがよりナチュラルなハンドリングの方向に変化しました。

 パワーに余裕がある印象は郊外の道でも同様。少ないアクセル開度で加速し、欲しければさらにひねるとエンジン回転が5000回転あたりに上昇、CVTらしくエンジン回転が一定のまま速後が伸びる気持ち良い瞬間です。

 荒れた路面ではややサスペンションが硬めの設定なのか、もう一声タイヤの接地感が欲しい印象がありました。しかし、ワインデンィングでスポーツバイクのように左右へのリーンアングルを深く、しかも素早く切り替えし、傾けたりするアクティブなライディングをすると、「XMAX」は待ってましたとばかりにその動きに追従してくれます。そうするとこれまでやや重たいと感じていた動きがウソのように軽快さが顔を出し、硬めに思えたサスペンションもそれにバランスするように活き活きとストロークします。当然そうした入力荷重が大きいほうがタイヤの接地感も高く、走りのバランスがとてもいい。

ヤマハ「XMAX」は、アクティブなライディングに応えるスポーツバイクのようなキャラクター

「XMAX」はスポーツバイクでした。この走りの性能を味わうと、市街地で脳内に浮かんだ疑問符は解消。街乗りコミューターではなく、積極的に走りに行く、そんな人にピッタリの250スクーターだったのです。ラゲッジルームの容量もたっぷりで、ツーリングシーンを含め、スタイルを楽しめる1台なのです。

※ ※ ※

 今回試乗した車両は2020年モデルのカラーリング「マットレッド」です。2021年7月に発売された、環境規制に対応したマイナーチェンジモデルは新色全4色展開となっています。価格(消費税10%込み)に違いはなく、65万4500円です。

【了】

【画像】ヤマハ「XMAX ABS」(2020年型)の詳細を見る(16枚)

画像ギャラリー

Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

最新記事