電動バイクは回生ブレーキで走りの面白さが広がる!? BMW「Cエボリューション」を検証する
BMWモトラッドのスクータータイプの電動バイク「Cエボリューション」を約2週間にわたって走らせ、電費や高速道路の走行など、いくつかの面で検証を行ないました。今回は、「電費」「充電時間」を除いたいくつかの側面で、気になったところに触れていきたいと思います。
モードごとに異なる回生ブレーキ
BMWモトラッドのスクータータイプの電動バイク「C evolution(シー・エボリューション)」を約2週間にわたって走らせ、電費や高速道路の走行など、いくつかの面で検証を行ないました。今回は、「電費」「充電時間」を除いたいくつかの側面で、気になったところに触れていきたいと思います。

まず取り上げたいのは、回生ブレーキです。「Cエボリューション」にはそれぞれ、回生ブレーキの利きと加速が異なる4つの走行モードがあります。ブレーキをかけるとバッテリーにエネルギーが回生され、その度合いに応じて発生するのが回生ブレーキです。内燃機関のバイクのエンジンブレーキに近いものですが、現状、電動バイクでこの利きを選べるモデルは多くはありません。
選べる4つのモードは、回生ブレーキの利きが強い分、バッテリーへ回生されるエネルギーも大きく、同時に加速については制限されている「ECO PRO(エコ・プロ)」、回生ブレーキの利きが緩やかで、加速の制限がない「ROAD(ロード)」、「エコ・プロ」と同等の回生ブレーキと、「ロード」と同等の加速を備える「DYNAMIC(ダイナミック)」、そして、回生ブレーキがなく、加速が制限されていない「SAIL(セイル)」です。

自分の走りのスタイルや状況に応じて、回生ブレーキの利きを選ぶ、それは電費のためだけではなく、走る楽しみを生むのではないでしょうか。たとえば「ダイナミック」では回生ブレーキがよく利くので、スロットルを戻すだけで減速、そのまま停止することもできます。逆に、あまり利きすぎるのが苦手なら「ロード」や「セイル」を選べばいいわけです。
将来的に、さらに回生ブレーキの利きを細かく設定できたり、走行中に切り替えが容易なものになれば、趣味性の高いスポーツ寄りの走行も楽しめるのではないか、そう感じられたのが、「Cエボリューション」の4つの走行モードと、それによって変わる回生ブレーキでした。電動バイクの走りの楽しみを生む、ひとつの要素となるのではないでしょうか。
275kgの車両重量はメリット? デメリット?
「Cエボリューション」の車両重量は275kgです。身長153cm、体重42kgの筆者にとっては、気軽に乗れる重さではありませんでした。バイクを降りての取りまわしは、筆者(伊藤英里)の場合、フラットな路面でもなければほぼ不可能。リバース機能があるため、またがって取りまわすのが現実的でした。それほどの重さはあります。もちろん走り出せば問題ありませんが、停止の際、少しでも傾けばギクリとするほどの重さが片足にかかります。

しかし、高速道路の走行ではこの重さの意味をしみじみと感じることになりました。基本的に電動バイクはスロットルを回すと、ゼロから100までのトルクが一気にやってきます。それが電動バイクの特性です。この加速感は内燃機関のバイクとは違い、“速さ”ではなく“その速度”に達するまでの加速が強烈なのです。“ドン!”と体ごと押し出されるような、ロケットのような加速感です。
筆者はこれまで原付一種や原付二種の電動バイクに乗り、一般道の速度域でも、そういう加速感に不安定感のようなものを覚えたことが何度もありました。慣れない電動バイクの加速感に加え、その加速に完全に適応していないような車体に対し、不安を感じていたように思えます。その点「Cエボリューション」では、そうした不安を感じることはありませんでした。

275kgの重さがあるからでしょう。高速道路で一気にスロットルを回しても、車体がしっかりと安定するのです。走らせるうちに、バッテリーなどの重たいものが中央下部に集まっているこの配置もまた、そうした安定性に貢献していることに気づきます。
小回りや取りまわしという点で、重さは確かにデメリットです。ただ、「Cエボリューション」の高速道路での走りを知ると、この重さに納得がいきます。そしてまた、航続距離という課題は残るものの、「Cエボリューション」は本来、まっすぐに長い道を走りぬくのに素晴らしいバイクなのだろうとも感じたのです。
タンデマーにも腹筋が必要
今回、ライダーとしてだけではなく、リアシートに座り、タンデマーとして「Cエボリューション」に乗りました。「Cエボリューション」は車格が大きく、リアシートも広めです。感触では少し硬さを感じたものの、広い座面、余裕のある膝の曲がり角など、快適そのもの。また、電動バイクなのでエンジンからやってくる熱の影響もありません。酷暑の夏、都内の渋滞でふと気が付きました。

内燃機関のバイクのタンデムと少し違うな、と感じたのは発進のとき。内燃機関のバイクよりも、発進時に体が後方に持っていかれる感覚が大きかったのです。リアシートではライダーの手の動きに合わせて体に準備をさせるものですし、またライダーは発進時、かなり配慮していたと思います。それでも、電動バイクの加速感と負荷はタンデマーには意外と大きく感じられ、「腹筋が鍛えられそう」などと思ったりもしました。
だからこそ、車体後方にあるグラブバーは非常にありがたい存在でした。もしかしたら、タンデムを想定する電動バイクには“しっかり握り、体を支えることができる”後方のグラブバーは必須……になるかもしれません。
電動バイク「Cエボリューション」の奥深さを知った2週間。知れば知るほど、新しい可能性や面白さに気づくことができそうです。
BMWモトラッド「Cエボリューション」は、最高出力35kW(48PS)/4650rpm、定格出力19kW(26PS)で、最高速度129km/h。普通二輪免許以上で運転することができます。価格(消費税10%込み)は159万円です。
【了】
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。