1.8リッター巨大ジャーマニークルーザーに死角なし! BMW R18Bドイツ試乗

ドイツ・フランクフルトにて開催されたBMW Motorrad『R18B(アール・エイティーン・ビー)』のメディア向け発表/試乗会に、クルーザーバイクに造詣が深いバイクジャーナリストの青木タカオさんが参加し、乗り味からスタイリングまで徹底的に分析しました。

ネガティブオフセットで秀逸なハンドリングに!

 ドイツ・フランクフルト近郊、およそ260kmを『R18B』で走ることができました。クルーザーということで、アウトバーンを延々と走り続けるのかと思いきや、先導役が案内してくれたのはほとんどがワインディング。切れ込みやアンダーステアを感じない、バランスの良いニュートラルなハンドリングが味わえるから驚きを隠せません。

BMW Motorrad『R18B』にバイクジャーナリストの青木タカオさん試乗

 大型フェアリングがハンドルマウントされる上、10.25インチの大型カラーモニター、4連装のアナログメーター、さらにスピーカーまでもコクピットに備わるので、ハンドリングはさぞかしヘヴィだろうと試乗前に想像しましたが心配無用。コーナーエントリーでは、水平対向2気筒エンジンならではの低い重心から素直に車体が寝ていき、安定性と軽快感を両立したステアリングフィールを実現しています。

安定性と軽快感を両立したステアリングフィールを実現

 これはフォークオフセットをステアリングヘッド(操舵軸)よりライダー寄りに逆オフセットし、トレール量を稼ぎつつハンドリングを犠牲にしないようキャスター角を小さくしたことで獲得。通常、トリプルツリーはライダーから見ると▽の形ですが、△にする手法を用いているのです。

目をみはる高速巡航力

 アウトバーンを走れば、フェアリングは整流効果が高く、風の巻き込みを感じませんし、車体は振動もなく落ち着いています。高速巡航力の高さに舌を巻くばかりです。

高速巡航時でもフェアリングは整流効果が高く、風の巻き込みを感じません

『R18B』は車名の末尾に“B”が付くことからもわかる通り、スタイリッシュなバガーカスタムルックですからウインドシールドはシンプルに短くカットされていますが、それでもライダーの目線近くまで高さがあり、ウインドプロテクションの機能をしっかり果たしてくれます。

 アクティブ・クルーズ・コントロール(ACC)が日本仕様では標準装備され、長距離を快適に走りたいクルーザーにこそ欠かせない装備であることを実感します。フェアリングに組み込まれたレーダーセンサーが前車との車間距離を検知し、自動的に加減速。セット後も1km刻みあるいは10kmごとに車速の設定が手元のスイッチででき、操作に慣れればもうACCはセットしたままとなりました。

 クルージング性能なら同時に登場した大陸横断ツアラー『R18トランスコンチネンタル(TC)』が、エアフラップやレッグシールドを備え、さらに上回りますからTCで高速道路を走る機会を得るのも今後楽しみでしかありません。

足つき性◎、ゆったりとした乗車姿勢

 実車を目の当たりにしてすぐに感じる第一印象は、BMWらしい上質感。大型フェアリングから容量を24Lに増やした燃料タンクを経て、スムージングが施されたテールエンドへ流麗でグラマラスなラインを描きます。

ファーストエディションは、各部にクロームメッキを施し、コントラストカットのホイールを採用

 今回乗ったファーストエディションは、コントラストカットのホイールが採用されるほか、エンジンカバーなどにクロームパーツが奢られ、さらに手の込んだピンストライプも施されますから、いっそうの高級感が漂い、所有欲を満たしてくれるのは間違いないでしょう。

シート高は720mmと低く、身長175cmの筆者の場合は、両足カカトまで地面にベッタリつきます

 シート高は720mmと低く、身長175cmの筆者(青木タカオ)の場合、両足カカトまで地面にベッタリ届きます。車体重量は398kgとヘヴィですが、重心が低く両足で踏ん張りが効くため、スタンドを払ってからの引き起こしも手こずることはありません。

 ハンドルは昨年デビューしたストリップスタイルの『R18』より絞り込まれ、グリップはよりライダーに近い位置に。ステップは左右にシリンダーが張り出す水平対向2気筒エンジンということもあってミッドコントロール。欧州仕様ではワイドペグを備えますが、日本仕様ではフットボードが採用されます。

すべてはクルーザーセグメントで成功するために

 さて、軽くてコンパクトなほど善しとされるスポーツバイクの評価軸は、クルーザーには当てはまりません。運動性能を考えればおおよそ不利でしかないロー&ロングという車体に、リラックスした乗車姿勢、エンジンはパワーや速さではなく味わい深さを求めて開発され、乗り手はトルクフィールや鼓動感を楽しみます。

味わい深さを求めて開発されたR18Bは、乗り手はトルクフィールや鼓動感を実現しています

 美しいフォルムであることも重要視され、エンジンもハンドリングも乗り手の感性こそが善し悪しを決める判断基準となるでしょう。サーキットを走るライダーから見れば考えられないロングフォークチョッパーを素晴らしいとたたえることも自由ですし、カスタムシーンでは極端すぎるとしてもメーカーの新車でさえ、コーナリングにクセがあるモデルは、このセグメントにはいくらでも存在し、ファンはそれを否定しません。

BMW Motorrad 広報部長のティムさん

 回りくどかったかもしれませんが、云いたいのは何かというと、特殊なセグメントであるということです。BMW Motorrad 広報部長のティムさんは「クルーザーセグメントは世界で最も大きい市場ですから、そこへ参入するのは自然なことです。私たちはクルーザー専用に開発・設計してきました」と胸を張ります。

 BMWはクルーザーセグメントに進出するのにあたって、味わい深いエンジンを徹底追求してきました。スピードを競うわけではなく、ロングライドをイージーに、快適に走れるかが肝心ですから、パワーなどスペックではなく、走っているだけで心地よい、いつまでもただ走っていたくなるようなテイスティさがファンに求められることを充分に理解し、1923年にモーターサイクルの生産を開始して以来、史上最大となる1.8リッターのOHV空油冷ボクサーツインエンジンを新開発。1936年の『R5』をオマージュし、専用開発した新設計シャシーに積み込み、昨年『R18』、今春『R18クラシック』を誕生させました。

ドイツで行われた「R18B」の試乗会に参加した筆者(青木タカオ)

 さらに今回、R18B/TCにはステアリングジオメトリーを専用にし、フレームバックボーンやネックまわりを強化させて剛性を高めたツーリングシャシーを与え、より高いクルージング性能を獲得。オーディオも英国の老舗アンプメーカー、Marshall製としこだわり抜いています。

 この強力なカルテットなら新境地であっても、強力なライバルがいようとも勝算があるのも頷けるのではないでしょうか。ティムさんはこう言います。「BMWらしいクルーザーを開発しました」。アメリカンクルーザーに対抗する好敵手として、ついにジャーマニークルーザーが本格始動しました!

青木タカオ【~取材現場から】

【了】

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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