【海外試乗】400cc未満のスーパースポーツ 2022年型KTM「RC390」の魅力とは!?

オーストリアのバイクメーカーKTMの軽量級スーパースポーツモデル「RC390」が2022年型でフルモデルチェンジしました。海外で行なわれたメディア向け発表試乗会に参加した、和歌山利宏さんの試乗記です。

手応えのある軽量級スポーツ、操作の醍醐味を味わえる1台

 KTMの「RC390」が2022年型でフルモデルチェンジされました。そのベースとも言える「390デューク」は、ちょっと長脚でデュアルパーパスっぽいオールマイティなストリートバイクとして人気を博してきましたし、フルカウルモデルの「RC390」も、スポーティさと日常性も兼ね備えたストリートスポーツとして認知されてきました。

サーキットでKTM「RC390」(2022年型)に試乗する筆者(和歌山利宏)

「RC390」は、リーズナブルな価格(2021年型で72万9000円・消費税10%込み)や遊び心に溢れたスポーツ性から、“ボーイズレーサー”と呼ばれることも多かったと思います。でも、この新型「RC390」はボーイズレーサーの要件を満たしていても、そう呼ぶのは相応しくありません。ただ若年層を照準としていそうなイメージでは、「RC390」に対して失礼だと思えてきます。

 と言うのも、走りに純粋な軽量級スーパースポーツとしての質感が感じられるのです。排気量が400ccに満たないシングルスポーツから連想しそうなお手軽感はなく、操る面白さと奥深さに溢れているのです。

 車重は従来型から9.2kgも軽くなり、競合モデルの中で最軽量と言っていいかもしれません。実際に押し歩きでの軽さも抜群なのですが、走っていて、いい意味でも重厚感があります。これだけ軽量なのにヒラヒラ感は皆無で、マシンへの手応えとして適度の抵抗感があり、それがマシンからの情報にもなっていますし、接地感も豊かです。

 実際には軽量で運動性能も高いのに、レーシングマシン的な安定性を感じさせるわけで、そのことが新型RC390ならではの大きな特徴になっています。おかげで、コーナリングを最高に楽しめます。しかも、ワインディングとサーキットでは、楽しみ方の幅の広さも感じさせます。

ワインディングでKTM「RC390」(2022年型)に試乗する筆者(和歌山利宏)

 まずワインディングだと、ゆったりとしたリズムでのコントロール感を実感できます。気持ち良く、はっきり言って、恍惚感に酔えるのです。軽量車にありがちな、気が付いたら勝手にバイクが曲がっていたなんてことがないのです。

 またサーキットでは、積極的にマシンに働きかけ、旋回性を引き出していく面白さがあります。サーキットではコーナーに酔っていてはだめで、止めて、曲がり、脱出してくことに集中することになり、うまくいけばよく曲がり、でなかったら残念という感じです。でも、普通に乗っていれば素直で、気難しさとかクセがあるわけではありません。旋回性を引き出す余地が、まだ奥に残っているハンドリングなのです。

 これは、一般に言うスーパースポーツでは、なかなか味わえない醍醐味です。乗りこなせそうなのに、そのくせライダーへの依存度は高く、また乗せられてしまうこともないのです。

軽量級スーパースポーツ、レーシングマシン的な安定性を感じる

 エンジンには、性能を引き出す面白さがあります。街中を3000rpmぐらいでスムーズに流すことができても、力強くダッシュするには6000rpm以上に保つ必要があります。なので、適切なギア操作が必要で、ズボラ運転したい人には向きません。

 そしてサーキットでは、常にレブリミッターが10500rpmで効くやシフトアップしていく集中力が要求されることになります。これも高出力車が主流の現在では忘れかけていた魅力です。

 新型「RC390」がピュアな軽量級スーパースポーツであることは、分かっていただけたでしょうか。となると、日常使用に使えなさそうに思われるかもしれませんが、全くそのようなことはありません。ネイキッドスポーツの中にもこれより上体の前傾度の強いものがあるほどですから、さほど問題ないでしょう。

 また、リアサスペンションは150mmと、「390デューク」と同じだけのストロークがあり、荒れた路面の走破性も抜群です。ハンドル切れ角も十分にあって、取り回しでのストレスもありません。

KTM「RC390」(2022年型)のレーストラック仕様(左)と公道仕様(右)

 そんなわけで、年配の方、それも若い頃に夢中になったバイクの面白さを懐かしむ人に乗ってもらいたいと思う次第です。スタイリングに質感もありますし、アップダウン両利きのクイックシフター、IMU(慣性計測ユニット)によってマシンの運動状態からも制御されるトラコンやABSといった最新のアイテムの威力を知ることもできます。

 お断りしておきますが、若い人たちに「RC390」はもったいないと言っているのではありません。腕を磨くにも最高であり、自信を持ってお薦めできることも付け加えておきます。

※ ※ ※

 2022年型でフルモデルチェンジとなった「RC390」の、日本での発売予定は2022年春、価格は未定です。

【了】

【画像】KTM「RC390」(2022年型)の詳細を見る(11枚)

画像ギャラリー

Writer: 和歌山利宏

1954年2月18日滋賀県大津市生まれ。1975年ヤマハ発動機(株)入社。ロードスポーツ車の開発テストにたずさわる。また自らレース活動を始め、1979年国際A級昇格。1982年より契約ライダーとして、また車体デザイナーとして「XJ750」ベースのF-1マシンの開発にあたり、その後、タイヤ開発のテストライダーとなる。現在は、フリーのジャーナリストとしてバイクの理想を求めて活躍中。

最新記事