KTM新型「RC390」 チーフエンジニアに聞く、マシンから伝わる“手応え”の謎

KTMの軽量級スーパースポーツモデル「RC390」が2022年型でフルモデルチェンジしました。海外で行なわれたメディア向け発表試乗会に参加した和歌山利宏さんが、チーフエンジニアにインタビューしました。

チーフエンジニアに聞く、マシンから伝わる“手応え”の謎

 KTMの新型「RC390」は、試乗記でお伝えしたように、車体は軽量で運動性も高いにも関わらず、マシンの挙動には“しっとりとした安定感と抵抗感”があります。マシンが軽量スリムであれば、悪い意味での軽さも出ようものなのに、それは全くありません。はっきり言って、不可解でもありました。

KTM「RC390」(2022年型)に試乗する筆者(和歌山利宏)

 しかし「RC390」のチーフエンジニアであるショーン・アンダーソンさんは、私(筆者:和歌山利宏)の疑問に真摯に応えてくれました。何しろ、前日の技術説明後、ディナー、公道試乗(彼はガイドまで務めてくれてくれた)と、いろいろと話をしてくれたのでした。

 まず彼が言ったのは、あらゆる項目について、見直しを行なったとのことでした。テストライダーの意見を聞きながら、狙う方向に練り上げていったということで、全ての相乗効果とマッチングによって具現化されたと見ていいでしょう。

 車体ディメンジョンは、基本的には従来型から変更はありません。2次減速比の違いで実スイングアーム長が変わり、フォークオフセットが大きい(トレールが88mmから84mmに小さくなった)ことで、諸元上、ホイールベースこそ12mm短くなっていますが、キャスター角は23.5度のまま変わりません。

和歌山さんのインタビューに応じてくれた、新型「RC390」チーフエンジニアのShaun Anderson(ショーン・アンダーソン)氏

 ライディングポジションは、タンク後端部が8mm後ろに引かれたことでハンドル位置が遠くなり、シートも快適性が高められたことで4mm高く、上体の前傾度がやや強められたことになります。比べなければ気付かない程度ですが、これはフロントへの荷重のしやすさに微妙に影響しているのかしれません。

 フロントフォークは、伸び圧減衰力調整機構を持つものに高グレード化されたことに加え、ストロークが125mmから120mmに短くされています。これには、フロントの姿勢変化を抑え、前荷重を保ったまま安定させる効果もあって、レーシーなハンドリングに貢献していると思われます。

新型では従来型に比べ、バイク設計の定石であるマスの集中化をあえて崩すことで、ライダーに適度な手応えを与えている

 そして、とくに私が注目したのが車体のレイアウト、コンポーネントの配置です。シート下、重心の近くにエアボックスがあることは変わりませんが、エアボックスの上側にバッテリーや電装品類を配置、燃料タンクはその前方に置かれます。従来型では、バッテリーが前部に、燃料タンクが後部にあったので、配置が異なるのです。

 これは、マスの集中化には不利です。マスが分散し車体の慣性モーメントが大きくなると、動きを起こしにくく、また止めにくくなるので、マスの集中化はバイク設計の定石のはずです。でも新型「RC390」は、それを逆に活かし、マシンの反応や情報が伝わるリズムを感性に合ったものとし、落ち着いた存在感を得ているのかもしれません。

 さらにフレームは、縦曲げ剛性を同等のまま、横曲げ剛性とねじり剛性を下げる方向で、剛性チューンを行なったといいます。ブレーキングではしっかり踏ん張りながらも、コーナリングでしなやかさを感じさせることが、走りを高水準化させていると感じます。また、しなやかゆえ緊張感を与えず、かつ攻め込めるハンドリングとなっているのです。

KTM「RC390」(2022年型)に試乗する筆者(和歌山利宏)

 さて、さんざん話を聞いた挙句、彼はビデオ収録にも付き合ってくれました。「3分ぐらいで済ませるから」との私のお願いに快く応じ、開発での基本的な取り組みに言及してくれました。動画には字幕を入れておきましたから、ぜひご覧になってください。

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 2022年型でフルモデルチェンジとなった「RC390」の、日本での発売予定は2022年春、価格は未定です。

【画像】KTM「RC390」(2022年型)の詳細を見る(9枚)

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