ヤマハ「MT-03」はパワーと軽さが武器! 250クラスの車体に排気量320ccのエンジンが効いている!?

排気量320ccの直列2気筒エンジンを搭載するヤマハ「MT-03」は、250ccクラスの「MT-25」とほぼ共通の車体構成となっています。その違いや魅力を試乗で確認しました。

斜め上から目線の走り、余裕のトルクこそ「MT-03」の魔力

 ヤマハ「MT-03 ABS」に乗りました。良い物語を読み終えたその読後感のように体内に残った印象を精査すると、「MT-25」か「MT-03」か、という選択への迷いにケリをつける、という程度の浅いテーマで乗り始めた自分への反省と、「MT-03」という個性へのリスペクトでした。なぜならば、姿形が同様の両モデルでも、明確なキャラクターを持っていることがすぐに解ったからです。

ヤマハ「MT-03 ABS」(2021年型)に試乗する筆者(松井勉)

「MT-25」とのエンジン比で言えば、「MT-03」は排気量にして71cc大きな320ccです。内径が8mm大きなピストンを入れることで得たその排気量は、世界的に見たら、むしろこちらがオリジナルで、「MT-25」は市場に合わせた仕様なのかもしれません。

 そこから繰り出すスペックは、最高出力31kW/10750rpm、最大トルク29N.m/9000rpmとなっています。「MT-25」のそれが26kW/12000rpm、23N.m/10000rpmなので、その差はさほど大きくない、とも捉えることができあます。しかし実際に走らせると、車体サイズ、車重から全く同値の2台だけに、主にエンジンを回さずともスルスル走ってくれる大排気量車的トルク感によって、「MT-03」の印象は決定付けられました。

 例えば市街地です。低速で走る交差点。Uターンのような小回りの瞬間でも、3000rpm以下から生み出す力のあるトルクにより、寝かせたバイクを後輪にパワーを伝えて起こす動作がとてもラク。これは劇的で、もともと「MT-25」と同じ169kgと軽い車体であることもあり、わずかなアクセル操作でバイクがしっかりレスポンスしてくれるのです。

排気量320ccの水冷直列2気筒DOHC4バルブエンジンを搭載

 印象としては、まるで上手く乗れているような充実感。ややもするとその力強さが突発感となり、挙動に荒さ(アクセルがドンと突くような)が出る場合もあります。しかし、両モデルは一次減速比、二次減速比、タイヤサイズまで同じなので、全体的にロングレシオとなりながらも、そうした部分の扱いやすさのバランスをしっかりと取っているのがわかります。優しいのに力持ち、なのです。

 ギアレシオで言えば、「MT-03」の5速と「MT-25」の6速が全く同じ0.920というギア比となり、結果的に60km/h定地燃費値もWMTCモード(サブカテゴリーはともに3-2)の燃費値も当然のように「MT-03」が上回ることに。これはミッションの違いもさることながら、リアルロードでは加速を補うのにシフトダウンを1速、あるいは2速落としたくなる「MT-25」に対し、5000rpm以下で満足感あるトルクにより、アクセルだけでそのまま加速する「MT-03」の違いが大きいと感じました。排気量って、なるほど正義!

 そのゆとりは高速道路でも同様です。400ccクラスと比較すれば軽量級なため、横風が強いと進路はフワっと流されるものの、6速でクルージングする時、上り坂や向かい風に会っても押し戻される感じは最小限。なるほど、こんな場面でもクラスの違いを感じます。それならば、と追い越し加速の時、6速から一気に3速までシフトダウン、高回転での加速を堪能してみることにしました。しかし、期待値ほど伸び感はなく、むしろ最高出力を発生する1万回転あたりを過ぎるとパワー感、トルク感ともに下降線を辿るようで、積極的に使いたいとは思いませんでした。

2020年のマイナーチェンジでガラリと印象を変えたフロントマスク。2眼のLEDポジションランプ、その下に丸みを帯びたLEDヘッドライトを配置。ウインカーもLEDを採用(写真はハザードランプ点灯、ヘッドライトはハイビームの状態)

 このエンジンの名誉のために加えれば、そこまでのドライバビリティがとても良いだけに、相対的に高回転ではそう感じただけのこと。320ccながらキッチリ31kW(42PS!)を生み出すだけに、全く不足を感じません。

 市街地同様、ワインディングルートを駆けてもそれは同様でした。旋回性はシャープ過ぎず、安心感はありながら、どこにもダルさがないもの。車体の剛性バランスはしなやかさを持ったもので、ライダーの無駄な動きや、路面からのキックバックのような部分を上手にいなしつつ、コントロール性の部分はしっかり車体に反映するようなまとめ上げで、減速からリーンし始め、カーブ後半で脱出加速をする時も、例のトルクたっぷりな320ccエンジンを5000から6000rpmあたりにキープすれば、高めのギアでも充分にスポーツライディングが楽しめるのです。

 パワーと軽さ、これぞ「MT-03」の武器です。スポーツライディングをすると、後退したステップ、細身のシートとアップライトなハンドルバーながら、ライダーが下半身でホールドしやすいポジションを持つ車体とライダーがシンクロします。市街地で感じた「今日は乗れてる!」という気持ちになるまでに要する時間が短く、サイズ、排気量的にビギナーにオススメなのは勿論、あれこれ乗った経験を持つライダーにも是非楽しんで欲しいバイクです。

250ccクラスの「MT-25」と同等の車格に排気量320ccのエンジンが搭載されていることにより余裕の力強さと軽さを感じる

 日本市場では排気量250ccまで車検が不要というユーザーのコスト的ベネフィットはありますが、そこに力点を置かないのであれば、断然「MT-03」は“買い”です。それが、今回のテストの結論です。

※ ※ ※

 ヤマハ「MT-03 ABS」の価格(消費税10%込み)は65万4000円、カラーリングは写真の「ディープパープリッシュブルーメタリック」のほか、「パステルダークグレー」、「マットダークグレーメタリック」の全3タイプです。

【了】

【画像】ヤマハ「MT-03 ABS」(2021年型)の詳細を見る(14枚)

画像ギャラリー

Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

最新記事