小さいBMWバイク「G310R」に凝縮された走りの魅力! しかも普通二輪免許で運転できる

BMWバイクのラインナップ中、最も排気量が小さく、普通二輪免許で運転可能なネイキッドモデル「G310R」(2021年型)に試乗しました。そこにはBMWらしい特徴が散りばめられていたのです。

ミニマル、だけど、中身はマキシマム

 BMW Motorradの「G310R」は、同社のラインナップの中で、最も排気量が小さいモデルです。インドで生産され世界にデリバリーされるネイキッド(BMWではロードスターという呼称を使っています)の役割は、ビギナーから経験者にまで満足のゆく軽量バイクを届けること。そこに走りの楽しさ、持つ満足感など「なるほど! BMWらしいね」という部分がちりばめられているのが特徴と言えるでしょう。

BMW Motorrad「G310R」(2021年型)に試乗する筆者(松井勉)

 しかも2021年モデルはEURO5に適合した最新の環境性能を持ち、LEDヘッドライトやライドバイワイヤーの採用などが特徴です。ベースカラーの2モデルが63万7000円(消費税10%込み)、スタイルスポーツというカラフルなモデルがプラス1万3000円と、いずれにしても国産250ccクラスと同等かそれ以下の価格であることも注目点でしょう。

「G310R」は、水冷単気筒エンジンを搭載したシンプルなロードモデルです。輸入車だからってハイオク指定ではありません。レギュラーガソリンで走ります。DOHC4バルブヘッドを持つそのエンジンは独創的。クランクケースの上にあるシリンダーが後輪側に傾き、前方から混合気を吸い混み、後輪側にエキゾーストパイプを配置しています。そう、普通のエンジンとは吸排気レイアウトが180度逆なのです。

 これは、前輪と干渉することなくエンジン搭載位置を前進させることで、前後輪の分担荷重を理想的なバランスとする目的と、前後輪の軸間距離であるホイールベースを伸ばすことなくスイングアーム長を伸ばせること、また前方から吸気することで、エアクリーナーボックスを燃料タンク前方に配置する、いわゆるスーパースポーツモデルなどでは当たり前のように使われる車体手法をきっちり踏襲しているのです。そう、このバイク、じつはハンドリングマシンなのです。

排気量312ccの水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブエンジンを搭載。シリンダーは前方(進行方向)ではなく後方へ傾けられている

 排気系でも、スイングアーム前方部分に挟まれる形でコレクターボックスを配置。前方排気よりも排気管長が短くなる分をカバーしつつ、重量があるサイレンサー部分を車体中央の低い位置に搭載することも、運動性に有利なレイアウトを採ります。BMWのバイクと言えば、水平対向2気筒エンジンや直列6気筒エンジンのモデルを唯一市販するブランドですが、社名である“バイエルンのエンジン工場”が示すとおり、こだわりがスゴイ。

 実際に跨がると、じつにオーソドックスです。785mmというシート高ながら、ライダーが足をまっすぐ下ろせるようステップ、シート、フレーム周りにも工夫がなされ、足付き感は悪くありません。

 車重が164kgと軽めなことと、先述した重たい物が低くレイアウトされたこともあり、サイドスタンドから起こす挙動に重さを感じることもなく、ライディングポジションもバイクを直感的に把握しやすい良い姿勢を自然と取れるもの。

排気量が少なめとはいえ、エンジンは市街地で多用する回転域でしっかりと力強さを感じられるもの

 では走り出しましょう。排気量312ccのエンジンはアイドリングで鼓動感はあるものの、シート、ステップ、ハンドルを揺さぶるような振動成分はしっかりと抑えられています。軽い操作力でレバーを握れるクラッチ、新たにバイ・ワイヤー式を採用したアクセル周りも手伝って敷居の低さは折り紙付き。とにかく軽々と走り出せる印象なのです。

 最高出力は25kW/9250rpm、最大トルク値は28N.m/7250rpmと排気量なりですが、市街地で多用するエンジンの回転エリアが生み出すドライバビリティに満足感と上質感があり、不満を感じません。250ccクラスでは出せない力であり、これ以上排気量が大きくなると振動やアクセルワーク、回転数に気を遣う場面が出てきします。「312ccって半端だよな」と思っていたものの、これは狙いすませた選定だったのかも、と印象が変わりました。

 ハンドリングは上質。軽量級の小排気量だからといってアジャイル一辺倒というわけではありません。この辺、しっかりドイツ車しています。安定感に包まれた軽快性。この表現がピタリとハマる感じです。正直、サスペンションに高級感はありません。ブレーキのタッチも高価格帯のバイクのそれと比較すると差を感じます。

 ただ、操作感に高級さはないものの、プアではありません。上手に全体がチューニングされています。以前、G310シリーズを使ったワンメイクレースに参戦したことがあります。MotoGP日本グランプリの舞台ともなるツインリンクもてぎで行なわれたそのレースでは、ノーマルクラスにしてダウンヒルストレートではメーター読みで160km/h近くまで加速する実力を味わい、その領域でも余裕ある車体を実感しました。コーナリングも同様。夢中になって走れます。

BMW Motorrad「G310R」(2021年型)カラー:コスミック・ブラック

 それだけに、ワインディングでも余裕です。今回の試乗でも50km以上ワインディングを走りましたが、パワー、ハンドリング、ブレーキ性能のいずれもマル。小粒なBMWだからと言ってなめてかかると、ライダー次第では簡単にカモられるかもしれません。つまり、かなり走る、かなり曲がる、しっかりと停まるのです。

「G310R」というバイクが視界に入ってない人はまだ多いはず。じつはこんな多彩なモデルだったのです。ライトウエイトスポーツが欲しい、という人にオススメの1台でした。

【了】

【画像】BMW Motorrad「G310R」(2021年型)の詳細を見る(14枚)

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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