限定解除(大型二輪)の試験車は「ジーナナ」だった ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.116~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、最近の大型二輪免許の教習車が扱いやすい車両で良かったと言います。どういうことなのでしょうか?

時代は変わり歓待ムードの教習所、大型二輪免許も取り易くなったものだ……

 1960年生まれの僕(筆者:木下隆之)が若造だった頃、自動車教習所の教習車両はクラウンかセドリックと相場が決まっていた。教習車にしては豪華だが、当時の基準でいえば、最大のサイズがクラウンとセドリックであり、つまりは大きなクルマでトレーニングすれば、卒業後に苦労しなくて済む、という解釈だったのだ。教習の難易度を上げておけば、あとはなんとかなろうものよ、なのである。

限定解除(大型二輪免許)の試験車両だったスズキ「GT750」(1971年)

 バイクも同様で、当時は高校生で大型二輪免許(限定解除と呼ばれていた)を取得しようと考えれば、試験場で「一発試験」に挑むしかなく、試験車両は国内でも重量級の大型バイク、「ジーナナ」の愛称で呼ばれていたスズキ「GT750」だった。

 これがクセモノ。搭載するエンジンは水冷2ストローク並列3気筒であり、スズキの軽自動車「フロンテ」の2ストロークエンジンの改良型だった。2ストロークだから“ジャンジャラジャン”とアイドリングからしてブルブル震える。試験の難所である一本橋を10秒以上かけて渡り切るなど、曲芸師でもなければ不可能と思えるほどの難易度だった。

 しかも当時では珍しい水冷エンジンでたっぷりと水を積んでいるから、重量は200kg超、3気筒なのにマフラーは左右4本出し、わざわざ重くしているが如きである。

 シートは高くて足つきが悪い、アイドリングの振動にやられてフラついた途端に立ちゴケは免れない。手押しで8の字も、相撲取りのような大男でもなければ押し切れない気がする。とにかく若造に大型自動二輪免許を取得させないための試験車としては都合が良かったのである。

 とはいうものの、時代は移り変わるもので、近年では普通自動車免許取得のための教習車がアウディだったりベンツだったり……。大型自動二輪の教習車も、乗りやすさで定評のあるホンダ「NC750S」がベースのようだ。しかしその「NC750S」も生産中止とのこと。後継車両に何が選ばれるのかは興味深いところだ。

大型二輪の教習車、ホンダ「NC750L」。ベース車両はすでに生産中止となっている「NC750S」

 少子高齢化もあって免許の取得希望者数が減っていることもあり、教習所も歓待の姿勢を見せている。教習所や試験場がサービス業のように思えるほどだ。

 大型二輪免許の取得を希望する者に対しても、とにかく落第させることが目的の昔の流儀だったら、さしずめホンダ「ゴールドウイング」あたりが教習車だったかもしれない(それはそれで豪華過ぎる)が、そうではない状況にほっと胸を撫で下ろした。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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