YOKOHAMAホットロッドカスタムショー2年ぶりに開催決定! 今回の目玉のひとつ“BMW Motorrad×MOONEYES”のコラボマシン「R18クラシック」の全貌に迫る【Part 2】

日本最大級のカスタムの祭典YOKOHAMA HOT ROD CUSTOM SHOW(ヨコハマ・ホットロッド・カスタムショー)が2年ぶりに開催されます。今年のイベントでは主催者のムーンアイズとショー・スポンサーであるBMW Motorradのコラボ・カスタムがお披露目されます。ここではその作業工程を追っていきます。

鉄のパーツをアルミの質感に

前回、当サイト(バイクのニュース)で紹介したとおり、2年ぶりの開催となるYOKOHAMA HOTROD CUSTOMSHOW(ヨコハマ・ホットロッド・カスタムショー※以下HCS)で主催のムーンアイズと協賛スポンサーのBMW Motorradによるコラボ・バイク“R18クラシック”が、いよいよ発表される運びとなりました。

2021年、市販されたBMW最新モデルである“R18クラシック”をベースにスペシャル・ペイントを施した“BMW×ムーンアイズ”の完成予想図。イラストは1989年からムーンアイズに籍を置く日本のピンストライパーのパイオニア、“WILD MAN(ワイルドマン)”石井氏によるもので、今回の配信ではそのイメージに近づける作業工程を紹介します

 我が国最大の“アメリカン・カスタム・カルチャー”の祭典の中で、いかなるマシンが披露されるのか……今回はその具体的な製作過程を追って紹介していきます。

 まず1989年からムーンアイズに所属する日本のピンストライパーのパイオニアである“WILDMAN(ワイルドマン)”石井氏による完成予想イラストから、車体のフィニッシュがムーンアイズを象徴するパーツである「ムーンディスク」や「バレルタンク」のイメージを踏襲した「ヘアライン仕上げ」になることは既に前回の配信でお伝えさせて頂きましたが、それをスチール製のフェンダーやタンクが採用された“BMW R18クラシック”で如何に「アルミパーツの質感」に近づけるかが、今回のコラボ・マシンの完成度を左右するのはまず間違いありません。あくまでも大がかりなカスタマイジングではなく、ペイントワークで「アメリカン・カスタム」の世界観を表現することが重要な鍵となります。

“WILD MAN(ワイルドマン)”石井 1964年生まれ。ムーンアイズが横浜・元町でオープンした1986年から顧客として出入りし、1989年にムーンアイズが主催するイベント、“ストリートカー・ナショナルズ”の会場に来日したアメリカン・カスタム・カルチャーの第一人者、エド“ビッグダディ”ロスのライブ・ピンストライピングに感銘を受け、同年よりピンストライパーとしてムーンアイズに所属。以来、筆一本のフリーハンドでレタリングや幾何学的な模様を描くアメリカのペイント・カルチャー、“ピンストライプ”を日本に広めたパイオニアにして第一人者となる。2021年12月5日(日)に神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催されるYOKOHAMA HOTROD CUSTOMSHOW2021では今回の“ムーンアイズ×BMWモトラッドR18クラシック”にライブでピンストライピングを行い、フィニッシュまでの工程を来場者の皆さんに披露する予定です

 そのペイントを担当するのが東京・八王子市にある株式会社グランツなのですが、同社は一般の顧客はもとより、メーカー系のコンプリートマシンや特別仕様のペイントなどを得意とするそうで、仕上がりのクオリティにはかなりの定評があるとのこと。

今回、ベースペイントを担当したのは東京・八王子市にある株式会社グランツ。一般顧客やカスタム・ショップはもちろん、メーカー系のコンセプトモデルやスペシャル・ペイントにも対応するファクトリーです

 まずは同工場に持ち込まれた“R18クラシック”の外装をバラし、狙いどおり「鉄をアルミの質感」に変貌させていくのですが、最初は当然、丁寧な下処理とペイントから作業がスタート。今回はムーンアイズ製のバレルオイルタンクの質感を手本にした鈍色のシルバーに車体が塗り上げられていくのですが、要となる「ヘアライン」はスコッチブライトの研磨シートで、あえて表面にキズをつけて表現されことになるそうです。

1952年に米国カリフォルニアのサンタフェ・スプリングで創業されたムーンアイズ、その黎明期からのヒット商品がガソリンやオイル用のバレルタンク。「ムーンアイズ×BMW R18クラシック」の完成見本として持ち込まれたモーターサイクル用オイルタンクも人気です

 ちなみにこの「ヘアライン仕上げ」は単にキズをつければ良いというワケではなく、車体のラインやパーツの形状を念頭に置き、作業が進められていくのですが、こうしたものだからこそ表れるのが職人の技術とセンス。

ムーンアイズを象徴するパーツである「ムーンディス」や「バレルタンク」に準じたペイントを施すべく、まずは外装が取り外されたR18クラシック。排気量1801ccのビッグボクサーを搭載するモデルだけに「骨組み状態」となっても重厚感はかなりのものです

 今回の“R18クラシック”も、みるみるうちに鉄のパーツがアルミのような質感に生まれ変わっていったのですが、研磨シートでヘアラインをつけつつ、削りカスが溜まればパーツに滞留する静電気を取り除く機能を備えたブロアー「イオンシャワーマグナム」でゴミを取り除き、再び研磨を繰り返すという作業を経て完成したフィニッシュは、「ムーンディス」や「バレルオイルタンク」の質感にかなり近いものとなっています。その完成の姿は是非、2021年12月5日(日)に神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催される「HCS2021」で是非、ご確認ください。

入念に下地処理を行った後、いよいよベースカラーとなるシルバーを吹き付け。充実のペイントブースでR18の外装が次々に塗り上げられていきます

 また完成といえば、この「ムーンアイズ×BMW Motorrad R18クラシック」はショーに持ち込まれた段階では、じつはまだ作業の途中とのことで、会場にてWILDMAN石井氏が筆を走らせ、ライブ・ピンストライピングを行うことで初めてフィニッシュを迎えます。

「ムーンディスク」や「バレルタンク」の質感を目指すべく、メタル調のマットシルバーで塗り上げられたR18クラシックのタンク。このままでも十分なクオリティですが、よりアルミ地に近づける為、ここからもうひと手間加えます

 こうした部分は単にカスタムカーやカスタムバイクを並べるだけではなく、訪れた人々が日常の喧噪を忘れる「エンターテイメント」たるショーを演出するムーンアイズらしい企画になっています。もちろん、ライブミュージックやベンダーブースでのショッピング、今年初の企画である崎陽軒とのコラボによるお弁当の販売など、当日は楽しい催しが満載。もちろん、この「ムーンアイズ×BMW Motorrad R18クラシック」もショーでライドイン入場し、オープニングを飾る予定です。

ペイント後、スコッチブライトの研磨シートでヘアライン仕上げをした外装がコチラ。ご覧のとおり、かなり「アルミ地」に近いフィニッシュが見事です。ここから半艶のクリアを吹き、WILDMAN石井氏がHCS2021の会場でピンストの筆を走らせ、完成です

 昨年は新型コロナの感染拡大の影響を受け、ショー自体が中止となったYOKOHAMA HCSですが、カスタム・ファン待望の2年ぶりの開催までいよいよあと少しです。今年はマスクの着用や入場口での検温、住所や連絡先の記帳などがあり、海外からのゲストもナシという例年とは違うシチュエーション(今年も一般観客のバイク・車での来場は禁止となります。また事前にチケットへの住所記入が可能な前売り券がオススメです)での開催となりますが、とにもかくにも年末恒例の「アメリカン・カスタムカルチャー」満載の浮世離れした1日を皆様、共に楽しみましょう。

【了】

【画像】Motorrad×MOONEYES”のコラボマシン「R18クラシック」製作工程を画像で見る(27枚)

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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