the「燃費」世界で人気上昇中のクロスオーバー、フルモデルチェンジしたホンダ「X-ADV」を実走計測!!
排気量745ccの直列2気筒エンジンにDCTを組み合わせた大型クロスオーバーモデル、ホンダ「X-ADV」は2021年のフルモデルチェンジで燃費のカタログ値も向上しています。実際はどうなのか、計測しました。
環境性能と出力を向上、2021年型の実走燃費はどうだ?
ホンダ「X-ADV」は、スポーツバイクとスクーター、そしてアドベンチャーバイクの要素を持つクロスーバーモデルです。「NC750X」にも搭載される排気量745ccの水冷直列2気筒エンジンと、ホンダ自慢の「デュアル・クラッチ・トランスミッション」(以下、DCT)を組み合わせ、CVTのスクーター同様のイージードライブを可能にし、フロントに17インチ、リアに15インチのブロックパターンタイヤを履き、ダート路も軽々こなす点でユニークなキャラクターを持っているのです。スクーター的利便性とイージーさ、速さ、所有感、時代の季語、クロスーバー性など、海外でも人気を確立しつつあるバイクです。

2021年春に登場した2代目は、フルカラーTFTになったメーターや、デイタイム・ラインニング・ライトの採用、軽量化とギアレシオを変更したトランスミッションを搭載。吸排気経路の最適化やエンジン内部の軽量化も施し、厳しくなった環境規制に対応しつつエンジンパワーで4ps、トルクで1N.mアップを果たしています。
同時に、我々、the「燃費」研究班として注目なのが、進捗した燃費性能です。60km/h定地燃費値(2名乗車時)で先代を2.5km/l上回る42.5km/l、WMTCモード値(クラス3-2)も0.7km/l向上して27.7km/lとなっています。
排気量は先代と同じでパワーも上がって燃費も向上……燃費研究班の中には「上手いこと言っちゃって」と、そう心の中でつぶやいたとか、つぶやかなかったとか……。それなら実力を調査すべく、the「燃費」ルートに連れ出したのです。

the「燃費」では毎回同じルートを使い、市街地、高速道路、快走路(ツーリング路)の3つのシーンで実走燃費を計測しています。リポート記載の距離はトリップメーターの表示値、燃費結果は、平均燃費計の数値を紹介しています。走行ペースは周囲の流れに合わせたもので、燃費記録を狙う走りではありません。
2020年6月に先代モデルの計測値を記録しています。今回はその比較も含め、新旧バトル(?)もお楽しみ下さい。
信号停止が燃費に影響、先代モデルとは異なる状況に差が出る
the「燃費」の市街地燃費計測は、都内外苑周辺から始まります。青山一丁目交差点で国道246号に出て赤坂、皇居方向へ。皇居のお堀沿いを走り桜田門を通過。そのまま銀座方向に直進します。途中、有楽町手前で丸の内のオフィス街を回り、再び有楽町周辺から銀座、築地、豊洲と抜け、首都高湾岸線沿いに走る国道357号の東雲付近まで。丸の内をのぞけば片側3車線の大通りの市街地ルートですが、交通の状況によって交差点での信号待ちが多くなることも、燃費に影響します。

この日、12.3kmの距離を走るのに要した時間は35分ほど。通常、30分から32分程度なので、その分、流れるペースが遅かった、または信号待ちが多かったことになります。発進加速、減速、アイドリングが多くなると燃費に響くのは想像通り。2020年に計測した先代「X-ADV」が同区間で23.9km/lを記録。新型は19.8km/lとなりました。
大差に思えますが、銀座を過ぎて築地、晴海、豊洲と流れが良いと燃費データが伸びることがあり、今回はそのエリアで信号停止が多かったことが伸び悩みの原因だと思っています。
高速道路燃費は同等かも? 元気なエンジンで加速が楽しい
高速道路の燃費計測は次の2区間で行なっています。区間1は、房総半島を走るアクアライン連絡道の「袖ケ浦IC」から館山道にアクセスして南下、終点の「富浦IC」まで53.2kmの南下ルート。区間2は館山道の「富津中央IC」から北上、アクアライン連絡道にアクセスして「木更津金田IC」までの25.1kmという北上ルート。合計78.3kmでの計測となります。

アクアライン連絡道の制限速度は80km/h、館山道は南下ルートで100km/hから80km/h、そして70km/hに変化し、2車線区間から片側1車線区間では制限速度が低下します。北上ルートで通過する館山道区間は全域100km/h制限ですが、アップダウンが連続するため燃費にはキビシイ条件のルートかもしれません。
新型「X-ADV」は、先代と比較してエンジンレスポンスの軽快さ、パワフルさが印象的です。高速道路では排気量のゆとり、アクセルひとつで加速できるDCTの恩恵もあり、快適、楽勝、疲れ知らずと三拍子が揃います。また、TBW(スロットル・バイ・ワイヤ)を採用したアクセルは操作力が軽いのもウレシイところ。
燃費データは、南下ルートで31.2km/lと先代とまったく同じ。北上ルートでは、ペースが異なる車両を追い越す場面が館山道で多かったため、先代が記録した30.8km/lに対し、27.4km/lにとどまりました。登り坂での追い越しもあるので、その分の「目減り」だと言えるでしょう。と、いうより、元気の良いエンジンの誘惑でつい加速力を楽しんだ研究員にも責任の一旦があるのでは、と報告します。
ワインディングも楽しめる! でも燃費は先代に届かず
快走路(ツーリング路)の燃費計測は3区間で行っています。区間1は高速道路燃費計測を終えた館山道「富浦IC」直近のコンビニエンスストアからスタート。房総半島の内陸を通る「安房グリーンライン」などを通り半島南端エリアまでの21.5km。区間2は半島南端エリアから国道410号、県道34号などを使い、鴨川市にある「大山千枚田」までの38.6km。区間3は、「大山千枚田」から県道34号、県道182号などを経由して館山道「富津中央IC」まで25.6km。3区間合計85.7kmで行なっています。

快走路の特徴は、どの区間とも平坦路とアップダウンとワインディングがほどよくブレンドした楽しい道で、房総半島ではお馴染みのツーリングルートです。
市街地、高速道路とその機敏なレスポンスを楽しませる新型「X-ADV」は、こうした道でも楽しませてくれます。スクータースタイルながら、バイクのようコーナリング感覚とDCTの6段ミッションにより、ここでは便利さ、快適さよりもスポーティさが際立ちます。手元のスイッチでマニュアルシフトも可能なので、コーナー手前でシフトダウンが決まる! 駆動のタイムラグが無いのもDCTの魅力です。
とはいえ、カタログ燃費では伸びたはずの新型「X-ADV」の本領を見ることができませんでした。各区間での新旧燃費データを比較で紹介します(先代:新型)。
区間1 35.6km/l:32.6km/l
区間2 36.0km/l:31.9km/l
区間3 34.8km/l:32.9km/l
平均 35.4km/l:32.4km/l
先代に水をあけられました。
新型「X-ADV」は楽しい! アクセルのオン/オフが燃費に響くことに
「新型燃費わるいじゃん!」という結末になりつつありますが、ここは新型の名誉のために以下を紹介します。市街地計測を終え、撮影のために木更津へと首都高+アクアライン+一般道を使い移動します。その間、先代が34.6km/l、新型は36.1km/lと、今回イチの数値をマーク。淡々と一定速度を維持する時間が長く、アクセルのオン/オフが少ない状態だと確実に燃費記録が伸びるようです。うーん、ECOモードが欲しい、と思う結果でした。

■ホンダ「X-ADV」(2021年型)燃費結果
総合評価:☆☆☆☆★(ホシ4つ)
総走行距離:176.3km
市街地:19.8km/l
高速道路平均:29.3km/l
快走路平均:32.4km/l
総平均燃費:29.3km/l
Writer: 松井勉
モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。