原付バイクに「価値が無い」のは、国民の財産を守る気がないから? 課税する側と納税する側のギャップ、放置のままでいいのか
ナンバープレートは、車両の所有者を特定できる番号とされていますが、総務省や自治体は、彼らが管理する原付や小型特殊では「ナンバーは納税番号でしかない」と、その役割を否定します。両者にあるこの認識のギャップ、単なる“誤解”では済まない不利益をもたらしているのかもしれません。
市区町村は、納税義務者を特定するだけ?
排気量125cc以下の原動機付自転車やフォークリフトなどの小型特殊自動車(以下、原付バイクと略)は、ナンバープレートを付けた他の車両とは、制度が大きく違います。総務省自動車税制企画室の見解は次の通りです。
「同じナンバープレートのように見えますが、原付バイクや小型特殊車両は、届け出用紙にもあるように単なる課税の番号を示しているだけで、それ以上の役割を期待されても応えられません」
ナンバープレート交付時に、市区町村は車両が存在するかどうかを交付申請書で確認しますが、その内容は「販売者」か「譲渡者」が、氏名と住所を記入するだけです。自治体が重視するのは、税金が確実に徴収できるかのポイント。申請者である納税義務者が住民かどうかの一点だけです。
しかも、こうした申請を全国統一ではなく、全国約1700ある自治体が独自に受け付けます。自治体は納税義務者さえ存在していれば、同じ車体番号のバイクが、仮に別の自治体で届出されていても関知しません。
それでも申請受理後に自治体が発行する「標識交付証明書」には、標識番号、車台番号、納税義務者の氏名、住所、登録年月日が記載されるので、それがあたかも車検のある車両の車検証と同じように、バイクの所有者を証明しているように誤解させてしまうのです。
盗難車ロンダリングも、原付なら簡単!?
例えば、A市で盗まれた原付バイクを善意の第三者がインターネットなどで購入し、盗難車であることを知らずにB市で届出したとしても、申請書の書式が整っていれば、問題なくプレートは発行されます。
また、仮に運転中に職務質問を受けたとしても、免許証を提示した運転者と標識交付証明書の納税義務者が同じであれば、さらにその先を追及することはできません。
さらに、本来の所有者が気付いて盗難届を出しても、全国統一ではなく届出した自治体でしか盗難車の車体番号を検索することができないので、約1700もある地方自治体に届出から盗難車を追跡してもらうことは、ほぼ不可能です。
原付バイクのずさんな届出制度は、盗難車を“洗浄”することを、間接的に手助けしている、というのは言い過ぎでしょうか。
ナンバープレートを付けた他の車両では、全国統一で車体番号が管理されているため、車体番号を削り取るなどの改造を加えて不正に流通させない限り、こうした問題は起きません。軽自動車税を課税されている軽四輪車でも、問題は起きません。
同じナンバープレートが付いているように見えても、国民の財産を守る機能をほとんど持たないのが、原付バイクのナンバープレートの特徴です。総務省自動車税制企画室は、原付バイクの制度上の問題点を理解した上で「現状の制度はそうなっているとしか説明できない」と突き放します。
では、軽自動車税を納付する意味は、どこにあるのでしょうか。これについては総務省自動車税制企画室の見解と、国土交通省自動車情報課が示す車両管理を加えてさらに深堀りし、また別の機会にお伝えします。
Writer: 中島みなみ
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。