クルマもバイクも、DCTモデルは操作にコツがある? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.133~
レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、ホンダ「レブル1100 DCT」はマニアの気持ちをくすぐってくれると言います。どういうことなのでしょうか?
クルマのドライビングテクニックを、応用して考えてみた
ホンダの「レブル1100」を愛車にするに際に、僕(筆者:木下隆之)の頭を悩ませたのがミッションの選択だ。最新だとはいえ、大型クルーザーである。眉間にシワ寄せて、脱兎の如くスピードを追求するバイクじゃないが、やはりバイクは左手でクラッチレバーを握ったり離したり、左足でシフトペダルを踏んだり蹴り上げたりしながら走るのが筋ではないかと、颯爽と走る姿を想像してニンマリしていたわけだ。

だが一方で、最新マニアとしての性分がムクムクと頭をあげた。「レブル1100」にはDCT(デュアルクラッチトランスミッション)モデルも用意されている。いわば、クラッチ操作をバイクが代行してくれるシステムで、操作はスクーターのようなオートマチックでありながら、中身は6速マニュアルである。これに触れないのもどうかと……。
DCTはクルマの世界ではかなり浸透している機構である。おそらくF1の世界が発祥だったと思う。シフト操作のコンマ1秒を短縮するために開発された。セミオートマと呼ばれていたね。
それがやがて高価なスーパーカーに伝播。次第に運転が楽だという理由で大衆車まで降りてきた。時代は都合よくオートマ免許人口が増殖中で、マニュアルの軽トラは運転できなくても800馬力のフェラーリは運転できるという状況になりながらも、デュアルクラッチトランスミッションは一般化したのである。
それはドライビングテクニックの変化も誘発した。左足がクラッチ操作から解放されたのをいいことに、左足にブレーキ操作を委託。これがじつに便利で、右足は加速のため、左足は減速のためと、見事に役割分担を成立させたのである。
教習所ではブレーキ操作は右足で、と教えているから、まだまだ左足ブレーキをこなせるドライバーは稀だけれど、僕らレースの世界では、もはや左足で器用にブレーキングできなければ淘汰される時代になった。
というわけで、「レブル1100」のDCTモデルを愛車とすることにしたのではあるが、最初は戸惑っていたライディングも、クルマで言うところの左足ブレーキ理論を応用すると体に馴染むから不思議である。

DCTバイクの気になる点は、街中で発進と停止を繰り返すときである。前走車がジワリと停まるから一旦停止で足をつく、前のクルマがユルリと進から極低速で発進するという場面で、バイクは速度が0km/hになるから停止するんだね、と判断してクラッチを切る、だがこっちは一瞬の停止からの再発進をするつもりだから、バイクはギアの選択に迷う……無反応からちょっと間を置いてグイッと動く、その一連の過程にギクシャク感が残るのだ。
これがマニュアルだったら、半クラッチで推進力をキープする。もともとバイクは不安定だから、動力をわずかでも伝えていたい。教習所の一本橋やクランクで、半クラッチを使いないさいと言われたことを思い出す。
というわけで習得したのは、一旦停止からの再発進では、スロットルをわずかに開けながら低回転をキープ、同時に右足でブレーキング。つまり、DCTのコンピューターを欺き、クラッチを切らせないのである。これで格段にストップ&ゴーがスムースになった。
やはり最新に触れるのも悪くはない。レトロモダンが好みでも一方で最新フェチでもある。そして「レブル1100 DCT」は、ライディングマニアの気持ちをくすぐってくれた。
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。








