日本のメーカーとも深い繋がりを持つイタリアン・メーカー 「FBモンディアル」の歴史と最新モデルを解説

3年ぶりの開催となった東京モーターサイクルショーでは、国内外の様々なメーカーが最新モデルを公開しました。なかでも筆者(渡辺まこと)が気になったのが「FBモンディアル」のモデルです。ここではFBモンディアルの歴史と最新モデルについて解説していきます。

スタイリッシュなモデルを手掛ける「FBモンディアル」

 去る2022年3月26日(金)~28日(日)に東京都台東区、お台場にある東京ビッグサイトにて開催された『第49回東京モーターサイクルショー』。3年ぶりの開催となる今回は初日に3万294人(前回比92%)、2日目に5万975人(前回比84%)、最終日に4万2170人(前回比75%)を動員し、かなりの盛況を博したのですが、日本最大級のショーイベントだけに各メーカー、力のこもったニューモデルを発表する場となっています。

全長2025mmというコンパクトなボディサイズにタンクやシートなど個性的なデザインの外装で固められた『HPS300』。カラーリングは日本限定色とのことで、チンスポイラー(アンダーカウル)のデザインも秀逸です
全長2025mmというコンパクトなボディサイズにタンクやシートなど個性的なデザインの外装で固められた『HPS300』。カラーリングは日本限定色とのことで、チンスポイラー(アンダーカウル)のデザインも秀逸です

 日本の4メーカーはもちろん、海外メーカーも意欲作を発表し、注目のニューモデルが発表される同ショーですが、その中で筆者(渡辺まこと)の目にとまり、気になったメーカーがここに紹介する『FBモンディアル』です。

 ちなみに『FBモンディアル』というメーカーについて簡単に説明すると、『1929年にイタリアのミラノで設立されたオートバイメーカーで、ルイージとカルロ、エトーレとエイダのボぜリ兄弟によって設立されたとのことで、FBとは『Fratelli Boselli』の略。翻訳すると『ボゼリ兄弟』という意味で、『MONDIAL』はイタリア語で『世界的』となります。

『FBモンディアル』は第二次世界大戦の影響で1943年に一旦、幕を閉じるのですが1948年に復活し、1949年には『世界GP』で優勝。125ccや250ccクラスで勝利を重ねるのですが、1957年にはホンダの創業者である本田宗一郎がモンディアルのマシンを手に入れ、それを参考に『RC141』が生まれた逸話が知られています。
 
その後、モンディアルはイタリアのバイク産業の衰退と共に業務を縮小し、1979年に一度は市場から撤退。20年後の1999年にロベルト・ジレッティが権利を取得することで再び産声を上げるのですが、この際、2000年に生産された『モンディアル・ビエガ1000』にホンダVTR1000SP-1(RC51)のエンジンが供給された流れは、1957年にホンダがモンディアルのボゼリ伯爵から『125GP(モンディアルの車名)』を手に入れた際の『恩』を返すカタチで実現に至ったとのことです。

カウルとテール&サイドカウルが追加された『Pagani1948』は、よりカフェレーサー的なイメージ。基本的に『HPS300』と共通のスペックながら、より外車らしい高級感を感じさせます
カウルとテール&サイドカウルが追加された『Pagani1948』は、よりカフェレーサー的なイメージ。基本的に『HPS300』と共通のスペックながら、より外車らしい高級感を感じさせます

 こうした流れを見ると我が国、日本のバイク産業と『FBモンディアル』というメーカーは、かなり深い繋がりを感じるのですが、紆余曲折を経て2014年にモンディアル・ブランドの所有者であり、創業者の子孫にあたるピアルイージ・ボゼリとPelpi InternationalItalyのチェザーレ・ガリによって現在の体制となり、2015年にイタリア・ミラノで開催されたバイクの見本市「EICMA」にて『HPS125』を発表しました。

 今年の東京モーターサイクルショーでは、HPS125の上級モデルである『HPS300』が展示されていたのですが、搭載された水冷SOHCシングル(単気筒)の4バルブ・エンジンは、ボア77㎜×ストローク53.6㎜の排気量249cc。最高出力は17.0 kW (約23ps)/8,500 rpm、最大トルクは22.5 Nm/6,500 rpmで『ユーロ5』に適合したというスペックなのですが、何より目を奪われたのはそのボディデザインの秀逸さ。

搭載されるエンジンは水冷SOHCシングル(単気筒)の4バルブ・エンジンはボア77㎜×ストローク53.6㎜の249cc。最高出力は17.0 kW (約23ps)/8,500 rpm,最大トルクは22.5 Nm/6,500 rpmで『ユーロ5』に適合。『HPS300』、『Pagani1948』ともにスペックは共通です
搭載されるエンジンは水冷SOHCシングル(単気筒)の4バルブ・エンジンはボア77㎜×ストローク53.6㎜の249cc。最高出力は17.0 kW (約23ps)/8,500 rpm,最大トルクは22.5 Nm/6,500 rpmで『ユーロ5』に適合。『HPS300』、『Pagani1948』ともにスペックは共通です

 実際、『FBモンディアル・ジャパン』の赤堀健二さんも、このデザインに惚れ込み、取り扱いを開始したとのことで立体造形物に定評のあるイタリア製らしいクールなデザインに仕上げられています。またショートタイプのアップマフラーも作り手の遊び心を感じさせるものです。
 
 販売価格はネイキッドの『HPS300』が57万6400円、カウル付きの『Pagani1948(Sport Classic 300)』は58万800円(ともに消費税10%込)。ちなみに『Pagani1948』という車名は、1949年にOstendで行われた最初の125cc世界選手権で優勝したライダーであるNello Pganiへの敬意を表して名付けられたものだそうです。

 その歴史を振り返ると我々、日本のモーターサイクルシーンと決して無縁ではない『FBモンディアル』というメーカー……そうした背景を差し置いても、かなり気になる存在です。

【画像】FBモンディアル「HPS300」「Sport Classic 300」を画像で見る(12枚)

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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