よく知らないかも…フレーム形状ごとにメリット・デメリットはあるのか?

一口にバイクといっても、ネイキッドやアドベンチャー、スクーターなど、フレーム形状は多種多様です。そしてバイクのフレームは、そんなバイクの用途や種類ごとに採用されている形状が異なるようですが、フレーム形状ごとにメリット・デメリットはあるのでしょうか。

フレームはバイクの骨格であり一長一短

 バイクのフレームは、動物の骨格にあたる役割をしているほか、エンジンやトランスミッションなどの主要な部品を載せるための土台でもあります。フレームが強度不足では最悪フレームが折れてしまい、剛性不足だとスピードを出して走る際に安定性が低下したり、ねじれが生じたりしてしまい非常に危険です。

フレームはバイクの「強度」と「剛性」が求められます
フレームはバイクの「強度」と「剛性」が求められます

 したがって、フレームにはバイクに要求される「強度」と「剛性」が求められます。加えて、生産性や販売価格を考慮した「製造コスト」も条件に入るでしょう。

 そんなバイクのフレームは、バイクの用途や種類ごとに採用されている形状が異なります。では、フレーム形状ごとにメリット・デメリットはあるのでしょうか。

■クレードルフレーム 

 クレードルとは英語で「ゆりかご」を意味しており、エンジンを上と下から囲むような構造をしたフレームです。しかし、剛性が不足する傾向にあり、現在のバイクにはあまり採用が見られません。

 しかし、全てのフレームはクレードルフレームを基礎にして派生、進化していったとされています。

■ダブルクレードルフレーム

ダブルクレードルフレームを採用するホンダ「CB400SF」
ダブルクレードルフレームを採用するホンダ「CB400SF」

 ダブルクレードルフレームは、前述のクレードルフレームのパイプを増やした形のフレームです。ハンドルを取り付けるステアから、フレームのパイプが左右広がり、エンジン全体を囲うような形をしています。

 メリットは、シングルクレードルで不足気味だった剛性が得られることです。加えて、補強を追加するだけでフレームの剛性を高められる特徴があります。しかしその反面、重くなりやすいほか、フレームがエンジン全体を囲っているため、エンジンの着脱やメンテナンス性が低下するというデメリットも挙げられます。

 今も昔も多くのモデルに採用されており、ホンダ「CB400SF」や「CB1100」、ヤマハ「XJR1300」、スズキ「GSX400FSインパルス」など知名度のあるバイクにも採用されています。

■セミダブルクレードルフレーム 

セミダブルクレードルフレームを採用するホンダのアドベンチャーモデル「CRF1000L Africa Twin」
セミダブルクレードルフレームを採用するホンダのアドベンチャーモデル「CRF1000L Africa Twin」

 セミダブルクレードルフレームは、シングルクレードルの軽さと、ダブルクレードルの剛性の高さを組み合わせたフレームです。ふたつのフレームの長所を組み合わせているため、軽量化と必要な剛性が確保できているのがメリットです。

 しかし、ダブルクレードルよりもフレーム全体の剛性が高くないことから、高速走行をするバイクには採用できないのがデメリットといえます。

 ヤマハ「WR250」やホンダ「CRF1000L Africa Twin」「GB350」のように、軽さが求められ、高速走行で必要な高剛性が不要なバイクに採用される場合が多いです。

■ダイヤモンドフレーム(バックボーンフレーム) 

ダイヤモンドフレームを採用するヤマハ「YZF-R25」
ダイヤモンドフレームを採用するヤマハ「YZF-R25」

 まずダイヤモンドフレームは、エンジンそのものを剛性部品の1つにしたフレームです。そしてダイヤモンドフレームと似た構造で、エンジンをフレームから吊り下げているものをバックボーンフレームといいます。

 それぞれ別のフレームとして扱う場合もありますが、最近で同類扱いにする傾向があるため、今回は一緒に説明します。ただし、バックボーンフレームは小排気量のバイク、ダイヤモンドフレームは馬力のあるリッタークラスに採用される傾向にあり、求められる剛性や強度は全く異なるものです。ちなみにこのふたつに共通しているのは、エンジンの下側にフレームはなく、エンジンを上側から固定するようになっている点です。

 メリットは、エンジンの下側にフレームが無いため軽量化ができ、設計のレイアウトの自由度が高まる点です。加えて、エンジン着脱が他のフレームより簡単にできるため、整備がしやすいのも魅力です。しかし、フレームだけでなくエンジン自体にも一定の強度を持たせた設計をしないといけません。

 現在は、スズキ「Vストローム1050XT」や「GSX-R125」、カワサキ「GPZ900Rニンジャ」、ヤマハ「YZF-R25」などに採用されています。

■アンダーボーンフレーム 

アンダーボーンフレームを採用するホンダ「PCX」
アンダーボーンフレームを採用するホンダ「PCX」

 アンダーボーンフレームは、前述のバックボーンフレームとは逆で、エンジンの下側にフレームを通した形をしています。しかし、その一方で上側のフレームがないため、二輪車に特有の足を上げて跨る必要がありません。

 バイクの足元の空間が確保しやすく、積載性を高める設計に向いていますが、背骨に該当するフレームがないため、強剛性を持たせることができないというデメリットもあります。

 主にスクーターに採用されており、例えばヤマハ「ビーノ」や「トリシティ125」、ホンダ「PCX」、スズキ「アドレス110」などが挙げられます。

■ツインスパーフレーム 

ツインスパーフレームを採用しているホンダ「CBR1000RR」
ツインスパーフレームを採用しているホンダ「CBR1000RR」

 ツインスパーフレームは、ハンドルのステムから2本の太いメインフレームがスイングアームを取り付けるピボットまで伸びているフレームです。また、エンジンを左右から挟み込むように固定しているという特徴もあります。

 メリットとしては、フレームの剛性を調整しやすいことが挙げられますが、製造コストが非常に高く、車体の幅が横に広がってしまうというデメリットもあります。

 カワサキ「Ninja ZX-10R」やスズキ「GSX-S1000GT」、「ハヤブサ」シリーズのほかにも、ホンダ「CBR1000RR」など、スポーツ走行ができるモデルに採用される傾向があるようです。

■トラスフレーム 

トラスフレームを採用しているスズキ「SV650」
トラスフレームを採用しているスズキ「SV650」

 トラス(トレリス)フレームの「トラス」とは、橋などの建造物で使用される複数の三角形で構成された骨組を指します。径の異なるパイプを組み合わせることで、十分な強度と剛性を必要な部分に持たせることが可能なのです。ちなみにトラスフレームは、ダイヤモンドフレームに似た形をしています。

 他のフレームよりも設計の自由度が高いことに加え、用途に応じて必要な強度と剛性を追及できるメリットがあります。また、比較的軽量に作ることもできるようです。

 一方、パイプを溶接して製造するため、熟練の作業が必要なほか、手間がかかるため大量生産には向いていません。

 採用しているモデルとしては、BMW Motorrad「G310GS」、スズキ「SV650/SV650S」などが挙げられます。

■モノコックフレーム 

モノコックフレームを採用した「ZX-14R」
モノコックフレームを採用した「ZX-14R」

 モノコックフレームは、もともと航空機で採用されていた構造で、フレームの中が空洞になっており、卵の殻のように外側の面で形を保っています。また、フレームの多くは骨格のようになっているものの、モノコックフレームは骨ではなく、甲殻類のように外側の殻で形を支えます。

 メリットとして、軽量化と強度を高くしやすい点が挙げられますが、設計が難しいことに加えて部品交換に手間が掛かり、部分的な修理には不向きなデメリットもあります。

 採用しているモデルとしてはカワサキ「ZX-12R」や「ZX-14R」、DUCATI「ムルティストラーダ V4S」がラインナップしています。また、ベスパのスクーターはほとんどがモノコックフレームです。

■フレームレス 

 そして最後は、フレームを持たない構造のフレームレスです。フレームレスは、エンジン自体に剛性を持たせて、シャフトドライブの一部がフレームとして機能しており、バイクの各部品を橋渡しするパーツでつなぎ、バイクの形を作っています。

 メリットは、フレームがないため軽量化が容易なことです。しかし、デメリットとして、剛性の調整ができず、設計が不十分だと高速走行での直進安定性が低下し、カーブでは車体が捻じれるような動きをする点が挙げられます。

 フレームレスを採用している有名なメーカーとしては、BMW Motorradが挙げられ、例えば同社の「R1100GS」や「R1100RS」などに採用されているようです。

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 一口にフレームといっても、それぞれ特徴があり、メリット・デメリットも多種多様です。ご自身が乗っているバイクのフレームがどんな形をしているかを知れば、新しい発見があり愛着が増すかもしれません。

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