原付一種の電動バイクTROMOX「MINO」「MINO-B」 小さな車体に秘める可能性

TROMOX「MINO」「MINO-B」はいわゆるギヤ付きミニバイクのようなスタイルを持つ原付一種の電動バイク。その小さな車体に詰まった楽しさやいかに……!?

希少な小型ファンモデル風電動バイク

 乗り物として“遊ぶ”心をくすぐられるルックスを持ちながら、なによりコンパクト。原付免許で乗ることができる原付一種の電動バイクがTROMOX「MINO」「MINO-B」です。今のところはスクーターが多いこのクラスの電動バイクの中で、稀有な存在と言ってもいいかもしれません。

TROMOX「MINO」と筆者(伊藤英里)
TROMOX「MINO」と筆者(伊藤英里)

 TROMOXは中国に本社を置く電動バイクブランドです。従来のMINOに加え、昨年のEICMA2021で新たにMINO-B、UKKO S(原付二種)がお披露目されました。日本では電動バイクを輸入、販売するMSソリューションズの電動バイクブランド「XEAM」にラインアップされ、2022年、MINO-BとUKKO S(原付二種)がその中に加わっています。UKKO Sについては別の記事で触れますので、気になる方はぜひそちらもご覧ください。

 コンパクトな車体は見た目を裏切らず、身長153cmの筆者(伊藤英里)がまたがっても足着きに不安を感じることは全くありません。シート高はMINOが680mm、MINO-Bが710mmと、MINO-Bの方が30mm高いものの、どちらもしっかりと足裏が着くほど。何より車体重量がMINOは約69kg、MINO-Bは76kgとどちらも超軽量なので、「これならもし足着きが悪くても問題ないな」と思えるほどです。そのくらい軽いから、取りまわしについても楽々。かなしいかな、筋力に乏しい筆者であっても、苦痛を感じることもありませんでした。

TROMOX「MINO-B」に乗る筆者(伊藤英里)
TROMOX「MINO-B」に乗る筆者(伊藤英里)

MINOとMINO-Bはどう違う?

 MINOとMINO-Bは基本的な機構は同じですが、コントローラーのセッティングに多少の違いがあり、スポーツモードの最高速度が異なっています。二つの走行モードのうち、エコモードは最高速度が30km/h、そしてスポーツモードではMINOが45km/h、MINO-Bが55km/h。また、タイヤもMINOが10インチ、MINO-Bが12インチ。ホイールベースもMINO-Bの方がやや長めになっていて、MINO-Bはオフロードバイクを意識したデザインになっています。

 じつは乗る前まで、どのくらい違いがあるものだろうか、と思っていました。しかし乗ってみれば、なるほど、とすぐに納得することになりました。コントローラーのセッティングの違い、それが明確に感じられ、MINOとMINO-Bにはアクセルを開けたときの最初のトルク感が異なっていたのです。

TROMOX「MINO」
TROMOX「MINO」

 MINOにはエコモードのゆったりとした、そしてスポーツモードのロケットのような加速があるのに対し、MINO-Bは抑えすぎではなく、それでいてゆったりと加速を味わえます。スポーツモードでは最初の過敏なトルク感がややマイルドになり、MINOほど繊細なアクセル操作は必要ないように感じられました。12インチのタイヤと長めのホイールベースも、カーブでの安定に寄与しています。正直なところ、MINOの荒削りな部分をアップデートしたものがMINO-Bなのだろう、と感じます。とはいえMINO-Bは後発のため、比べてしまえばそう感じるのも自然なことかもしれません。むしろ、TROMOXはMINO-Bという形で進化しているのだろう、と感じ入ることができました。

「こうだったら」と望む点を挙げるならば、MINO、MINO-Bともにブレーキをかけるとアクセルを開けていても出力がカットされてしまうところの改善。つまり、例えばリヤブレーキを当てながら低速でUターンといった走り方ができないのです。何度かMINO、MINO-B両方で試しましたが、スポーツモードで右手のアクセル操作のみによるUターン、低速走行はかなり難しいものがありました。少しアクセルを開けても、ドンとトルクがやってくるからです。

 低速を必要とするシーンでは、トルク感のマイルドなエコモードに切り替えるのがよさそう。そういった「シーンによって走行モードを変える」のも電動バイクの走らせ方として、面白さの一つだと思います。このサイズのバイクならば、アクセル操作なしに足を着いてUターンすることもできるでしょう。ただ、例えば街中の走行では状況に応じた素早いスピードコントロールを求められるシーンもあるでしょうから、やはりこの点は改善を期待したいところです。

ライディングポジションは小柄な筆者でも余裕を感じるもの(MINO)
ライディングポジションは小柄な筆者でも余裕を感じるもの(MINO)

 とはいえ、MINO、MINO-Bはともに“走りを楽しむ”バイクに乗る最初の一歩として、ハードルが高くはない、一緒に遊びたくなるバイクであることは間違いありません。日常の足に使うにはもってこいのサイズ感ですし、小回りだってお手の物。この小さな車体から、クルマに乗せて旅先でのレジャーバイクとして楽しむユーザーもいるそうで、それにも納得です。自転車の代わりに旅先の移動手段として、もちろん日常の足として、はたまたプチツーリングを楽しむ相棒として。マルチに活躍する小さな心強いパートナーになってくれそうです。

 メーカー希望小売価格はMINO が29万9800円(消費税10%込み)、MINO-Bが32万9800円(消費税10%込み)となっています。

【画像】TROMOX「MINO」「MINO-B」を画像で見る(32枚)

画像ギャラリー

Writer: 伊藤英里

モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。

最新記事