なぜ東南アジアでは150ccモデルの需要が高いのか?

バイクは国内外問わず、さまざまなメーカーから幅広い排気量のモデルが発売されていますが、日本国内では150ccモデルのラインナップは非常に少ないのが現状です。その一方で、150ccモデルは東南アジアでは非常に需要が高いといいます。これには、いったいどのような理由があるのでしょうか。

東南アジアの人々の足となっている150ccクラス

 150ccクラスのバイクは、国内メーカーから販売されているモデルの数が非常に少なく、日本国内では微妙な立ち位置のバイクといえるかもしれません。ところが世界的には、150ccクラスのほうがスタンダードといっても良いポジションを築いています。その一方で、150ccモデルは東南アジアでは非常に需要が高い傾向にありますが、いったいなぜなのでしょうか。

多くのバイクが走るタイ国内
多くのバイクが走るタイ国内

 そもそも、約70年前の日本では150ccがメジャーな排気量でした。1949年に、道路交通取締法の改正に伴って、バイクの免許は排気量に制限がない自動二輪と、150cc以下のバイクが運転できる軽自動二輪の2つに分かれました。

 当時の日本人の交通手段はバイクが大半であり、四輪のクルマに乗れる人は、ごく限られた一部の層だけだったと言います。現在、同様のことが東南アジアでも言えており、これが150ccモデルが東南アジアで人気を集めている理由のひとつと言えるでしょう。現に、東南アジアで普及しているバイクの大半を、100cc〜150ccクラスが占めています。

タイではバイクの排気量が100㏄以上でミドルクラスに該当
タイではバイクの排気量が100㏄以上でミドルクラスに該当

 まず、タイではバイクの排気量が100㏄以上でミドルクラスに該当します。つまり、日本の250cc〜400ccクラスのバイクが、タイでは100ccということです。タイの二輪免許は、2021年にようやく大型バイクの免許区分が整備されたほどで、日本に比べて排気量に関しての細かな規定がありません。

 国民の主な移動手段としては、主に125ccと150ccクラスバイクが使用されており、中でもスクーターと150ccクラスのスポーツバイクの人気が高いようです。また、タイ工業連盟が発表した統計によると、2021年度のタイ国内の二輪車販売数は160万6481台で、ここ数年はずっと右肩上がりで台数が増えています。ちなみに、タイ国内の新車登録台数の1位がホンダ、次がヤマハとなっており、高いシェアを誇っています。

タイで生産されているホンダの「モンキー125」
タイで生産されているホンダの「モンキー125」

 ベトナムでもバイクが主な交通手段となっており、タイと同様に125ccクラスや150ccが主流です。もともとは自転車が主な移動手段でしたが、経済発展が進むにつれて、より広範囲に移動できるバイクが普及しました。

 2021年は、新型コロナウィルス感染症の影響で減少したとはいえ、販売台数は約250万台という数になっています。なお、ベトナムのバイクの免許制度の区分は、排気量175cc以下の「A1免許」と、排気量無制限「A2免許」の2種類しかありません。また、フィリピンも同様にバイクの販売台数が右肩上がりの傾向にあり、2018年の段階で159万台を突破しています。

 現在の東南アジア諸国では、150ccのバイクが庶民の手が届く交通手段のひとつになっています。現在の日本のように、趣味としてバイクに乗るのではなく、生活の一部としてバイクが浸透しているということです。

2017年にリリースされたヤマハは「GDR155」
2017年にリリースされたヤマハは「GDR155」

 ちなみに、国内のバイクメーカーは、海外向けに150ccクラスのバイクを近年相次いで発表しています。例えば、2017年にヤマハは「GDR155」をリリースして、ベトナム・タイ・インドネシアの工場で生産し、現地で販売しています。他にも「XSR155」を発表して、話題を呼びました。また、ホンダは2021年5月にインドネシア向けに「CB150Rストリートファイア」をリリースしています。

※ ※ ※

 東南アジアでは150ccクラスのバイクが主な交通手段となっています。経済発展によって普及が進み、販売台数も右肩上がりの傾向が続いています。

 国内のバイクメーカーもシェアの上位を占めているので、今後も東南アジアなど、150ccクラスが人気の地域では150ccモデルが増えていくかもしれません。

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