原付バイクの法定速度30km/h! いつ・なぜこの速度に定められたのか?

原付二種など、普通自動二輪車の一般道での法定速度は60km/hに定められていますが、排気量50cc以下の原付バイクは、30km/hとなっています。では、この数字は一体いつ・なぜ定められたのでしょうか。

原付バイクの法定速度は、なぜ30km/hに定められたのか?

 現在の法律で定められている原付バイクの制限速度は30km/hとなっています。

 これに違反した場合、制限速度を15km/h未満の範囲で超えた場合は1点の違反点数と6000円の反則金が、25km/h以上~30km/h未満の範囲で超えた場合は、3点の違反点数と1万2000円の反則金が課せられます。さらに、これを超えて制限速度の30km/h以上〜50km/h未満で違反すると、6点の違反点数が、50km/h以上の速度違反は12点の違反点数が課せられます。

原付一種バイクの速度メーターを見ると60km/hまで表示されています
原付一種バイクの速度メーターを見ると60km/hまで表示されています

 しかし、原付バイクの速度メーターを見ると60km/hまであり、加速性能は自動車に負けないくらいに加速できるモデルが販売されています。いったいなぜ、原付バイクの制限速度は30km/hに定められているのでしょうか。

 そもそも、原付免許(50ccまでの運転免許)は、1952年の「第一種(50ccまで)許可」という、現在の原付一種に通ずる許可証が始まりと言われています。30km/h規制もこの時に定められました。

 そして1955年に、試験が必要な現在の「第一種原動機付自転車免許」へと変更されたというわけです。原付バイクがなぜ制限速度が30km/hなのか、そしてなぜ「原動機付二輪車」ではなく「原動機付自転車」という正式名称なのかも、この免許が誕生した頃の50cc原付バイクに起因します。

ホンダ「カブF号(1952)」
ホンダ「カブF号(1952)」

 当時の50cc原付は、ホンダ「カブF号」のように、自転車にエンジンとゴムベルトを後付して乗る、まさしく「原動機(エンジン)付の自転車」でした。

 この原動機付自転車が出せる速度が20km/h前後であったとされ、そこから考えられた制限速度のようです。しかし、時代とともに技術は発達しており、現在の50ccのエンジンは20km/h以上で走ることは十分可能になっています。

 それなのに、原付バイクの制限速度が1955年当時からほとんど変わっていないのは、なぜなのでしょうか。

 その理由は死亡事故につながる確率が下がるということです。警察庁交通局の公開している「危険認知速度別交通事故件数(令和2年)」では、死亡事故の約49.8%が40km/h以上で発生しているというデータがあります。

警察庁交通局の公開している「危険認知速度別交通事故件数(令和2年)」では、40km/h以上で発生しているというデータがあります
警察庁交通局の公開している「危険認知速度別交通事故件数(令和2年)」では、40km/h以上で発生しているというデータがあります

 原付だけの死亡事故率は、2012年(平成24年中)のデータが公開されており、原付運転者の「危険認知速度別交通事故件」では20km/h〜30km/hの死亡事故率が0.4%、30km/h〜40km/hの場合は0.76%と、2倍近い数値になっています。

 また、単独事故でも同様の結果が出ており、30km/hを超えると事故全体の割合が少ない単独事故ですら亡くなってしまう人が出ているようです。つまり、制限速度の30km/hは、50ccの原付バイクが安全に道路を走行しやすい速度だということがわかります。

まだまだある!原付バイク特有のルール

 ちなみに、制限速度のほかにも、高速道路走行不可や第1通行帯通行義務、2段階右折、2人乗り禁止など、原付バイクには特有のルールがあります。原付バイク(原付一種)は、速度が30キロに制限されるため、高速道路での走行は認められておらず、これは原付二種でも同様です。高速道路を走行する場合は、排気量が126cc以上でないといけません。

原付一種は、左側を走行することが定められています(第1通行帯通行義務)
原付一種は、左側を走行することが定められています(第1通行帯通行義務)

 第1通行帯通行義務は、「原付一種はいつも左車線を走らなくてはならない」というルールです。原付バイクは、制限速度と小さな車体から、追突や事故に巻き込まれる危険性が高いため、左側を走行することが定められています。

 原付バイク特有のルールで有名なのが2段階右折です。一般的には片側3車線以上の交差点で右折するときは、右折帯に入りますが、原付バイクは2段階右折をしなくてはいけません。また、2段階右折は、直進をして交差点をわたった先で車両の方向を変え、ウィンカーを消してから方向を変えた側の信号に従い、直進するというものです。

2段階右折禁止がある交差点では、ほかの自動車と同じように右折帯を走行して右折しても良いとされています
2段階右折禁止がある交差点では、ほかの自動車と同じように右折帯を走行して右折しても良いとされています

 簡単に言えば、交差点を真っ直ぐ渡り、向きを変え、また真っ直ぐ進むということをさしています。つまり原付バイクは、第1通行帯通行義務で左車線を走り続けながら、交差点で右折するためには2段階右折をする必要があるということです。しかし、道路標識で2段階右折禁止がある交差点では、ほかの自動車と同じように右折帯を走行して右折しても良いとされています。

 そして前述のように、原付一種は2人乗りが禁止されています。原付一種は1人乗り専用の乗り物のため、ほかのバイクには備えられている2人乗り用のステップが装備されていません。シートに無理やり2人で乗ると、違反となり取り締まりの対象となるため、注意が必要です。

 原付バイクは、最短だと1日で簡単に取れて簡単に乗ることができる乗り物です。30km/hの制限速度は、そんな手軽な立ち位置の乗り物だからこそ、自身の身を守り、安全に走行するために定められているといえるでしょう。

※ ※ ※

 ちなみに、原付バイクの速度メーターが60km/hある理由としては、「出力を絞ると、坂道を安定して登れなくなるため」や、「30km/hで燃料カットをすると、加速中にいきなりエンジンが失速し、後続車に追突されたりバランスを崩して転倒に繋がってしまう」などの理由があるようです。

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