組み込んでみて実感!ヤマハ「パフォーマンスダンパー」の実力とは
四輪車の基本性能を高めてきた「YAMAHA PERFORMANCE DAMPER」を軽快な走り味が身上のヤマハMT-25に組み込み、装着の有無での違いを検証した。
パフォーマンスダンパーの性能を探る
「YAMAHA PERFORMANCE DAMPER(以下:パフォーマンスダンパー)」の存在を初めて耳にしたのは確か2000年初頭だったと記憶している。その頃はすでに、日本の自動車も欧州車を超えるボディ剛性を備えるに至っており、それは操縦安定性や乗り心地は世界レベルにいた。だが、その基本性能をさらに高めるアイテムが誕生。それが「パフォーマンスダンパー」だというのだ。
開発と生産が車を販売していないヤマハだというのも興味を引いた。トヨタのクラウンアスリートに組み込まれたのが2001年のことだ。

ただ、「パフォーマンスダンパー」は、バイクにも有効であるとのこと。早速、軽快な走り味が身上のヤマハMT-25に組み込んで、有無での違いを検証したのである。
構造はショックアブソーバとほぼ等しい。パイプフレームとほぼ同じ様な太さの筒の中にガスやオイルやスプリングが組み込まれており、連結されたピストンの動きを規制する。フレーム剛性が変化するのだ。

ここで混同してはならないのは、ボディ剛性をいたずらに強固にするのではなく、ボディ粘性をコントロールすることだ。いわゆる金属のパイプを連結することでボディ剛性を強制的に高めるのではなく、無駄なしなりやたわみを抑え、それでいて必要な柔軟性は残すというわけだ。
想像できるのは、アスリートの足腰である。筋力をハガネのように徹底的に鍛え上げながらも、ゴムのような柔軟性を秘めているというわけだ。
その「パフォーマンスダンパー」を組み付けたMT-25でライディングを開始したのだが、走り出した瞬間に不思議なことが起こった。なんと、エンジンサウンドが変化したのである・・・。
「パフォーマンスダンパー」を組み込むとサウンとが変化する・・・? 狐に包まれたような感覚だが、それは事実である。そんなことが起こるとは、にわかに信じがたい。だが、現実だ。水冷2気筒サウンドの中の金属質な雑味が消えたのだ。鼓膜に響くような高周波が整えられた。

MT-25で「パフォーマンスダンパー」の有無のサウンドの違いは、コーナーでファインダーを覗き込むカメラマンが証言している。
「同じバイクとは思えない」そう言って驚いていた。
サウンドはマフラーからの音だけではなく、エンジン本体が発する振動やフレームの振動などが混ざってサウンドとなる。そのフレームの振動が抑えられたのであろう。
調律師によってメインテナンスを受けたピアノのように思えた。そういえばヤマハはピアノも製作している。会社の形態と関係があるのかないのかは不明だが、不思議な感覚だったのは事実だった。
操縦性も影響した。そもそも軽快に旋回したがるタイプのバイクだが、安定性がより強くなったのだ。

コーナーを前にしてラインを頭に描く、体重を移動させる。バイクがバンクを始めコーナリングを開始する。そして一定のアングルに維持し、コーナーを後にする。そういった一連のプロセスを無視したかのように、コーナリングラインをイメージした瞬間にもう適切な角度でバンクをはじめている・・といった感覚なのである。
復元も素早い。コーナーを駆け抜けた瞬間に直進性が回復したことにも驚かされた。乗り心地も改善されていた。
「パフォーマンスダンパー」はもう、サスペンション系のダンパーやスプリングが当然のように組み付けられているように、ごく当たり前のパーツになってもいいように思えた。それほどの効果がある。

こうして原稿を綴っている今でも、狐に摘まれたような感覚である。だがこれは、まやかしでも幻でもなく、理論的に説明のつく現実である。
■「パフォーマンスダンパー MT-25/03」の価格は、3万3000円(税込)です。
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。