EICMA2022 日立Astemoブースへお邪魔しました
バイクタレント兼こうのす観光大使・岸田彩美さんがイタリアで開催されたバイク見本市「EICMA2022」の日立Astemoブースについてレポートします。
最新テクノロジーを間近で体験
こんにちは。バイクタレントの岸田彩美です。今回はイタリアで開催されたバイク見本市「EICMA」初出展の2021年に引き続き、2022年も会場入り口手前に大きく構えた日立Astemoさんのブースについて解説していきます。
日立Astemoさんは2021年1月に、日立オートモティブシステムズ株式会社、株式会社ケーヒン、株式会社ショーワ、日信工業株式会社の4つの会社が統合してできた新会社です。会社が一つになったからこそ出来る技術がたくさん展示されていましたが、今年のテーマは“安心安全とSDGs”。より私たちにとって近い存在を感じられる展示内容となっていました。
まずは安全運転技術から解説してきます。
■二輪のADAS(Advanced Driver Assistance Systems/先進運転支援システム)

元々は四輪のADASシステムをもとに、二輪の車格に合うようにコンパクト化したもの。前方についているステレオカメラを介して画像処理を行い、障害物を察知した場合はライダーをサポートできる技術だそうです。
コミューターに関して(250cc位までの車両)は、昨年も紹介したDACS(減速アシストシステム)の技術をもとに、ABSのモーターを使って自動的にブレーキ操作がかけられるようになっているそうで、その後危険信号をスロットルボディ側に送り、ガソリンの噴射等を抑えることで安全に止まれるように手助けしてくれるんだとか。
ABSなど元々装備されているものを使うことで、価格を抑えることが出来るんですって!

続いてファンモデルも同様の仕組みですが、電動サスペンションによる制御が入るのが大きな違いです。
現在、この二輪ADASシステムが作動した際にライダーが転倒しないよう、どのような形で制御を入れていくか、そしてオートバイを操作する楽しみを減らさずにライダーアシストができるかを絶賛開発中。まだ商品化は決まっていないとのことでしたが、これからメーカーさんと話し合いを進めていくとのことでした。
また画像処理技術も障害物なのか、人なのかを察知することで ブレーキの操作ではなく“避ける”などの技術も出来ないか考えているそうです。
■大型車用のABSモジュレーター駆動前後サスペンションスプリングアジャスター

こちらは2系統のABSモジュレーター機能を利用して、フロントとリアサスペンションの油圧も調整できるようにしているそうです。大きなポイントは、従来の電動サスペンションに比べて大幅にコストが抑えられること。
私はここで大きな疑問が。ABSとサスペンションって全くの別物だよね? と思考が結び付かなかったのですが、共通しているのはどちらも“オイル”を使用していること。そのオイルを相互利用した結果生まれた技術なのだそうです。
またHEIGHTFLEXといって、信号待ちなどの停車時に車高が低くなる機能も備わり、まさに痒い所に手が届くような機能ですね。私も参考車両に跨って、体験させていただいたのですが、ABSのモジュレーター機能を使っているからか、シュイーンというモーター音と共に車高が上下しました。今までのセルフポンプ式と比べると、サスペンションが元に戻る時間もぐっと短縮されているそうです。
過去にアフリカツインの電動サスペンション付きモデルを試乗した際、リアサスペンションにプリロードを調整する別のタンクが付いていたのですが、この製品であれば調整するタンクは不要となり、軽量化につながります。
今回のEICMAの各メーカー出展車両を見ても、アドベンチャーバイクの展示の多さには驚くくらい、人気です。しかし……どうしても足つきが悩ましい。この製品が商品化されたら、アドベンチャーバイクを所有することも夢ではありませんね♪
昨年に引き続き様々なメーカーから電動バイクの発表・展示がされていました。以前住んでいたバルセロナの警察も電動バイクを採用しており、今後日常生活で見かけることが増えるのではないでしょうか。
■電動バイク向けとして展示されていたのがコンセプトモデルのE-Axle

インバーター、モーターそしてギアボックスを一つにコンパクトにまとめたものです。Astemoさんとしては電動化に向けた動きに対して少し遅れを取ってしまったそうなのですが、各ブランドがすでに持っていた知見を合わせることで、スピード感をもって開発が進められたとのことです。
E-Axleは車両のフレームにボルトで取り付けられるシンプルな構造です。一からモーター類を開発する費用面も抑えられる上に出力の形も調整することが出来るので、アジア圏のメーカーからお話が多数来ているそうですよ。

オンロードレース向け冷却アクスルホルダー&ツインチャンバーフロントフォーク
日立Astemoさんは全日本ロードレース選手権をはじめスーパーバイク世界選手権もスポンサードをしており、レース活動を通じてオンロードレース向け冷却アクスルホルダーを開発しています。
こちらはアクスルホルダーの部分に空気を通す機構を作ることによってブレーキを冷やせるようにしています。以前ブレーキにはBFF(バランスフリーフロントフォーク)という別のタンクを着けていたことによって、冷やしたい部分に風が当たりにくかったという問題があり、開発に至ったそうです。BFFを取り付けなくて済むようになった為、軽量化にも繋がっています。
またフロントサスペンションにはオフロードバイクの技術を転用したツインチャンバー式のフロントフォークを開発し、優れた減衰特性・応答特性および軽量化を両立しています。
レース活動を行う目的を伺ったところ、レースで速い=路面とグリップしている、つまり高速域でもグリップするということは、一般ユーザーが日常的に使用する際も安定感をもって乗れることに繋がためだそうで、一流の選手にしか感じ取れない部分を商品に落としこむことができるからこそ力を入れているんだそうです。
新しい視点で勉強になったと共に、応援する選手が力を注いだ商品を巡り巡って使えていると考えると、なんだか感慨深いですよね。
モータースポーツは面白いだけでなく、盛り上がることでより豊かな製品開発につながりそうですよね?

■MXGPモトクロス世界選手権ワールドチャンピオン、ティム・カイザー選手も登場
ちなみに一般公開日に日立AstemoさんがサポートをしているMXGPモトクロス世界選手権ワールドチャンピオンを獲得したティム・ガイザー選手によるサイン会が行われました。時間を告知していないにも関わらず、噂が噂を呼んであっという間に人だかりが出来ていましたよ。まさにスターですね。
今回お話を聞いた開発中の様々な製品は、会社が統合したからこそ出来たもの。統合当初は各ブランドの技術を知る事から始めたそうです。しかし皆がバイク好き同士だから苦は無かったそうで、互いを良く知り、互いの技術を活かす……開発された技術はまさに努力の結晶だなと思います。
現在、世界市場を見ても唯一無二の日立Astemoさんですが、今後同じような企業が出てきたらどうしますかと問いかけると、その可能性もありますが市場に出すスピード感は他よりもすでに一歩先に行っているので、そこは負けないですとのこと。
また、EICMAでは一般のお客さんもじっくり製品を見て興味を示している方が印象深かったそうで引き続き欧州でブランドの認知度を上げていきたいと仰っていました。
今年も日立Astemoの技術員さんに時間をかけて丁寧に説明していただいたおかげで 私も勉強すると共に 開発の背景を感じることが出来ました。
来年の東京モーターサイクルショーへの出展は未定だそうですが、もし気になる事があれば、気軽に質問してください! とのことでした。もしも皆様が展示会等で日立Astemoさんが出展していたら、ぜひ足を運んでみて下さいね。
今後もEICMAの記事はたっぷりと続きます! 最後までご覧いただき、ありがとうございました。
Writer: 岸田彩美
食べる事とインコが大好き。愛称:あやみん。2011年駒澤大学準ミスグランプリを取得後、ツインリンクもてぎのイメージガール、ツインリンクもてぎエンジェルを務めた。任期中に様々なバイクの楽しみ方に出会いその魅力に心を奪われた。トライアルデモンストレーション、MotoGP 日本グランプリでステージMCなどバイクのイベント出演や司会も務める。