道路の縦溝、バイクで走るのは怖い..!何のためにあるのか?

峠道などのツーリング中、細い溝が無数に走った道路をたびたび目にすることがあります。クルマでの走行時はあまり気にならないものの、バイクでの走行時はバランスを崩しそうになったり、グリップが不安定になった経験がある人も多いかもしれません。そもそもこの縦溝には、どのような役割があるのでしょうか。

細かな溝はクルマに役立つ滑り止め!バイクには逆効果

 カーブの多い山道やトンネル内には、道路にたびたび細い縦溝が刻まれていることがあります。一見すると普通の模様に見えますが、バイクで走るとタイヤのグリップが不安定な状況になり、危うく転倒しそうになったという経験がある人もいるかもしれません。

道路表面に刻まれた等間隔の細かな溝はグルービング工法と呼ばれる
道路表面に刻まれた等間隔の細かな溝はグルービング工法と呼ばれる

 そもそもこの溝には、どういった役割があるのでしょうか。

 道路表面に刻まれた等間隔の細かな溝はグルービング工法と呼ばれる、いわゆる滑り止めです。刻まれた細かな溝が排水溝として機能し、スリップの原因となる水を流して道路表面の水はけをよくする効果があります。その結果、雨が降っているときでも、グルービング工法が施された道路を走行するクルマは、他の道路に比べてスリップしにくくなるというわけです。また、施工されている道路がカーブであれば、タイヤのグリップ力を高めてスピンする危険を減らします。

 なお、高速道路や橋の上などの直線道路では、横風などに抵抗をもたせてクルマがバランスを崩してしまうのを防止します。また、細かな溝が雪や氷を分断して、スリップする面を作りにくくすることから、雨だけでなく、氷や雪からも滑りにくくする効果があるようです。

 ちなみに、グルービング工法は一見するとどれも同じに見えるかもしれませんが、実は複数の種類があります。

進行方向と同じ向きに縦に刻まれた溝を「縦型安全溝」という
進行方向と同じ向きに縦に刻まれた溝を「縦型安全溝」という

 まず、進行方向と同じ向きに縦に刻まれた溝を「縦型安全溝」といいます。溝の深さは6mmのものと、9mmのものに分かれており、溝を施す道路に合わせて変更されます。

 他にも、進行方向に対して横に刻まれたタイプもあり、こちらは「横型安全溝」と、名称も異なっています。また、縦型と横型の2つを組み合わせて、道路に溝をつける場合もあり「グレードアップグルービング」と呼ばれるようです。

 グルービング工法は、溝の向きが異なることで、それぞれ役割に違いがあります。例えば、縦型安全溝は、カーブでの運転の安定性や雨天時のスリップ事故の防止に効果的です。

 橋の上といった横風の影響を受けやすい場所や、凍結しやすい道路に施工されるケースが多いです。その効果は確かなもので、峠道のカーブに施工し、危険なドリフト走行の抑止に役立っているといいます。その他にも、上り下りが多いカーブや山間部の道、高速道路のカーブ、トンネル内に施されることもあります。

 そして横型安全溝は、スリップよりもクルマの制動力向上に効果があります。横型安全溝が掘られている道路は、雨などで濡れている状態でも50km/hで走行したときの制動距離が30〜40%短縮できるといいます。

 同様に、急ブレーキのタイヤのグリップ力を高めるのにも効果的なほか、タイヤから伝わる音と振動が、ドライバーの居眠り防止にも効果があるとされています。

 このように横型安全溝は、急な飛び出しなどが起きやすい住宅街の道路にも施工される場合が多いです。また、スピードの出やすい直線道路や減速が必要な交差点前、カーブの手前に横型安全溝が用いられます。

縦溝と横溝を組み合わせた「グレードアップグルービング」
縦溝と横溝を組み合わせた「グレードアップグルービング」

 ちなみに縦溝と横溝を組み合わせた「グレードアップグルービング」は、両者の機能を兼ね備えています。その見た目がタイル貼りにも見えてお洒落なことから、商店街の歩道にも施される場合があるようです。

 このように、スリップ防止や制動力アップに効果のあるグルービング工法ですが、ライダーにとっては走行時にバランスを崩しやすいスポットといえるでしょう。実際、安全溝の道でバランスを崩して転倒してしまうケースもあるといいます。

 では、バイクで走行するとき、気をつけるべきポイントはあるのでしょうか。

グルービング工法が施工されている路面に入る際には、十分に減速をおこなうことが重要
グルービング工法が施工されている路面に入る際には、十分に減速をおこなうことが重要

 まず、エリアに侵入する前に、十分に減速をおこなうことが重要です。また、ニーグリップをしっかりして上半身の力を抜き、視線は進行方向を見据えながら運転します。

 ちなみに、グループツーリングでは、遅れないように周りに合わせて速度を上げてしまい、転倒してしまうケースが起きやすいです。安全に楽しく走行するためにも、グルービング工法の上ではスピードを出しすぎないことが求められます。

※ ※ ※

 道路に細かな溝を刻んだ「グルービング工法」は、表面の水はけをよくしてタイヤのグリップを良くする、滑り止めとしての役割があります。

 ただし、その効果を受けやすいのは専ら四輪車のクルマになることが多いため、バイクで安全溝の上を通過する時は速度を落として、慎重に通過することがポイントといえるでしょう。

【画像】グルービング工法が施工された路面の画像を見る(6枚)

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