ヘップバーンや工藤ちゃんのとは違う!! 角型ヘッドライトのベスパ「スプリントS150」はスポーティな走りが自慢!?

「ベスパと言えば……」で、毎度出てくるヘップバーンや工藤ちゃんのハナシ。しかし年式やモデルが異なれば、姿やカタチはだいぶ異なります。丸目ではなく、角型ヘッドライトのモデルはスポーティ路線で1963年の「GL」から続く系譜。現行モデル「スプリントS150」は高速道路も走行可能な「走り」が自慢です。

エレガントで歴史あるブランド

 世紀を超えて愛され続ける不朽の名作、映画『ローマの休日』(1953年・米国)ではオードリー・ヘップバーンが演じるアン王女が乗り、TVドラマ『探偵物語』(1979年・日本テレビ系)では松田優作扮する主人公の工藤俊作が愛車としたことで広く知られるバイク、それがイタリアのスクーターブランド「Vespa(ベスパ)」です。

ベスパ「Sprint S 150」に試乗する筆者(青木タカオ)
ベスパ「Sprint S 150」に試乗する筆者(青木タカオ)

 イタリアンブランドらしく、その姿は個性的でスタイリッシュ。いつの時代も、オシャレで街に馴染むことで人気を博しますが、その歴史は古く、ベスパが誕生したのは第2次大戦後間もない1946年のこと。

 2021年には生誕75周年を迎え、生産台数1900万台、世界83カ国で展開するグローバルブランドに成長していることが、ピアッジオグループから発表されています。

角型ヘッドライトの「スプリント」

 愛嬌のある丸目ライトではなく、角型ヘッドライトでヒットしたのが1963年発売の「Vespa GL」でした。以来、ベスパのスポーティモデルの多くが角型となり、その伝統を継承してきましたが、それを現行ラインナップで受け継ぐのが「Sprint(スプリント)」シリーズです。

角型ヘッドライトが特徴的なベスパ「Sprint S 150」カラー:アウダーチェブルー
角型ヘッドライトが特徴的なベスパ「Sprint S 150」カラー:アウダーチェブルー

 排気量155ccの4ストローク空冷単気筒SOHC3バルブエンジンを心臓部とするのが「Sprint S 150」です。スクエアタイプのヘッドライトはLED式に進化し、フロントマスクを精悍なものとしています。

 シート高は790mmで、日本製の同じクラスと比較すると若干高いものの、身長175cmの筆者(青木タカオ)は足つき性に不安は感じません。

 センタートンネルがあり、足もとはフルフラットではないのですが、足を置くスペースは充分に確保され、自由度の高い乗車姿勢となっています。

 フロントのインナーパネルは開閉式で、小物入れやUSB充電ポートが備わっています。シートはバックスキン調の滑りにくい素材が表皮に用いられ、股の下には引き出し式のコンビニフックを装備。シート下にはトランクもあり、機能性も充分なレベルにあります。

麗しげに走りたい

 スロットルレスポンスは穏やかなものの、幹線道路でもクルマの流れをリードできるパワーがあり、軽二輪登録であることからもわかるとおり高速道路も走行可能。100km/hを維持したまま走ることもできるでしょう。

軽快で快適な走りも魅力。排気量は155ccなので原付ではなく軽二輪に区分される
軽快で快適な走りも魅力。排気量は155ccなので原付ではなく軽二輪に区分される

 ただし、快適なスピードレンジは街乗り、シティユースでゆったり走ったときにこそ持ち味を発揮します。CVTミッションが滑らかにつながり、加速感もどことなくエレガントで上質です。スチール製モノコックボディに片持ち式ボトムリンクのフロントサスペンションを組み合わせた車体は落ち着いた走りを好み、がむしゃらに走る気にはなりません。

 熟成の粋に達したハンドリングはゆっくり走る市街地では軽快、速度域が上がれば直進安定性の高さを感じます。スポーティさを強調するアルミキャストホイールは前後12インチ。フロントにローター径200mmのABSディスク、リアを140mm機械式ドラムとし、制動力にも不満はありません。

 車体側面からテールまわりにかけては膨らみのある曲線がボリューム感をもたらし、滑らかなラインを描くグラブバーやシートと見事な調和を見せています。テールライトもヘッドランプに合わせ大きなスクエア形状で、リアエンドにもデザインへのこだわりが強く感じられます。

カラーは青か、それとも緑か

 今回乗った車両は「アウダーチェブルー」で、最新のファッショントレンドと地中海に浮かぶイタリアの島々を囲む輝くマリンブルーの色合いからインスピレーションを得たもの。ほのかな青に踊るようなグリーンを加え、いずれも車体側面にレッドのストライプでスポーティさを際立てています。

スポーツベスパに与えられた角型ヘッドライト。各部に採用されたメッキが高級感・上質感を演出している
スポーツベスパに与えられた角型ヘッドライト。各部に採用されたメッキが高級感・上質感を演出している

 車体色はほかにも「テナーチェグリーン」が設定され、こちらは世界で3番目に大きい島、ボルネオ島の熱帯雨林にインスパイアを受けた森林の深い緑色。光の加減や角度によって、バイクがグレーに輝く野心的でエネルギッシュなカラーです。

 車両本体価格はどちらも52万8000円(消費税10%込み)。銀幕のヒロインやTVスターのように、ファッショナブルに街で乗れば、注目されること間違いありません。

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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