ヘルメットの種類は無関係だった!? あごひも結ばないライダーの最悪の結末 動画で警告【東京MCS2023】

日本自動車工業会二輪車委員会が、ヘルメットの正しい装着方法を警告する動画を作成し、『第50回東京モーターサイクルショー』のメーンステージ上モニターで初お披露目しました。モータージャーナリストの宮城光さんが解説する内容は、ライダーの安全常識を覆す衝撃的なものです。

半キャップだから脱落しやすい、という誤解

 動画『梅本まどかと宮城光のセーフティライディング!』では、ライダーの常識を覆す実験結果を見ることができます。動画ではタレントの梅本まどかさんが進行し、モータージャーナリストの宮城光さんが実証する流れで進みます。宮城さんは、次のように語りかけます。

『第50回東京モーターサイクルショー』で初披露された動画では、ヘルメットのあごひもを締めていた場合と締めていなかった場合の実験映像が紹介された。あごひもを締めない場合、ヘルメットの種類に関係なく簡単に脱落することを示す衝撃映像。ついうっかりの締め忘れにも注意が必要
『第50回東京モーターサイクルショー』で初披露された動画では、ヘルメットのあごひもを締めていた場合と締めていなかった場合の実験映像が紹介された。あごひもを締めない場合、ヘルメットの種類に関係なく簡単に脱落することを示す衝撃映像。ついうっかりの締め忘れにも注意が必要

「こちらは半キャップヘルメットもフルフェイスヘルメットも、あごひもを締めない状態で衝突した実験映像です。いとも簡単にヘルメットが脱げてしまいました。あごひもをしないとフルフェイスヘルメットでも、こんなに簡単に脱げてしまうのです」

 自動車衝突実験用ダミー人形にヘルメットを着用し、衝突の様子を撮影。半キャップとフルフェイスの挙動を比較した映像で、両者がほぼ同時に頭部から離脱します。

半キャップとフルフェイスの脱落時間には、ほとんど差はない

 ヘルメット脱落の死亡事故は、小型コミューターで多く発生しています。そのため半キャップを頭にのせるだけで走ってるスクーターを思い浮かべる人も多いかもしれません。

自工会二輪車委員会『梅本まどかと宮城光のセーフティライディング!』では、ほかにも出会い頭事故と右直事故防止、左折巻き込み事故防止、単独事故防止についても解説。ヘルメットとあわせて胸部プロテクターの着用も推奨している
自工会二輪車委員会『梅本まどかと宮城光のセーフティライディング!』では、ほかにも出会い頭事故と右直事故防止、左折巻き込み事故防止、単独事故防止についても解説。ヘルメットとあわせて胸部プロテクターの着用も推奨している

 しかし、あごひもをしていない場合、フルフェイスのほうが走行時の浮力により抵抗力があるので、半キャップよりあごひもをしていないことに気付きにくい可能性があります。半キャップとフルフェイスの脱落時間には、ほとんど差はないことを考えると、フルフェイスの方が、より重大なダメージを受ける事故につながる可能性があることを示しています。

 ヘルメットの脱落事故は、あごひもを結ぶ小さな手間を惜しんでいるだけでなく、ついうっかり忘れてしまう場合も多いのではないでしょうか。

 バイク死亡事故の約30%で、ライダーのヘルメットが脱落している――。これは1995~2020年のバイク事故を、日本自動車工業会二輪車員会が分析した衝撃の結果です。ヘルメット装着不良率を2022年1年間のバイク死亡事故に当てはめると、犠牲者は130人。

 これほど最悪の事態を、しかも大量に招いているとは誰も予想できず、ネット上には、あごひもをせずに事故に遭った人はすでに亡くなっているので、何年経ってもヘルメットの正しい着用の重要性が受け継がれないのではないか、という手厳しい意見もあったほどです。

 バイクにはシートベルト着用を警告するアラート機能はないので、ライダー自身が正しい着用を発進前に心がけるしかありません。

※二輪車事故防止啓発動画は、日本自動車工業会の公式ウェブサイト、特設ページ『梅本まどかと宮城光のセーフティライディング!』で公開中です。

【画像】二輪車事故防止啓発映像の紹介を見る(7枚)

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Writer: 中島みなみ

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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