トライアンフ新型「ストリートトリプル765」に試乗! 誰もが扱えるスーパースポーツの走りを体感
トライアンフの「ストリートトリプル」シリーズ最新モデルが、日本市場に投入されました。これにあたりサーキットを舞台にメディア向け試乗会が開催され、モーターサイクルジャーナリストの筆者(ケニー佐川)がその実力を体感してきました。
最新Moto2エンジン搭載で強力にアップデート
イギリスのバイクメーカーであるトライアンフは、最新の「ストリートトリプル 765 RS」を皮切りに、各種グレードの発売を2023年2月25日に日本国内で開始しました。
2007年に初登場したストリートトリプルは、同社の3気筒スーパースポーツ「デイトナ675」をベースに、公道での扱いやすさを重視して最適化されたネイキッドモデルでした。2017年には排気量を765ccに拡大し、ライディングモードやシフトアシストなどの電子制御を投入しつつ、年々改良を重ねてパフォーマンスを向上させています。
2023年モデルではエンジンを一新し、さらにパワフルな走りと洗練されたデザイン、先進的なテクノロジーを搭載した最新、最強シリーズとして生まれ変わっています。

新型ストリートトリプルでまず語るべきはエンジンでしょう。トライアンフは2019年より「ロードレース世界選手権」のMoto2クラスへ公式エンジンサプライヤーとして、ストリートトリプル765ベースの3気筒エンジンを供給していています。
Moto2から得られた知見とノウハウをフィードバックして開発した新設計の水冷並列3気筒エンジンは、従来モデルから7psアップの130psを達成するとともに、ピークトルクも80Nmへと強化されました。

車体や電子制御もアップデートされ、駆動系のギア比の見直しによりレスポンスと加速性能も向上しています。また、サーキット走行にも対応したトライアンフ・シフトアシストとスリップ&アシストクラッチも装備するなど、一段とハイスペックになりました。
ちなみに新型ストリートトリプル765シリーズには、スタンダード版の「R」、上級版の「RS」、そして限定モデルの「Moto2エディション」と3タイプの設定があり、今回の試乗会で用意されたのは「RS」になります。
扱いやすさはそのままによりパワフルでキレ味鋭く
新型ストリートトリプルの実車を筆者(ケニー佐川)が初めて見たのは、2022年11月にMotoGP最終戦が行われたスペイン・バレンシアGP会場です。目の前で繰り広げられるMoto2レースの傍らで、国際メディアローンチが開催されました。そこでトライアンフ開発陣から語られたのは「サーキット性能の素晴らしさ」、まさに演出効果は満点だったわけです。

そして今回、ピットロードに並べられた新型マシンを眺めて、あらためて「カッコいいなぁ」と。初代からのアイデンティティである2灯ヘッドライトのフェイスはさらに鋭く小顔になり、タンクサイドからシートカウルに至るラインがよりくっきりとシャープになっているなど、シルエットが全体的に洗練されました。

エンジンの吹け上がりは軽く、4気筒よりやや低めのハスキーヴォイスはいつもながら官能的です。跨るとシートはやや高く感じますが、これは運動性能を重視するジオメトリーに改良されたためでしょう。
コースインしてまず感じたのは軽さです。ハンドリングにクセがなく、右に左にひらひらと切り返せます。
そして、3気筒エンジン特有のトルクバンドの広さのおかけで、エンジン回転数にあまりシビアにならず気楽に流していても速い。間口が広く扱いやすいため、誰が乗ってもスポーツライディングを楽しめるマシンに仕上げてきた、という第一印象です。

その印象は、スロットルを開けると豹変しました。「世界最高峰のミドルクラスレースMoto2で鍛え上げられたトライアンフ伝統の3気筒エンジン」という看板は、伊達じゃないです。タイヤに熱を入れ、ライディングモードを「ロード」から「スポーツ」へ切り替えると、パワーの立ち上がりが俊敏になっていくのを感じます。
最もアグレッシブな「トラック」モードでは、タイトコーナーの立ち上がりから全開にすると、モリモリとトルクが沸いてきて2速からでもスーッとフロントが浮いてきました。その刹那、ウイリーコントロールが入って自然な形で収めてくれるため、スロットルを開け続けることができます。
加速の良さは、ギア比がショート化(加速重視の設定)されているのも効いているでしょう。試す度胸はありませんでしたが、コーナリング中でも対応するABSとトラクションコントロールが新たに装備され、いざというときの安心感も違います。

コーナーインでの鋭さも目を見張るものがあります。ハンドル幅が従来モデル比で12mmワイドになり梃子の原理で入力しやすく、またジオメトリーが見直されたことで俊敏性も向上したといい、実際に従来モデルと比べてもハンドリングの応答性が素早くなっています。
新たに採用されたブレンボ製STYLEMAキャリパー(ブレーキパッドを制御するパーツ)は強力かつ繊細なタッチで、速度もコントロールしやすくなりました。従来モデルが良くできていただけに、新型が断然凄くなったというわけではないのですが、スムーズな出力特性やこうした電子制御の進化が大きいと感じました。
ひと言で表すなら、扱いやすさはそのままによりパワフルでキレ味鋭く、といったところでしょうか。ちなみに低速からトルクも出ている感じで、パドック内でのUターンがしやすかったことも付け加えておきます。
スーパースポーツ顔負けのパフォーマンスを見せつてくれた新型ストリートトリプル。歴代シリーズ最高傑作であることは間違いありません。
Writer: ケニー佐川
佐川健太郎(ケニー佐川)
1963年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、広告・SP関連会社を経て独立。雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。海外試乗やメーカーやディーラーのアドバイザーとしても活動中。(株)モト・マニアックス代表。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。