ホンダ「NSR250R SE」は乗りづらくて超絶楽しい不思議な名車!? レーシングライダー石塚健の市販車インプレッション
レーシングライダーの石塚健選手が、ホンダ「NSR250R SE」に試乗。そのインプレッションです。
盛りだくさんの欠点と溢れる魅力
皆さんこんにちは!レーシングライダーの石塚健です。
先日、バイク王の絶版車を中心に展開するコンセプトショップ、バイク王茅ヶ崎絶版車館の絶版車試乗会に参加。何台か試乗させていただいたので、そのインプレッションしていきたいと思います。
今回は、そのなかの1台「NSR250R SE」について。

1986年に登場したNSR250Rは、WGP(世界ロードレース世界選手権)の250ccクラスで、1985年にフレディー・スペンサー選手がチャンピオンを獲得したNSR250のレプリカモデルとして登場。軽快で高い運動性能を発揮する、水冷2ストローク2気筒エンジンが、軽量なシャシーに搭載されたスポーツバイクです。

1986年デビューのMC16型、のちに最強のNSRと呼ばれることになる1988年登場のMC18型など、4回のフルモデルチェンジを行い、レーサー直系モデルらしい短いスパンでの進化を続けていきました。
そんな歴史的背景もあり、見た目はTHEレーサーレプリカ!と言った感じで、とにかくバイク好きの心をくすぐられるカッコ良さを感じます。

まずは足つきから。身長165㎝の僕が跨ると、シートはかなり低めで両足のかかとまでがビッタリと地面につくほど足つき性は良好です。取り回しについてもとても軽く、ハンドルの位置も低めなので、バランスを崩して倒してしまうという怖さは、まったくありませんでした。
それではエンジンを始動して走行していきます。エンジンを始動させるには、マルチメーターのカードリーダー部にカードを差し込むことで車両のシリアルナンバーを照合し、主電源やコンピュータ・ユニットの起動にくわえ車体内蔵式ハンドルロックを自動的に解錠させることができます。
アクセルを吹かすと2ストローク独特の排気音とオイルの焼ける匂いが広がり、今では少なくなってしまった2ストにワクワク感が込み上げます。
また、今回乗ったNSR250R SEは乾式クラッチが採用されているので、信号待ちなど止まった際にクラッチを握ると「シャラララ」と高めの回転音のようなサウンドがして、そこも個人的にはテンションが上がるポイントのひとつでした。

乗り心地については、やはりレプリカマシンなので、シートが固めだったり振動が強めだったりで、楽ではありません。おまけにポジションもかなり前傾で、ステップの位置も高くて足が窮屈。お世辞にも、長時間のツーリングに向いているとは言えません。
他にも、荷物の積みづらさやキックスタートの不便さなど、現代のバイクと比べてしまうと、乗り心地以外にも欠点を挙げると正直キリがない程です。しかし、それらを全て含めて、NSR250Rなんです。そんな多くの欠点を持ってしても、なおライダーが虜になってしまうポイントが沢山あるのがNSR250Rのすごいところ。
音、匂い、雰囲気、操作性、一度味わうと病み付きになってしまうライダーが沢山いるのが理解できてしまう、まさに名車です。

中回転域からの加速感には痺れるし、ライダー自身が操っている感覚を存分に楽しめます。乗っていて、とにかく楽しい。それだけで十分だと感じさせてくれました。
そんな人気のバイクだけあって、中古車でも中々見かけないレアな車体ではありますが、バイク好きな人には一度は乗ってみてほしい1台。中古バイクショップなどで見かけた際は、是非、またがってみてください。きっと、たくさんの欠点とそれを跳ねのける程の魅力を感じて頂けると思います。
■NSR250R SE 諸元表

車名・型式:ホンダMC28
全長×全幅×全高(m):1.970×0.650×1.045
軸距(m):1.340
最低地上高(m):0.130
シート高(m):0.770
車両重量/乾燥重量(kg):157/138
乗車定員(人):2
燃料消費率費(km/L)60km/h定地走行テスト値:22.2
最小回転半径(m):2.9
エンジン型式:MC16E(水冷・2サイクル・V型2気筒)
総排気量(cm3):249
内径×行程(mm):54.0×54.5
圧縮比:7.4
最高出力(PS/rpm):40/9,000
最大トルク(kgm/rpm):3.3/8,500
キャブレター型式:TB10
始動方式:キック式
点火装置形式:CDI式バッテリ点火
潤滑方式:分離潤滑(圧送飛沫併用)式
潤滑油容量(L):1.2
燃料タンク容量(L):16
クラッチ形式:乾式多板コイルスプリング
変速機形式:常時噛合式6段リターン
変速比:
1速 2.846
2速 2.000
3速 1.578
4速 1.300
5速 1.130
6速 1.000
減速比(1次/2次):2.500/2.933
キャスター(度)/トレール(mm):23°00′/85
タイヤサイズ:前110/70R17 54H / 後150/60R17 66H
ブレーキ形式:前 油圧式ダブルディスク / 後 油圧式ディスク
懸架方式:前 テレスコピック式 / 後 スイングアーム式(プロアーム)
フレーム形式:ダイヤモンド
「NSR250R SE」の発売当時の価格(税抜)は、72万円でした。
ル・マンで行われたテストの記事が #バイクのニュース で公開されています📲
テスト後直ぐに文字にしました笑
良かったら読んでみてください!いよいよ来週はレースウィークです。
走り切った先で何かを得られるよう、チームと共に全力で取り組みたいと思います。
応援よろしくお願いします😄👊 pic.twitter.com/GuGA7brahw— 石塚 健 / Takeshi Ishizuka (@Takeshi_722) April 5, 2023
Writer: 石塚健
(レーシングライダー)埼玉県出身の27歳。3歳からポケットバイクに乗り始め、ロードレースというオートバイ競技に参戦。現在は世界各国で活躍できるライダーを目指して日々、活動中。
2019年から、ヨーロッパでおこなわれる「FIM CEV REPSOL Moto2ヨーロピアンチャンピオンシップ」への挑戦を開始。2023年は、「FIM EWC 世界耐久ロードレース選手権」にフランスのJMA RACING TEAMより参戦します。スポンサー募集中!応援よろしくお願いします。