赤い車体が戦闘力の高さ示すGASGAS「EC250F」!! 3倍ではないけれど、操る楽しさはケタ違い!?
排気量250ccクラスのオフロードコンペティションモデルを所有してきた青木タカオさんが、ワイルドクロスパークGAIA(長野県大町市)でスペイン発祥の名門ブランド「GASGAS(ガスガス)」のエンデューロモデル「EC250F」に試乗しました。その印象は?
GASGASはスペインの名門ブランド
トライアルで世界タイトルを何度も獲得してきた「GASGAS(ガスガス)」。創業は1985年と比較的新しいものの、1993年にはジョルディ・タレス選手によってトライアル世界王者に輝き、1995年まで3連覇するなどその実力は超一流と言って異論を唱える人はいないでしょう。

日本のライダーにも、認知度を一気に高めるきっかけとなったのが2019年、KTMの親会社であるPIERER Mobilityグループの一員となったこと。KTMファミリーの一員となり、モトクロス/エンデューロモデルが日本へも導入され、オフロードバイクファンが購入しやすくなりました。
また、2021年からはロードレースへも進出し、MotoGPのMoto3クラスへフル参戦。ダカールラリーでは3年目にして優勝を果たすなど、より幅広い層にその名を知らしめることになり、存在感を急激に上げているブランドのひとつと言えます。
フレームまで赤く統一、見るからに高性能!
エンデューロ/クロスカントリー用のコンペティションモデルも性能を疑う余地はありません。真っ赤なボディグラフィックスは目をひくもので、見るからに戦闘力が高そうです。

インナーチューブ径48mmの倒立フォークとリンク式のモノショックは、それぞれ300mmものストロークを持ち、車体重量は105.6kgしかありません。ちなみに、ヘッドライトなど灯火器類が備わり、公道走行ができるように登録することも可能です。
KEIHINの42mm径スロットルボディを持つ4ストローク単気筒DOHC4バルブエンジンで、ボア×ストロークは78×52.3mm。目覚めはセルスターターによって一発ですから、始動に手こずる不安を解消しています。
エンストした場所が、キックアームを踏み降ろせないなどというシチュエーションでもいとも簡単に再スタートできるのはとてもありがたく、競技では大きな武器とも言えるでしょう。
ただし昨今はオフロード競技車でもセルスターターを標準装備している場合がほとんどなので、際立ったアドバンテージとはもはや言い難くなっています。軽量コンパクトになったリチウムイオンバッテリーによって、エレクトリックスターターの搭載を実現しています。
パワフルな4ストエンジン、加速は強烈!
ピックアップの良い4サイクルエンジンは低回転域からトルクが太く、右手のスロットル操作に敏感な反応を見せ、モトクロスコースでの試乗ではコーナーの立ち上がりやフロントをギャップに落とした時などパワーの欲しいところで力強く車体を押し出します。

タイトコーナーで速度を落としきってしまっても、すぐに力強く加速し、そのダッシュは強烈です。ストレートでアクセルをワイドオープンすれば、あっという間に次のコーナーが迫ります。
ブレーキはフロントが260mmウェーブディスクとブレンボ製2ピストンキャリパーとの組み合わせ、リアのローター径は220mmで、前後ともコントロール性と制動力に申し分なし。リアが跳ね上がることもなく、車体の姿勢を落ちつかせて、再びコーナーへアプローチしていけます。
また、油圧クラッチのレバー操作は軽く、繋がりや切れといったフィーリングも秀逸。機械式ワイヤーのような伸びがないので、長丁場のレースでもクラッチの遊びが変わってしまうなんてことがありません。
動きの良い足まわりに助けられる
林間セクションでは、しなやかに動きつつもストロークの奥ではしっかりと踏ん張りの効くWP製の前後サスペンションに助けられ、トラクション性能に優れる4ストエンジンやスチール製ダブルクレードルフレームとの組み合わせが高い走破性を発揮し、対応力に長けることからアベレージを稼ぐ走り方も得意なことがわかります。

ぬかるみや剥き出しになった木の根をフロントが乗り越えるなど、車体がバランスを崩し、前後タイヤがグリップを失いかけそうであっても、動きの良い足まわりのおかげで極端な空転や不意に食らうスリップダウンはなく、難所もクリアできるのです。
KTMグループでは、KTMはリアサスペンションをリンクレス、ハスクバーナとガスガスではリンク式としていますが、動きが唐突ではなくマイルドな傾向にあるのが後者。ラフなスロットル操作でも挙動は比較的穏やかで、扱いやすさを感じさせる足まわりとなっています。
オフロードがもっと楽しくなる
前後サスペンションを「WP PRO」にグレードアップした上級仕様車にも乗りましたが、筆者の走りではペースが遅すぎたのでしょう、剛性感がさらにあって初期は硬めに感じました。

しかし、アクセルをさらに開けてスピードを上げると、動きがなめらかでダンパーもより頼もしく、しっかり動かすことができれば、知らぬ間にペースも上がっていくではありませんか。
足まわりの動きをより感じつつ、マシンを操ることができれば楽しさが倍増し、走りへの探究心、向上心も増していくばかりです。
セッティングの幅も広いので、エンデューロ/クロスカントリーの相棒として付き合えば、なおさら充実したオフロードライディングを満喫できること間違いありません。
そんなガスガス「EC250-F」の車体価格(消費税10%込み)は130万4000円。戦闘力は抜群ですが、コンペティションモデルとしてはマイルドな乗り心地とも言えるので、競技にエントリーするライダーはもちろん、オフロード入門者や早く上達したい人にもオススメです。
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。