現代を走破する最新ブリティッシュカフェレーサー、トライアンフの『スラクストンRS』!
イギリスで生まれたカフェレーサースタイルを受け継いだトライアンフのスラクストンRSは、クラシカルな見た目ながらも現代の交通事情に合わせた最新の技術が詰め込まれています。実際に最新の2023年モデルに試乗してみました!
イギリスで生まれたカフェレーサースタイルを受け継ぐスラクストンRS
トライアンフは120年以上の歴史を持つイギリスのオートバイメーカー。今回紹介する「スラクストンRS」は、トライアンフの歴史と文化を強く受け継いでいるモデルのひとつです。

名前の由来となっているのは、かつてイギリスのスラクストンサーキットで行われていた「スラクストン500マイル」です。1950年代後半から1970年代前半まで開催されていた耐久レースで、トライアンフが大活躍。ボンネビルT120をベースに製作されたレーサーに「スラクストン」と名付けられたのが最初といわれています。
1950年代後半から60年代初めにかけてのロンドンは不景気にみまわれ、低所得の若者たちの間で、クルマよりも安価なバイクが好まれるようになっていました。主に乗っていたのはトライアンフやノートン、BSAなどの単気筒や2気筒エンジンのバイク。黒の革ジャンと革パンに身を包んだ彼らはロッカーズと呼ばれ、夜な夜なバイクでカフェに集まっていたのです。
その舞台となったのが、ロンドンのノースサーキュラーロード沿いにある「エースカフェ」です。カフェのジュークボックスにコインを入れてロックンロールを流し、その曲が終わるまでに誰が一番早く戻ってこられるかを競う、ストリートレースに夢中になっていました。
より速く走るため、レーサースタイルを取り入れたカスタムが流行。低くセットされたハンドル、シングルシート、バックステップが特徴で、「カフェレーサー」と呼ばれました。現在も世界中に多くのファンが存在し、そのカスタムスタイルを受け継いでいます。

そうして2004年、トライアンフの「モダンクラシック」シリーズにスラクストンの名が復活。往年のカフェレーサースタイルを踏襲しつつも、現代的なエッセンスが盛り込まれています。
最新のスラクストンRSは、いったいどんな乗り味なのでしょうか?
クラシカルなルックスだけど、時代に求められる機能を装備!
第一印象はまさにモダンクラシックって感じです! セパレートハンドルにシングルのシートカウル。マフラーはテーパードされたメガホンタイプでスポーティーです。スピードとタコの二連メーターなんて、クラシカルなディテールが詰め込まれています。

ちなみにカラーはラメ入りシルバーが美しいコンペティショングリーン・シルバーアイス。オプションとしてボディカラーと同色のフライスクリーンと取り付けキットが装備されています。
特にこだわってるな〜と思ったのがタンクの造形です。ニーグリップする部分にエグりの入った細くて長めのタンク。中央に配置されたスチールのタンクベルトがクラシックレーサーっぽい雰囲気です。

それにエノット型のタンクキャップがポイント! 本来はワンタッチで開閉できて、素早く給油できることがメリットなのですが、実は開けるともう一個タンクキャップがあって鍵がついています。クラシカルな見た目を演出しながら、防犯性も確保しているのです。
一方で現代の交通事情に対応したハイテクな足まわりがセットされています。フロントにはショーワ製倒立ビッグピストンフォーク、リアにオーリンズ製フルアジャスタブルショックを採用。ゴールドの輝きがグッと目を引きます!
また、フロントブレーキにブレンボ製M50 4ピストンラジアルモノブロックキャリパー、ブレンボ製310 mm径ツインフローティングディスクを採用。リアは Nissin製2ピストンフローティングキャリパーに220 mm径シングルディスクをセット。前後ともにABSを装備しています。

排気量1200ccの水冷並列2気筒エンジンは105馬力! 最大トルクは低めの4250回転で112Nmとなっています。ドッカンとしたパワフルな加速が期待できそう!! それでいて、欧州の厳しい二輪排出ガス規制、ユーロ5基準規制をクリアしてるというのだからオドロキ。時代に求められる機能をおごった高性能マシンなのです。
トルクフルで走るのが楽しい! 多彩なオプションでカスタムも楽しみたい!
実際にまたがってみると、身長158cmの私で足の親指が接地する程度の足つき。シート高は810 mmとそこそこ高めだし、シートの幅もあるので足つき性はあまりよくありません。

ハンドルはセパレートハンドルですが、グリップ位置はトップブリッジより少し高く設定されているので、そこまで前傾はキツくありません。ステップ位置もバック寄りのミッド。肘に少しゆとりがあるので、ライディングポジションは意外とラクです。
ヨイショッと引き起こすと、結構な重量を感じます。先代モデルより6kgも軽量化されているそうですが、装備が豪華なだけあって車両重量217 kgと重めです。それでも、安定感はしっかりあるので、バランスを崩したりフラついたりしません。
セルスターターでエンジンをスタートさせると意外とアイドリングは静か。さすが水冷エンジンです。
ライディングモードはロード、レイン、スポーツの3種類で、スロットルマップだけでなく、トラクションコントロールの設定も各モードで切り替わるんだとか。

まずはロード。アクセルを開けるとトルクフルながらもスムーズに加速。思ったより振動が少なくて静かですが、ツインエンジンらしいダカダカダカッとした鼓動感はしっかりあって私好みです。
アクセルを開けると力強く加速。ほどよい重量感で操作しやすく感じます。ハンドルが曲がりたい方向へ素直に切れてくれるので、コーナリングでそこまで重さを感じません。無理に力でバンクさせる必要がありません。

スポーツモードではレスポンスよく、ドンッとした加速が味わえます。思わずアクセルを開けたくなる楽しい設定。駐車場の試乗コースなのが残念です。街中よりも、勾配のあるワインディングロードで力量を発揮しそう!
ブレーキもしっかり効いてくれるので、ストレートで加速、グンと減速してコーナリング、立ち上がりで加速…という一連の操作が楽しい! もっと走りたいと思わせてくれる試乗でした。

ちなみに走りが楽しいのはもちろんですが、多彩なオプションパーツがあるのも魅力です。今回の試乗車はオプションのフライスクリーンが装備されていましたが、カフェレーサーフェアリングもあります。ローハンドルバーキットやフットステップなどもあって、好みに合わせたスタイリングができちゃうのです!
トライアンフの公式サイトでアクセサリーのシュミレーションができるので着せ替え感覚で遊んでしまいました(笑)。どんなパーツをつけようか考えるのも楽しいですよね! 夢が広がります。
1年だけの限定カラーというクロームエディションもあるので、カフェレーサースタイルを追求したい人はコチラもオススメです。
■TRIUMPH Thruxton RS
全幅×全高:745 × 1030mm
軸距:1415 mm
シート高:810 mm
車両重量:217 kg
エンジンタイプ:水冷SOHC並列2気筒 8バルブ
総排気量:1200 cc
内径×行程:97.6 × 80 mm
圧縮比:12.1:1
最高出力:105 PS (77 kW) / 7,500 rpm
最大トルク:112 Nm / 4,250 rpm
燃料タンク容量:14 L
タイヤ:前 120/70 ZR17、後 160/60 ZR17
ブレーキ形式:前 油圧式ダブルディスク(ABS)、後 油圧式シングルディスク(ABS)
懸架方式:前 テレスコピック式(倒立)、後 スイングアーム式
フレーム形式:鋼管製クレードル
■メーカー希望小売価格:201万5000円〜208万3000円(税込)