2023年も注目のモデル・ハーレー「ローライダーST」 伝統と最新の装備が融合した乗り味とは
ハーレーダビッドソンの注目モデル「ローライダーST」の実力を検証します。
往年のモデルを現代的にリバイバル
2000年代半ばから、にわかに注目を集めはじめ、2008年から米国でTVドラマ“サンズ・オブ・アナーキー”が放送されることで爆発的人気を博したカスタム、“クラブスタイル”。
ハーレーダビッドソンならではのOHV45度Vツイン・エンジンの振動を緩和するためにエンジン搭載部にゴムを介した“ラバーマウントモデル”のFXRやダイナグライドをベースに、“走りを追求した”仕様のカスタム・ハーレーが、前述の流れのとおり現在もファンの間で高い人気を博しているのですが、そのトレンドにのっとったモデルが、ここで紹介する“ソフテイル FXLRST ローライダーST”です。

2017年にハーレーの現行エンジン“ミルウォーキーエイト”が登場し、以来、“FX系モデル”がソフテイルに統合されたことはハーレーマニアの間で周知されているのですが、2022年に続き、2023年にもニューモデルとしてラインナップされた“ローライダーST”にも、しっかりと“走りの系譜”が受け継がれています。
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今から遡ること41年前、1982年の“ショベルヘッド時代”に“FXRシリーズ”が登場したのですが、このマシンはそれまでのハーレーの『振動』が軽減され、多くのライダーを魅了。
1984年にオール・アルミ・エンジンを搭載するEVO以降も、1991年に限定車として登場した“FXDB-Sダイナ・スタージス”やTCエンジンが登場した1999年以降でも“ラバーマウントFX系モデル”は高い人気でしたが、エンジン・ソリッドマウントながら“FX系”を受け継いだ最新の“ローライダーST”も注目を集めそうなスタイルに仕上げられています。

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まず車両の中で目につくのが往年の“FXRT”を彷彿とさせる巨大なフェアリングなのですが、1983年、ショベルヘッド最終年(厳密にはソフテイルのみがEVOだった1984年)に登場した当時のモデルと比較すると“ローライダーST”はかなり軽快な印象です。
80年代にBMWに対抗すべく、風洞実験を経て、フェアリングのデザインが決定されたといわれる“FXRT”ですが、スピーカーやメーターが装備された当時のものと異なり、新たに設計され、フレームマウントされた“ローライダーST”のフェアリングは、かなりシンプルです。
ショベルやEVO時代の“FXRT”といえばフェアリングの巨大さから乗り手に圧迫感を感じさせるものでしたが、“ローライダーST”に跨って走らせた時の印象を比較すると、良い意味であまりカウルの巨大さを感じさせないものとなっています。

ちなみに過去のカタログスペックを見るとFXRTの乾燥重量は約300kg、対してローライダーSTは327kgとなっているのですが、走らせた印象は圧倒的に2023年モデルのローライダーSTの方が軽快です。
これは117キュービックインチ(約1923cc)まで拡大されたエンジンのパワー感、トルク感による恩恵が大きいかもしれません。参考までにスペックを語ると最新のミルウォーキーエイトエンジンはボア×ストローク/103.5mm×114.3mm、パワーは105HP(78 kW/5020rpm、トルクは168Nm/3500rpmを発揮します。
たとえばフェアリングを備えるハーレーといえば、多くの人はFLH系のツーリングモデルを思い浮かべるのでしょうが、ソフテイルモデルにカウルを備えた“ローライダーST”はそれらに比較して、すべてが軽い印象です。実際の重量も“キング・オブ・ハイウェイ”と称される“FLHTK ウルトラリミテッド”の416kgに対して90kgほど軽い車体となっています。
またかつての“FXRT”は前述したように乗車時に視認性の悪さを感じさせるフェアリングサイズとデザインでしたが、その姿を踏襲しつつも、ひと回りコンパクトとなった“ローライダーST”の装備はツーリングモデルに感じがちな“重々しい印象”もなく、その上で高速走行での快適性も確保されています。

新型のミルウォーキーエイトが登場した際、それまでの“ラバーマウントFX系モデル”のダイナグライドの生産中止を嘆くマニアが多かったのも記憶に新しいのですが、しかし、新型のソフテイルフレームは走行性能に於いても“ラバーマウント”の必要性を感じさせないもの。カンチレバー方式でシート下に装備されたリアショックや43mmシングルカートリッジ倒立フォークが路面からの衝撃をしなやかに吸収します。ローライダーSTの場合、装着されたカウルの効果も相まって、高速でもかなり快適な走行性です。
今回、試乗で様々なハーレーに乗りましたが、個人的には最も好印象だったこの1台。メーカー希望小売価格は303万7800円(ビビッドブラック)ですが、それに見合った性能と所有感を満たしてくれるモデルであることは間違いありません。
Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)
ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。