バイクのスペック表を読み解く! 「排気量」と「内径×行程」の関係は?
バイクのカタログや、メーカーHPに掲載されている「スペック」や「仕様」、「諸元」の表には、購入時の参考やライバル車との性能比較など、役立つ情報が含まれています。「排気量」は、文字を見るとエンジンが排出する排気ガスの量に思えますが、じつは違います!
「排気量」は、吸い込める量を表している!?
バイクの「大きさ」や「クラス」を表したり、車名にも含まれる数字の「排気量」ですが、文字を見るとエンジンが排出する排気ガスの量のように思えますが、じつは「エンジンが吸い込める空気と燃料の量」のことです。

バイクで一般的なガソリンエンジンは、空気とガソリンを混ぜた混合気を吸い込み、圧縮・爆発してエネルギーを生みますが、吸い込める混合気の量で発揮できるパワーやガソリンの消費量が変わるので、「排気量」はそれらの性能の指針になるわけです。
「エンジンが吸い込める空気とガソリンの量」は、エンジンのシリンダーの容積を意味します。そしてシリンダーの容積は、スペック表の「内径×行程」から算出することができます。ちなみにバイク雑誌などでは内径をボア、行程をストロークと表し、「ボア×ストローク」と表示することも多いです。

この内径と行程によるシリンダー内の容積が、エンジンの1気筒当たりの排気量になります。この数値に気筒数を掛け算すれば、総排気量が算出できます。
スペック表では排気量の単位は「cm3(立法センチメートル)」で表しますが、呼び方としては「cc(シーシー)」の方が一般的かもしれません。これは立法センチメートルの英語「cubic centimetre」を略した呼び方です。
「内径×行程」で、バイクの方向性がイメージできる
とはいえ、総排気量も「内径×行程」もスペック表に記載されているのだから、わざわざ算出しなくても……と思われるでしょう。確かにその通りですが、たとえばモデルチェンジで排気量がアップした車両の場合、内径を拡大したのか、行程を伸ばしたのか、それとも両方を広げたのか……がわかると、性能をどんな方向性で伸ばしたのかを、なんとなくイメージすることができます。

あくまで一般論・傾向の話になりますが、たとえば内径を拡大した場合(=ボアアップ)は高回転・高出力化を狙ったもの、行程を伸ばした場合(=ストロークアップ)はトルクの増強が目的だったりします。
ヤマハの「MT-09」でたとえると、2021年のフルモデルチェンジの際に、行程を伸ばして排気量を拡大しており、最大トルクの発生回転数を下げながら、大幅に増強しています(最高出力もアップ)。

ほかにも、バイク雑誌のカスタム車紹介の記事で「ボアアップでφ○○mmのピストンに交換して……」といった表記を目にした際も、排気量を算出したり、チューンナップの方向性をイメージして楽しむことができます。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。