天皇皇后両陛下結婚パレードから30年 御料車に寄り添うサイドカーにはどんな装備が?
1993年の天皇皇后両陛下の結婚パレードの際に、その車列で両陛下をお護りしていたサイドカーが、皇宮警察所属のホンダ「GL1500EMP」です。滅多に見る機会のない儀礼車はどのようになっているのでしょうか。
「ゴールドウイング(GL1500)」をベースにした皇室専用サイドカー
1993年6月9日、心配された雨はパレードを前に止み、天候は回復しました。オープンカーにお乗りになった天皇皇后両陛下には4台のホンダ「GL1500EMP」サイドカーが寄り添い、ご結婚パレードは進んで行きました。

パレードのコースは距離4.25km、約30分の間、途切れることなく沿道に詰めかけた約20万人が祝福し、テレビの最高視聴率は79.2%だったと言われています。
世界中が観たロイヤルウエディングの先導役に相応しい、威風堂々としたホンダ「GL1500EMP」は、皇族の護衛や皇居の警備を行なう皇宮警察に配備された車両です。皇宮警察から依頼を受けて、ホンダが特別に製作したものです。

「ゴールドウイング」シリーズは、1975年にホンダの北米工場で生産され、海外市場で販売されていた「GL1000」から続く、高級感漂う大型ツアラーです。1988年のフルモデルチェンジで水平対向6気筒エンジンを搭載し、「GL1500」となりました。これを機に日本国内にも輸入され、日本のファンもホンダの販売店から購入することができました。

「GL1500」をベースに製作された「GL1500EMP」には、儀礼車独特の上質感と迫力が漂っています。
側車には警護を専任とする皇宮警察官が乗車し、クルマのようにドアを開けて乗り降りするようになっています。また「GL1500」の特徴でもある豪華なリアシートとトップケースは取り払われて、大型のシートカウルへ変更されています。
写真の「GL1500EMP」は車体左側に側車が付いていますが、パレードの際は御料車を囲むように、左側を走るサイドカーは左側に、右側を走るサイドカーは右側に側車が付いています。

栃木県のモビリティリゾート内にあるホンダコレクションホールでは、2023年7月5日まで「働くクルマとバイクの特別展」を開催しており、この「GL1500EMP」はその特別展のために公開されています。
ほかにも、一世代前の皇宮警察用サイドカー「GL1100EMP」や、白バイ、消防用2輪車の赤バイなども展示されています。
■ホンダ「GL1500EMP」(1990年)主要諸元
エンジン形式:水冷4ストローク水平対向6気筒SOHC
総排気量:1520.3cc
最高出力:97ps/5000rpm
車両重量:553kg
【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
Writer: 柴田直行
カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員