進化度合いに驚いた!? ホンダ「ADV160」の魅力は先代譲りの個性と「欲しい部分」を上乗せできたこと!
アドベンチャースタイルの軽二輪スクーター、ホンダ「ADV160」は、2023年型で先代「ADV150」からフルモデルチェンジとなった個性派モデルです。「PCX160」同様のエンジンを搭載し、高速道路の移動をはじめ、あらゆる面で進化が見られました。
スタイルも走りもばっちりハマる、軽二輪スクーターの実力派
「アフリカツイン」や「X-ADV」など、ホンダのアドベンチャーセグメントの双璧をなす2台と親和性ばっちりのスタイル。小さなエンジンながら自動車専用道路も使えるフットワークの良さ。どこへでも行けそうなタフな存在。それが「ADV160」の特徴です。2023年春にエンジン、フレームを一新し、先代「ADV150」からフルモデルチェンジとなった車体をじっくり観察、試乗します。

まずはエンジンです。全くの新型となっています。従来モデルの排気量149ccに対し、新型は7ccアップの156ccへ。ボア×ストロークは高回転に有利とされるショートストロークタイプに。基本設定からパワーアップを狙ったのは間違いありません。世界で活躍する「PCX160」と同様の「eSP+(イー・エス・ピー・プラス)」と名付けられたエンジンを搭載します。アイドリングストップ機構を備えるのは従来通りですが、さらに高い環境性能、燃費性能、走行性能を持たせています。
150時代に搭載されたエンジンから継続されている機能として、燃焼時、シリンダー内をピストンがまっすぐ降下するようにしたオフセットシリンダー、スパイニースリーブ、そして吸排気バルブを駆動するためのロッカーアームの接点に回転するローラーを使うほか、新型では吸排気バルブを各1本から2本としたOHC4バルブヘッドに。
またボア×ストロークを57.3×57.9mmから60×55.5mmへとショートストローク化。圧縮比も10.6から12.0へとアップ。スムーズなエンジン回転を高めるためにクランクシャフトを保持するベアリング等を含め、クランク回りの剛性アップも施されています。ピストンの裏側に冷却目的でオイルを拭きかけるピストンオイルジェットの採用や、カムチェーンテンショナーに油圧タイプを採用するなど、進化度は少なくありません。

フレームはダブルクレードルタイプからアンダーボーンへと変更。先代よりもライダーのフットスペースにゆとりが出た印象で、シート高が780mmへと15mm低くなったのもその好影響かもしれません。グランドクリアランスは165mmで変更は無く、ハイリフトされたスタイルはそのまま。
走りだすとエンジンが滑らかです。シート、ステップ、グリップまわりの振動伝達が減少したことに気が付きます。結果的にバイクの上質さが向上した印象に。そして発進加速もちょっとした追い風で加速するような楽々感があります。60km/h制限の道では、青信号からの加速で流れをリードするのもラク、と言うか、自然と頭ひとつ抜けて走り出すゆとりがあります。先代も遅くはありませんでしたが、一枚上手な速さで、伸びやかで気持ちが良いのです。

一番驚いたのは、高速道路での余裕です。先代「ADV150」は、125ccクラスのボディサイズで高速道路を使える「PCX150」と同様に、イザとなれば高速道路を使える、という印象でした。無風ならまだしも向かい風ともなれば平地でも100km/h維持がきつく、さらにその先に加速するのが難しく、排気量の小ささを実感しました。
しかし「ADV160」はメーター読み100km/h巡航がとても快適で、上り坂でも100km/hを維持することができました。「え、7ccしか排気量増えていないのに?」と、様々なエンジンの進化が表れています。
ツーリング先でのワインディングも軽快さ、安心感のある走りでコーナリングを楽しめます。サスペンションの恩恵でフワフワした印象がなく、一体感がある走りです。ブレーキの効き具合は鋭さこそないものの、充分なコントロール性と性能を持っています。前輪にABSが装着されているのも安心材料。リアブレーキにABSは非装着ですが、リアブレーキは握り込むほどに車体後方から引っ張られるように減速する効き具合で、あえてギュっと握らなければ、後輪がロックしそうにありません。充実のブレーキ力を確認できました。

この「ADV160」には「HSTC(ホンダ・セレクタブル・トルク・コントロール)」が装備されました。雨やダートの道でライダーがアクセルを開け過ぎても、後輪のスリップを効果的に是正してくれる電子制御です。ダート路で試してみました。停止から加速時の介入は「あ、なるほど」と、安心方向に設定されています。
そもそも12kWと巨大パワーではないので、ドライの砂利道なら発進時に少し介入するだけで、あとは伸びやかな加速に移行します。ダンロップ製のタイヤもブロックパターンでグリップ感も良く、この車体で目的地に未舗装路があっても冒険心を楽しめそうです。
「ADV160」は、先代「ADV150」が持つキャラをそのままに、良い部分、欲しいところをさらに伸ばしたコトが確認できました。ちょっと高めのシート位置、オフロードバイクのような上半身が起きたライディングポジションなど、前方視界の良さも優秀。スクーターなだけ、じゃない個性をお探しの皆さん、注目です。
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ホンダ「ADV160」(2023年型)の価格(消費税10%込み)は47万3000円です。
Writer: 松井勉
モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。