別府市ライダーひき逃げ死傷事件 逃亡中の容疑者 道交法違反でも重要指名手配で協議
2022年6月29日、大分県別府市内の県道で、バイク2台が軽乗用車に追突される死傷事件が発生しました。加害者はその場から逃走。容疑者は未だに出頭していません。県警は道路交通法のひき逃げ容疑で指名手配中ですが、事件から1年以上が経過。容疑者が全国の重要指名手配になる可能性が出ています。
“追突”と言うより、クルマを使った“通り魔”的犯罪
2022年6月29日、大分県別府市内の県道で、バイク2台が軽乗用車に追突される死傷事件が発生しました。加害者はその場から逃走。軽自動車の運転をしていたのは、八田與一(はったよいち)容疑者(26)。別府市大分県警が道路交通法違反(ひき逃げ)で指名手配し、行方を追っていますが1年以上経過した現在も逮捕に至りません。早期解決に向けて、被害者家族は最大500万円の懸賞金を用意しました。また、大分県警は「重要指名手配」への指定を求めて協議中です。

前方不注意で起きると考えられる追突事故ですが、軽四ワゴン車を運転する八田容疑者の行動は、直情的にライダーを狙った、としか思えない暴走でした。
大分県の県道別府庄内線、別府公園の西側の路上(別府市野口原先)を走る2台のバイクが信号待ちで並んで停車。このバイクめがけて前方が赤信号であるにも関わらず、制限時速40キロを大幅に超えるスピードで交差点に進入。バイクを30メートルほど飛ばし、自身が運転する軽四ワゴン車もコントロールを失い、交差点先の電柱に衝突しました。
現場にはブレーキ痕はありませんでした。原付を運転していた大学生は死亡。普通自動二輪車の大学生が重傷でした。
両者は面識はなく、唯一の接点は、事故発生の数分前に現場近くのショッピングセンターのバイク駐車場での一瞬、八田容疑者が原付ライダーに言いがかりを付けるように交わした言葉だけです。
衝突後にライダーを救護することなく、八田容疑者はクルマを捨てて裸足で走って逃げました。車内には財布が入ったバックパックや靴が残され、現場から約2キロ離れたヨットハーバーでは、逃走直後に着ていたTシャツが発見されました。
被害者家族は、容疑者の逃亡の強い意志が、解決を長引かせることを心配していました。
道路交通法違反でも「重要指名手配」はできる
このひき逃げ事件について、大分県警は別府署に捜査本部を設置。道路交通法違反ですが、交通部のほか刑事部も加わり捜査を進めています。また、大分県警は警察庁に対して「重要指名手配」の指定を求めました。

通常の指名手配は、事件を担当する都道府県警察が指定します。その中でも、強盗殺人など凶悪犯罪や広域犯罪など、とくに社会的な影響が大きく、真に全国警察を上げて捜査する必要性がある事件を警察庁が指定し、重要指名手配とします。
単独の警察だけでなく、警察庁ウェブサイトの掲載や他の都道府県警察でも手配ポスターが貼りだされるなど、より大きな協力が得られるため、潜伏先が不明の逃亡犯が発見される可能性は高まります。被害者の懸賞金とは別に、公的懸賞金も適用される可能性もあります。
警察庁のウェブサイトに掲載されている重要指名手配は13人。刃物や金属バットなどによる殺人事件や死体遺棄などで、道路交通法違反による容疑者はいません。
歩行中の通り魔は大きな社会不安として取り上げられますが、道路での運転は交通事故に埋もれて社会の反応が鈍くなる傾向があります。それでも警察庁関係者は「道路交通法違反は、指定の足かせにはならない」と話し、大分県警の申し入れには前向きです。
軽自動車を凶器とした殺人ととれる状況が、判断を後押しするとみられます。
警察庁は取材に対して、「捜査中の個別事件について、協議しているかどうかは答えられない」と回答しました。
Writer: 中島みなみ
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。