どんな仕組みになっているのか知ってる? 昔ながらの配達カブに付いている積載装置の謎

最近はあまり目にする機会も多くありませんが、蕎麦屋やラーメン屋など、昔ながらの出前用「カブ」には、インパクトの強い見た目の積載装置がついています。いったいどのような名称で、どのような仕組みになっているのでしょうか。

かつては出前の必須装置だった!?

 最近では目にする機会が少なくなってきましたが、昔ながらの出前に使われるバイクと聞くと真っ先に思いつくのが、荷台についている独特な形の積載装置でしょう。

 しかしいくら目にする機会が少なくなったとは言え、テレビや漫画、雑誌などで目にした事はあると思います。この装置は、どのような名称なのでしょうか。

昔ながらの出前用バイクに装着されている積載装置の名前は「出前機」
昔ながらの出前用バイクに装着されている積載装置の名前は「出前機」

 この装置の名前は「出前機」。出前機は、自転車やオートバイの後部荷台に取り付けられる装置で、丼を載せたお盆や、岡持ちと呼ばれる出前用の容器を積載する役割を果たします。正式には出前品運搬機と呼ばれることもあり、蕎麦屋や中華料理店などの出前に重宝されてきました。

 そんな出前機は、どのような構造で配達をサポートしているのでしょうか。

 この装置の構造は、基台から上方へ延びたアームによって、岡持ちなどの荷物を載せる台が吊られる仕組みになっています。空気ダンパーや金属バネを使ったサスペンションが組み合わせられており、走行時の振動を岡持に伝わりにくくする事に貢献。

 積載用の台は振り子のように揺れる構造となっており、カーブ走行時にバイクが傾いている際も積載用の台の傾きを緩和する役割も果たします。

 なお、この出前機は、丼や岡持ちだけでなく寿司桶などの積荷にも対応できるよう、複数のバリエーションが存在。様々な飲食店が自身のニーズに合わせて出前機を選ぶことができます。

出前機のオリンピックとの意外な関係とは?

 出前機の歴史は、1950年代の日本に遡ります。当時はバイクや自転車による出前配達の片手運転が基本で、危険を伴う為、重大な事故も多発していました。肩に積み重ねた蕎麦のせいろは、見上げるほどの高さにもなったといいます。

 そんな中、ある東京の蕎麦屋の店主が自身で出前機を開発。1959年頃に完成した出前機は最大3段の荷物を運ぶことができるもので、特許も取得。こうして出前機は瞬く間に普及していったのですが、出前機の活躍は飲食店の配達だけにとどまりませんでした。

出前機が活躍したのは出前だけではない。
出前機が活躍したのは出前だけではない。

 1964年の東京オリンピックでは、聖火リレーが日本全国でおこなわれました。この際、予備の聖火を安定して運ぶために、出前機が使用されたのです。

 特に雨風や進路の妨害が予想される場面では、出前機が聖火を守るために大活躍。当時の日本の道路の多くは未舗装であり、クルマで運ぶと振動で火が消えてしまう恐れがありました。

 国を挙げた一大イベントであるオリンピックでも採用されるほどに信頼が寄せられた出前機は、その完成度のおかげか、今でも設計を変えることなく生産されているようです。

 現在は出前機を目にする機会は多くありませんが、かつては飲食店の出前に欠かせない装置として、人々の生活を支えてきたもの。もし目にする機会があれば、歴史に思いを馳せてみるのも面白いかもしれません。

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