バイクのカウルにも植物由来の新素材を採用する日が来る!? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.206~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、木材カウルのバイクが誕生するのでは? と言います。どういうことなのでしょうか?

木材カウルのバイクが誕生する?

「木材カウルのバイクが誕生する」……僕(筆者:木下隆之)がこんな見出しにすると「なんじゃそりゃ!?」と不思議に思うことでしょう。子供用のおもちゃなのかと想像するかもしれません。速度に比例して凄まじい風圧にさらされるバイクのカウルを、木材で成形するなど夢物語のような気もします。ですが、あながち夢ではなさそうなのです。

植物由来の強化樹脂部品をエンジンカバーに採用したヤマハの水上オートバイ「ウェーブランナー」
植物由来の強化樹脂部品をエンジンカバーに採用したヤマハの水上オートバイ「ウェーブランナー」

 ヤマハは水上オートバイのエンジンカバーに、木質資源を活用した強化樹脂を採用すると発表したのです。日本製紙との協業によって開発が進められ、木材から抽出したパルプをほぐし、少量のプラスチックやゴムに混ぜ込むと、強度に優れた樹脂が出来上がります。それをエンジン部品の一部として、ヤマハの水上オートバイ「ウェーブランナー」に組み込んだのです。

 となれば、バイクのカウルに転用されても不思議ではありません。実際にヤマハでは、近い将来にバイクなどの製品群へ展開する計画のようです。

 この強化樹脂は、これまでの樹脂素材より25%以上も軽いようです。ベースは植物由来ですから、二酸化炭素を減らす効果も期待できます。CO2削減が叫ばれている時代に最適な素材と言えるでしょう。また再生資源としても有効のようです。

 欠点があるとすれば、現状ではコスト面でしょう。元々高価でコストを吸収しやすい、つまり価格アップがそれほど目立たない水上バイクから採用したのはそれが理由です。

 今後、量産効果が見込まれればコストも下がるでしょうから、まずは大型バイクから採用されていくに違いありません。

 丸太を削って成形したわけではないので、過酷なバイクの走行にも耐えられます。軽量素材であるということは走行性能にも貢献します。それでいて環境にも優しいのですから、理想的な素材と言えるでしょう。

 早く「木から生まれた部品を採用したバイク」に乗りたいものです。

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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