肌寒かったシルバーストンで感じた、モータースポーツの楽しみ方のスタイル MotoGPイギリスGPでサーキットぶら歩き
2023年シーズンのMotoGP第9戦イギリスGPの取材のため、初めてシルバーストン・サーキットを訪れました。イギリスGPはほとんど終日、冷たい風が吹き、気温も低め。肌寒いなか歩いたサーキットで、観客の姿に感じたことがありました。
サーキットに足を運ぶことは、ごく当たり前な休日の過ごし方?
2023年8月上旬、MotoGP第9戦イギリスGPの取材のため、シルバーストン・サーキットを訪れました。わたし(筆者:伊藤英里)にとって、初めて訪れたサーキットです。

訪れたのは、日本では真夏の炎天下で「鈴鹿8耐」が開催されていた週のこと。
「暑い、暑い」と遠く日本から聞こえてくる声とは裏腹に、シルバーストン・サーキットは涼しかったのです。いや、朝夕に至っては肌寒いを通り越して、寒かったと言ってもいいかもしれません。なにしろ、曇天の下サーキットの中をぶらぶらと歩いたイギリスGPの金曜日、わたしは長袖シャツの上にパーカーを着て、ボトムスの下に60デニールのタイツを履いていたのですから。
それでも涼しい風がずっと吹いており、曇り空で日差しもないので、暑さを感じませんでした。寒いのが大の苦手なわたしですが、周囲の格好を見ても決して「暑い」わけではなかった、と言っていいと思います。

余談ではあるけれど、わたしはこのころ、ロンドンに長期滞在をしながらヨーロッパで開催されるMotoGPを取材して回っていました。いつ暖かくなるのかと待ち続け、8月になってもロンドンでは長袖シャツとパーカーが手放せず、結局、ロンドンを離れる8月末になっても「肌寒~い」まま。イギリスの家には基本的にエアコンがないほど夏でも暑くなかったけれども、近年の気候変動で暑さが増してきた……と聞いていたのですが、どうやら今年は少し、特殊な気候だったようです。
そんなひんやりとしたサーキットの中を、金曜日に少し歩きました。

調べてみると、シルバーストン・サーキットは1948年にスタートしたサーキットだそうです。イギリスにいる間、シルバーストン・サーキットのほかにもドニントンパーク(スーパーバイク世界選手権)、ブランズ・ハッチ(ブリティッシュ・スーパーバイク)に行きましたが、どのサーキットも長い歴史を持っていて、イギリスにおける二輪(四輪も含まれるでしょう)の歴史を物語っていました。
金曜日だったからかサーキットは人が少ない印象だったけれど、歩くうちに、どうやら人が分散しているらしいと分かりました。
シルバーストン・サーキットは観客向けのイベントや出店があちこちにあって、みんな広いサーキットの敷地内で、思い思いの場所で楽しんでいるようなのです。歩きながらホットドッグをほおばる人もいれば、コース脇の金網にかじりついて、熱心にライダーの走りを見る人もいました。年齢層もばらばらで、老若男女、様々な人が歩いていました。

その様子はとても自由で、どの人もサーキットにいること、それ自体を楽しんでいるようでした。キャンプに行くみたいに、週末にサーキットを訪れることが、彼らにとっては当たり前な休日の過ごし方なのかもしれません。
シルバーストン・サーキットの風景に、イギリスにおけるモータースポーツの文化のあり方を感じたのでした。
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。