EV化が進む時代に日本のライダーで良かったと改めて思う ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.212~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、EV化が進む時代に、日本のライダーで良かったと言います。どういうことなのでしょうか?

高価な車体をはるかに上回る資金が必要

 中国が世界屈指のEV大国にのしあがってから久しく、「内燃機関では勝てないからEVで覇権を握る」と、国のトップの号令で数々の法改正が行なわれ、街からガソリン車の姿が消えつつあると、僕(筆者:木下隆之)は感じています。

中国の電気自動車メーカー「BYD」のEV
中国の電気自動車メーカー「BYD」のEV

 ちなみに、EV化が最も進んでいる上海では、グリーンナンバー(EV車のナンバープレート)がほぼ無料で交付されるのに対して、ブルーナンバー(ガソリン車用ナンバープレート)は、競売で競り落とした者だけが取得できるようです。日々落札価格は変動するものの、およそ150万円が必要だと言いますから、開いた口が塞がりません。

 しかもその落札日は月2度、落札率は5%から10%で、運の悪い人は、1年から2年待たなければならないのです。

 さらには、EVには税制上の恩恵があり、ガソリン車には重課税が伴います。上海の街中にEV車が溢れているのも納得です。上海の人々がEV好きだからなのではなく、一部の富裕層を除けば、EVしか買えないわけです。

 とは言うものの、ガソリンエンジン車のバイクからすればはるかに常識的に思えます。ガソリンバイク(スクーターを除く)に必要なナンバープレートの取得には、クルマよりもさらに高い落札価格が設定されています。交付するナンバープレートの数と希望数にもよりますが、コロナ禍前に上海へ訪れた時より高騰しており、なんとガソリンバイク用のナンバープレート取得には約1000万円が必要らしいのです。あの頃はたしか500万円ほどだったと記憶しています。落札確率は限りなく1%に近いようです。

 それでも時折、大排気量エンジンの響く音がしますから、中国の富裕層は底しれぬ資金力があるのでしょう。1000万円など小遣いにも満たない感覚というわけです。

 その豊富な資金力と、経済発展にある上海には憧れることもありますが、エンジンの鼓動や匂い、躍動感の好きな僕が我慢できるかと言えば……やっぱりライダーにとっては、日本の方が良いのかもしれません。

【画像】中国の電気自動車メーカー「BYD」のクルマを見る(3枚)

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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