カスタム用語集Vol.8~「スカチューン」……2000年代を席巻した「ストリートカスタム」の必須ポイント 命名したのは誰?
ヤマハ「SR400/500」や「TW200/225」、ホンダ「FTR」などをベースに、2000年代に大ブームを巻き起こしたストリートカスタムにおいて、なくてはならないのが「スカチューン」です。今回は「引き算のカスタム」の究極ともいえるこの手法について解説します。
正式名称は「スカスカチューン」ではなく「スカッとチューン」!?
1990年代中頃から流行の兆しが見え始め、2000年代に大ブームとなったのが「ストリートカスタム」です。もともとは都内でバイクを足として使いたい若者たちが、ヤマハ「TW200」に乗り始めたのがキッカケと言われています。

バルーンタイヤを履いた独特のスタイリングが彼らの感性にハマった結果ですが、そもそもはホンダ「FTR250」(223ではありません)やハーレーダビッドソン「スポーツスター」のカスタムといった「フラットトラッカー」のスタイリングに影響を受け、その代替車両としてTW200が選ばれたようです。
TW200は、後のストリートバイクブームを受けて丸目ヘッドライトを採用するなど、TW225としてスタイリッシュに変貌しますが、当時は1980年代のオフロードバイクそのままのルックスです。そこで、ベイツタイプのヘッドライト(丸みを帯びたクラシカルな形状の定番パーツ)やスーパートラップ製マフラーなどを装着するカスタムが施されるようになりました。
その際の定番カスタムのひとつが「スカチューン」です。シート下のエアクリーナーボックスを取り外し、パワーフィルターを装着。さらにバッテリーも取り外してバッテリーレス化し、サイドカバーもなくすことでシート下をスッキリさせるカスタムです。「チューン」と名付けられていますが、チューニングというよりもドレスアップに近いカスタムと言って良いでしょう(厳密にはエアクリーナーボックスを廃することで、若干のパワーアップが期待できますが)。

スカチューンによって、少し鈍重に見えるTW200が軽快なルックスに変わります。この手法はその後、SR400/500やFTR(223)、グラストラッカーなどでも定番化し、ストリートカスタム=スカチューンと言っても良いほどに普及します。
バッテリー点火のモデルはバッテリーレス化はできませんが、シート下にギリギリの薄さでバッテリーを収納できる電装プレートがカスタムパーツとしてリリースされるほどでした。
さらにSRカスタムにおいては、カフェレーサーなどはサイドカバーを装着するのが当たり前でしたが、ストリートバイクブーム以降はスカチューンを施すSRカフェレーサーも多く見られるようになりました。他にもボバーカスタムやチョッパーなど、スカチューンはジャンルを問わずに、バイクを軽快に見せたい時の手法として定着したと言えるでしょう。
ちなみに「スカチューン」と命名したのは、数々のストリートバイクカルチャーを生み出してきたモトショップ五郎・代表の吉澤博幸さん(故人)です。吉澤さん曰く、その意味は「シート下に何もなくて、スカッと向こう側が見える」から。そう、スカチューンはシート下をスカスカにしてしまうのではなく、スカッとした軽快なスタイルを手に入れるためのカスタムなのです。
Writer: 佐賀山敏行
カスタムバイク専門誌の編集長を経て、現在はヤマハSR400/500に特化したWEBマガジン「The SR Times」を運営する。自身も現在93年式と14年式の2台のSRを持つフリークだが、基本的にはバイクは何でも好き。