環境問題で注目度が高まった「排出ガス基準」とは? スペック表から読み解く!
バイクのカタログや、メーカーHPに掲載されている「スペック」や「仕様」、「諸元」の表には、購入時の参考やライバル車との性能比較など、役立つ情報が含まれています。「排出ガス基準」はバイクの存続を決めるバロメーター!?
「型式」でも分かる、排出ガス規制の適用
スズキのバイクのホームページで各車のスペック表を見ると「排出ガス基準」の項目があり、現在販売しているバイクの多くが「平成32年(令和2年)国内排出ガス規制に対応」と記載されています。

ほかの国内バイクメーカーではスペック表(主要緒元)に記載はありませんが、ホンダは「環境仕様」、ヤマハは「環境性能情報」、カワサキは「車種別環境情報」の中で、排出ガスの適合規則レベルとして「平成●年規制に適合」と表記されています(スズキも主要緒元と別に車種別環境情報でも表記)。
じつはスペック表のいちばん最初に記載している「型式」の、頭の英数字がそのバイクが適合している排出ガス規制を記号化して表しています。

排出ガス規制は、そのバイクが排出する排気ガスに含まれるCO(一酸化炭素)やHC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)、NMHC(非メタン炭化水素)などの量を規制するもので、国内のバイクにおいては1998年から生産される車両に適用されました。そして段階を経て厳しさを増しながら、現在は「平成32年(令和2年)排出ガス規制」が最新です。
排出ガス規制で消えたバイクも多い
最新の「平成32年(令和2年)排出ガス規制」は、新型車は2020年12月から、継続生産車は原付1種(~50cc)を除き、2022年11月から適用されています(原付1種の継続生産車は2025年11月から適用)。
そのため人気モデルであっても最新排出ガス規制に適合できず、2022年11月までに生産を終了したバイクも少なくありません。
エンジンの基本設計が古かったり、排出ガスの低減に不利な空冷エンジンのバイクだけでなく、高出力のスーパースポーツ系も規制に適合させるのに性能を落とすと商品価値が下がるため、比較的近年に登場したバイクの中にも姿を消したモデルがあります。
最新規制に対応して継続生産!
最新の排出ガス規制に適合せず生産終了したモデルもありますが、反対に新型エンジンにモデルチェンジしたり、部分改良のマイナーチェンジで「平成32年(令和2年)排出ガス規制」に適合したバイクも数多くあります。

たとえば空冷単気筒エンジンで人気のホンダ「GB350」シリーズは仕様変更で排出ガス規制に適合しましたが、「CT125・ハンターカブ」は新型のエンジンに切り替えています。
250ccクラス唯一の4気筒エンジンを搭載するカワサキ「Ninja ZX-25R」シリーズは、最新排出ガス規制に適合しながら最高出力や最大トルクを向上させています。
スズキ「Vストローム250(水冷2気筒エンジン)」は、新型の「Vストローム250SX(油冷単気筒エンジン)」が登場したので、排出ガス規制のタイミング的にも生産終了かと思われましたが、しっかり規制を通して継続生産しています。
「ユーロ5」≒「平成32年(令和2年)排出ガス規制」
排出ガス規制に関係して、近年よく目耳にする文言に「ユーロ5」があります。これは欧州の排出ガス規制のことで、2020年1月1日からスタートしました。

欧州の2輪排出ガス規制である「ユーロ●」は、最初の「ユーロ1」が1999年に始まり、当時の国内「平成11年排出ガス規制」も影響を受けていますが、まだ内容に隔たりがありました。
しかし近年はバイクのグローバル化が加速したため、「平成28年排出ガス規制」は2016年にスタートした「ユーロ4」とかなり近しくなり、そして国内で最新の「平成32年(令和2年)排出ガス規制」は、「ユーロ5」とほとんどイコールの規制内容になっています。
前述した、人気モデルなのに生産終了となったり、反対にコストをかけた新設計で生産を継続するモデルがあるのは、日本国内の人気や販売状況だけでなく、「ユーロ5」を含んだ世界的な状況に応じてメーカーが判断した結果と言えるでしょう。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。