タイヤの性能を示す指標のひとつ「コンパウンド」ってなに?

タイヤのカタログやインプレッション、製品紹介などを見ていると、「コンパウンド」という言葉がよく出てきます。ソフトやハードなど、いろいろな特性を示す言葉なのですが、タイヤの性能にはどのように関係するのでしょうか。

コンパウンドの意味とは

 タイヤのカタログやインプレッション記事、製品紹介など、タイヤを紹介する様々な場面で「コンパウンド」という言葉が度々出てきます。

 ソフトやハードなど、いろいろな特性があるのはわかるのですが、どんな意味をもっているのでしょうか。タイヤとコンパウンドの関係について、見てみましょう。

タイヤの特性を現わすのが「コンパウンド」
タイヤの特性を現わすのが「コンパウンド」

 コンパウンドという言葉はさまざまな分野で使われており、多くの人に馴染み深いものとしては研磨剤を思い浮かべる人が多いと思います。

 言葉としては「混合物」や「化合物」を意味しており、タイヤは一見するとゴムからできていて、複数の素材を混ぜて作られているようには見えませんが、実際は天然ゴムや合成ゴムをベースに、性能を発揮させるために添加物を混ぜるなどして作られているため、コンパウンドという言葉が使われています。

タイヤのコンパウンドの特性は大きく分けて3タイプ

 一般的には、タイヤは天然ゴムや石油から作られた合成ゴムにカーボンと硫黄を混ぜて作りますが、バイク用タイヤは車重が小さくて負担が少ないことから、合成ゴムが主流です。

 なお、カーボンはゴムの強度を確保する効果があり、硫黄(加硫)は弾力を出す効果があります。ちなみにタイヤが黒いのはこのカーボンを混ぜているのが理由です。

 そんなタイヤは実用タイヤからスポーツタイヤまで、基本的にはソフト、ミディアム、ハードの3つのタイプに分類されていて、どのタイヤもこの3種類に当てはまると考えて良いでしょう。

タイヤのコンパウンドは基本的にはソフト、ミディアム、ハードの3つのタイプに分類される
タイヤのコンパウンドは基本的にはソフト、ミディアム、ハードの3つのタイプに分類される

 ハードは硬くて耐久性があり、転がり抵抗も少ないので、実用的なバイク向き。ソフトはその逆で、柔らかいので耐久性や転がり抵抗よりもグリップ重視のスポーツタイヤが主流です。さらに細かく言えば、柔らかいスポーツタイヤのなかにも、ハードからソフトまで設定があったりします。

 というように、コンパウンドはゴムに添加物を混ぜたという意味の言葉ではあるますが、タイヤの評価としては結果的に性能そのものを指すことがほとんどです。

 また、現在では環境問題もあり、ソフトコンパウンドでも耐久性があるゴムや、転がり抵抗を飛躍的に高めつつ、グリップするといった、本来なら相反する性能が求められる時代となっています。

 そのため、元々はカーボンの配合比率などで強度対策が行われていましたが、ここ20年ぐらいの間で使われるようになったのがシリカという素材。以前はクルマのスタッドレスタイヤに使われていた素材で、寒くなっても硬くならずにしなやかさを保つことができるため、強度調整に最適です。

シリカのメリットとデメリット

 シリカはカーボンと同様にタイヤの強度を増すためのものですが、しなやかで熱の影響を受けにくく、熱ダレだけでなく、寒くなっても硬くなりません。

 これがスタッドレスタイヤに使われる理由で、さらに真円を保つ力が強かったり(エコタイヤに使われる理由)、ウエット性能も高かったりとメリットは多々。地球上では酸素の次に多く、地中に大量に含まれているので価格も安い素材。ハイレベルな万能素材として、今ではバイク用タイヤにも欠かせない素材となっています。

 しかし、このシリカにも欠点はあります。まず電気を通さないため、タイヤに溜まった静電気を路面に逃がすことができず、静電気が溜まると走りに影響が出てしまいます。そのため、カーボンには通電性があったので問題ありませんでしたが、シリカを使わない部分を真ん中部分に設けるなど対策が施されています。

 そして最大の問題が生産性。肝心のゴムと混ざりにくいだけでなく、タイヤの芯に使われている金属に対しても付きにくい素材。どうやって混ぜて、うまく製品として形にするかは各タイヤメーカーのノウハウによるので、公表はされていませんが、接着剤的なものを混ぜるなどして対策をしているようです。

タイヤの強度の調整には「カーボン」や「シリカ」が使用されている
タイヤの強度の調整には「カーボン」や「シリカ」が使用されている

 なお、用途や使われるバイクのジャンルに合わせて様々な性能のコンパウンドが開発されているのですが、寝かし込むのが前提となるバイク用タイヤには特有の特徴があります。

 それが複数のコンパウンドを使っていることで、直進時に使う真ん中の部分とコーナーで寝かし込んだときに接地するサイド部分では、タイヤの性能が異なる設定の物も多く用意されています。

 同じように見えるタイヤでも中身はまったく異なるため、コンパウンドを通してタイヤを見てみると、面白い発見があるかもしれません。

 カタログを見るとコンパウンドの特性などについても紹介しているので、タイヤ選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。

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