クルマとバイクで異なる、ホンダの電動化に向けた戦略 ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.222~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、2024年はホンダのクルマとバイクの電動化を見守りたいと言います。どういうことなのでしょうか?

クルマよりもバイクの方が進んでいる?

 ホンダが迷走しているとの噂は尽きません。2040年までにすべてのクルマをEVか燃料電池車(FCV)にすると公表し、世界販売のすべてを一切の排気ガスを排出しないゼロエミッション車にすると宣言したワケです。

ホンダの電動バイク「EM1 e:」
ホンダの電動バイク「EM1 e:」

 ただ、拙速な電動化は遅々として進んでいません。現在のホンダ車ラインナップに、電気自動車も燃料電池車も無いのです。水面下では開発を急いでいるのでしょうが、細々と販売を続けてきた素を燃料としたゼロエミッション車「クラリティ」は2021年に静かに生産を終了していますし、鳴り物入りでデビューしたバッテリーコンパクトの「ホンダe」も2024年1月をもって生産終了になりました。

 ホンダはこれから、一台一台「売れる」ゼロエミッションモデルを増やさなければなりません。

 ですからホンダは、当面はハイブリッドを含むガソリン車を売ることで、電動車開発の原資を稼がなければならない……のですが、その頼みの綱のガソリン車も販売不振が続き、ことごとく生産終了に追い込まれています。

 僕(筆者:木下隆之)が個人的に不可解だったのは、儲けがしらのオデッセイの生産を中止してしまったことです。公式な発表では、生産拠点の狭山工場の閉鎖、ということになっていますが、売れているクルマを生産しないというのは不思議です。百歩譲って、NSXやレジェンドといった販売不振のガソリン車を絶版にすることは理解できても、営利企業が儲かるクルマを作らないという経営戦略は謎です。

 そして、まるで慌てて前言撤回したかのように、オデッセイを中国工場で生産、逆輸入というスタイルで再販売すると発表しました。はなから予定していたことなのか、オデッセイファンの声に押されたからなのかは不明ですが、ホンダ迷走の噂は、そんなところから湧き上がってきたのだと思います。

 もっとも、混迷なのはクルマの方で、バイクは好調のようです。環境問題が叫ばれているいま、バイクだからと言って内燃機関だけに固執していて良いワケではなさそうですが、それでも魅力的なガソリン車を発売し、成功させつつ、それを原資に電動バイクをリリースしています。

 モビリティショーなどでは数多くの電動バイクを発表しています。近い将来の電動化に備えて、着々と準備を整えている様子が伺えます。

 現在のホンダの電動バイクは、わずか4機種に留まっています。ビジネスユースの「ベンリィe:」シリーズをはじめ、パーソナルユースのコンパクトな「EM1 e:」、そして「ジャイロe:」と「ジャイロキャノピーe:」は3輪ですから、デリバリーユースをターゲットにしています。

 質量の嵩むバッテリーを積まなければならない電動化は、バイクにとっては厳しいものがあり、ビッグスクーターやロードスポーツに発展させるのは簡単ではありません。ですからビシネスユースから……なのでしょう。

 そうです、拙速な電動化ではなく、魅力的なガソリンバイクを販売することで、余力を蓄えている様子が感じられるのです。

 ホンダはクルマとバイクを生産する稀有なメーカーですが、戦略には違いがあります。2024年、ホンダの経営戦略を見守りたいと思います。

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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