否定派と肯定派の熱い討論の起爆剤になっている「X」シリーズ

「こんな小さいのはハーレーとは呼べない」
「いや、新しいハーレーの世界の構築だ」
「安価な中国製なのはガッカリ」
「ハーレーが身近になったことを評価したい」

　ハーレーダビッドソン「X350」と「X500」の誕生に沸いています。巷の評価はさまざまで、否定派と肯定派の熱い討論の起爆剤になっているようですね。

　ハーレーといえばアメリカンビックバイクの代名詞です。個性的なスタイルはもちろんのこと、大排気量Vツインが響かせる鼓動は、もはや商標登録されるほどにライダーのハートを掴んで離していません。

　ですが、「X」シリーズに搭載される水冷の並列2気筒からは、あの低回転域でのとろけるようなあの鼓動は感じられません。ファットBOBやロードキングといった数々のビックバイクとは掛け離れた作り込みです。ハーレーとは認めたくない派の気持ちはまずそこにあります。

　ハーレーはアメリカの至宝でもあります。ところが「X」シリーズは、中国製になります。しかも、中国・銭江モーターが買収したイタリア・ベネリがベースになっています。米中のきな臭い関係と感情は無縁だと思いたいのですが、アメリカの至宝が中国企業の軍門にくだったことの違和感が、否定的な意見の根底にあるのかもしれません。

　ただし、アンチ派の不満を一蹴するように、販売は好調のようです。というのも、X350は中型クラスですから、伝統的なハーレーに憧れを抱きながらも、大型二輪免許がないことが理由で諦めてきたライダーにとっては福音です。ウエイトが比較的軽いこともあり、ビックバイクにまたがることに不安がある小柄なライダーにとっては敷居が低いのです。

　価格帯も100万円以下に抑えられています。X350が69万9800円。X500が83万9800円。国産バイクとほぼ同等の値付けです。「この値段でハーレーに乗れるなんて夢が叶った」そう心の中で呟いくライダーも少なくないのでしょう。いわば”ジェネリックなハーレー”なのです。

　これまでのハーレーとは機構的にも隔たりがありますし、そもそもベースはイタリアンバイクなのですから”あの”味わいは希薄です。ですが、バイクビギナーが転がすには贅沢な夢のブランドでありながら日常性を備えています。新しくバイクの世界に足を踏み入れたライダーはもちろんのこと、ハーレー乗りのセカンドバイクには最適かもしれませんね。

　という意味で僕は、「X」がいくらジェネリックであれ、この誕生を歓迎しています。