「パリ~ダカール・ラリー」4連覇!! “砂漠の女王”と呼ばれたホンダ「NXR750」とは

現在のツーリングシーンで代表的なスタイルとなったアドベンチャーバイクは、オフロードの走破性に加え、シールドや大型燃料タンクなどの特徴を備えています、そのルーツは「パリ~ダカール・ラリー」にありました。

アドベンチャーバイクの源流は、過酷なラリーでの勝利にあった

 46回目を迎えた2024年の「Dakar Rally(ダカール・ラリー)」では、モンスターエナジーホンダチームのリッキー・ブラベック選手が自身2度目、ワークスマシン「CRF450 RALLY」は3年ぶり3度目となる二輪部門の総合優勝に輝きました。

1989年に4年連続で「パリ~ダカール・ラリー」を制したホンダ「NXR750」
1989年に4年連続で「パリ~ダカール・ラリー」を制したホンダ「NXR750」

 その舞台は中東アジアのサウジアラビアで行なわれましたが、ここに紹介するホンダ「NXR750」が活躍した1980年代の「PARIS-DAKAR RALLY(パリ~ダカール・ラリー)」は、アフリカの砂漠でした。

 当時のルートは砂漠や岩場のような荒野、サバンナなどあらゆる地形と路面で、走行中の気温は氷点下から50℃以上となり、移動距離は10000km以上、日程は20日間以上と、その厳しさと規模は競技でありながら、冒険的要素が詰まったものでした。

 そこで生み出されたラリーマシンの形態や装備が、アドベンチャーバイクの基を形成していきます。アドベンチャーバイクはこのラリーマシンのレプリカとも言えるような姿で、そもそもアドベンチャーバイクがオフロードでの走破性を大前提としているのは、こういう理由からなのです。

 1980年代の参加車両規則はかなり自由で、参戦したメーカーは自社のエンジンを生かした独自のマシンを投入しました。海外メーカーは水平対向やLツイン、国内メーカーは並列4気筒や排気量800ccにもなるビッグシングルエンジンなど、それぞれ個性あるマシンで参加していました(現在は排気量450ccの単気筒エンジンの車両で行なわれています)。

ゼッケン「100」は優勝ライダー、ジル・ラレイ選手のマシン。メインスポンサーは日本のオーディオ機器メーカーだった
ゼッケン「100」は優勝ライダー、ジル・ラレイ選手のマシン。メインスポンサーは日本のオーディオ機器メーカーだった

 当時のラリーは厳しいルートを走り抜くドラマチックなレース展開が大人気でした。ヨーロッパではその成績がバイクの売り上げに影響し、遠く離れた日本でも、テレビの地上波で連日レポートが流れるほどの注目を集めていました。

 1982年に「XR500R」をベースにしたマシンでフランスホンダが優勝していますが、その後は海外メーカーのファクトリーチームの後塵を拝していました。

 ホンダもメーカーとして本格参戦すべく、HRCが製作したファクトリーマシンが「NXR750」です。エンジンは「NV750カスタム」や「XLV750」の45度狭角Vツインをベースに大幅なチューニングを施し、オフロードバイクのような車体に搭載しました。

 そしてデュアルヘッドライト付きの大きなカウリングと燃料タンクはロスマンズ(Rothmans)カラーに塗られ、1986年の「パリ~ダカール・ラリー」に投入されました。

 このラリーで戦うマシンに必要なことは、疲れにくく、高速安定性と低中速での操縦性の両立、燃費性能、ライバルに負けないスピード、そして最も重要な信頼性でした。完走できないマシンでは勝負にならないからです。

 これらの要素は、そのままアドベンチャーバイクに求められているものでもあります。

巨大な燃料タンク形状はライダーを守る風防効果も得られ、現在のアドベンチャーバイクに受け継がれている
巨大な燃料タンク形状はライダーを守る風防効果も得られ、現在のアドベンチャーバイクに受け継がれている

「NXR750」の燃料タンクは無給油で長く走れるように、59Lのガソリンを車体左右+後部と、3分割で搭載しました。低重心とライディングポジションへの影響を考慮し、車体側面から見るとエンジンが隠れるほど下げられた燃料タンク形状は、その後の「アフリカツイン」などにも採用されています。

 1986年から1989年までの4年間、「NXR750」は負けなしの4連勝を記録します。最高速177km/hでアフリカの砂漠を駆け抜ける性能と優美なその姿から「砂漠の女王」と呼ばれました。

 ホンダは1989年で「パリ~ダカール・ラリー」への参戦を一度終了しますが、「NXR750」のスピリットを継ぐ公道用のアドベンチャーバイクとして、1987年に「トランザルプ600V」、1988年に「アフリカツイン」が誕生し、現在はそれらの後継車も登場しています。

 また、2013年には「CRF450X」がベースのラリー仕様「CRF450 RALLY」で新たなダカール・ラリー(舞台はアフリカから南米へ移った)への挑戦が始まり、現在もその戦いは続いています。

コックピットには巻物状のルート指示書と、デジタル表示のコンパスやメーター類を配置
コックピットには巻物状のルート指示書と、デジタル表示のコンパスやメーター類を配置

「NXR750」が活躍した時代から30年以上が経ち、多くのメーカーからアドベンチャーバイクが発売されてきました。それぞれ何世代もモデルチェンジが行なわれていますが「長距離を走りきって、ライダーを無事にゴールへ運ぶ」という当時のラリーマシンのスピリッツは、現在のアドベンチャーバイクにも共通するものがあるのではないでしょうか。

■ホンダ「NXR750」(1989年型)主要諸元
エンジン種類:水冷4ストロークV型2気筒SOHC4バルブ
総排気量:779.1cc
最高出力:75ps/7000rpm
燃料タンク容量:59L

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)

【画像】ホンダ「NXR750」(1989年型)をもっと見る(11枚)

画像ギャラリー

Writer: 柴田直行

カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員

最新記事