クルマでは一般的なのに、なぜバイクには「ターボ」が無いの?

現代のクルマはスーパーカーから軽自動車まで「ターボ」を装備するモデルが多くありますが、なぜバイクには無いのでしょうか? ターボでパワーが出るなら、バイクもターボ付きがあっても良いと思いますが……。

ごく短期間、ターボ付きのバイクは存在した

「ターボ(ターボチャージャー)」は「過給機」の一種です。バイクやクルマのガソリンエンジン(内燃機関)は、空気とガソリンを混ぜた混合ガスを“吸い込み”、爆発してパワーを発生します。対する過給機付きのエンジンは、混合ガスを“押し込む”ことで、より大きなパワーを発揮します。ちなみに前者をNA(自然吸気)エンジン、後者を過給エンジンと分けて表現することもあります。

市販量産車初のターボバイクであるホンダ「CX500 TURBO」(1981年)は、排気量498ccの水冷V型2気筒エンジンにターボチャージャーを装備し、ホンダ初の電子制御式燃料噴射装置によって最高出力82馬力を発揮。翌1982年には排気量を673ccに拡大した「CX650 TURBO」(100馬力)を発売
市販量産車初のターボバイクであるホンダ「CX500 TURBO」(1981年)は、排気量498ccの水冷V型2気筒エンジンにターボチャージャーを装備し、ホンダ初の電子制御式燃料噴射装置によって最高出力82馬力を発揮。翌1982年には排気量を673ccに拡大した「CX650 TURBO」(100馬力)を発売

 ターボの構造を簡単に解説すると、排気ガスの力で風車を回し、その風車と同軸に備わった空気ポンプが吸気を圧縮してエンジンに押し込みます(過給する)。

 元々は空気の薄い高空を飛ぶ飛行機のために開発された技術ですが、クルマの場合は同排気量の自然吸気エンジンより大きなパワーを出せるのがメリットです。

 熟年ライダーなら記憶があるかもしれませんが、1970年代に盛り上がった“スーパーカーブーム”では、多くの高性能スポーツカーがこぞってターボを採用していました。

 国産乗用車では、1979年に日産のグロリア/セドリックが初めてターボを装備。当時はオイルショックでガソリン価格が高騰していたため、ハイパワーよりもターボのもうひとつのメリットである省燃費をウリにしていました。その後、続々とターボ車が増加して現在に至る……という形です。

 しかしバイクにおいては、現在はメーカー製の市販量産車で「ターボ」を装備したバイクは存在しません……が、過去には日本の4メーカーでターボ装備のバイクを販売していました。ただし、いずれも輸出専用車だったので、国内モデルとしては販売されませんでした。

ヤマハ「XJ650 turbo」(1982年)は、排気量653ccの空冷4気筒エンジンにキャブレターで燃料供給し、最高出力は90馬力を発揮
ヤマハ「XJ650 turbo」(1982年)は、排気量653ccの空冷4気筒エンジンにキャブレターで燃料供給し、最高出力は90馬力を発揮

 世界初の市販量産ターボ車は、1981年にホンダが発売した「CX500 TURBO」でした。翌1982年にはヤマハが「XJ650 turbo」、スズキが「XN85」を発売しました。

 じつは1981年に開催された東京モーターショーには、カワサキのプロトタイプ車も合わせて、国内4メーカーのターボバイクが揃って展示されたのです。その後カワサキは、1984年に市販モデルの「750 TURBO」を発売しました。

 国内の4輪乗用車でターボ車が登場して間もなく、ターボバイクも発売されて最高出力はいずれもベースとなったエンジンの1.5倍ほども発揮していました。にもかかわらず、ターボバイクはどのメーカーもほぼ一代限りで生産終了し、その後は市販されていないのです。

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