幅広い車種に対応するミシュランの最新タイヤ「パワー6」 進化したオンロードスポーツタイヤの実力を検証
ミシュランの最新オンロード用ラジアルタイヤ「パワー6」の実力をジャーナリストの伊丹孝裕さんがテストしました。
幅広い車種に適合するスポーツタイヤ
ミシュランの新製品「POWER6(パワー6)」と「POWER GP2(パワーGP2)」が発表されました。先頃、その試乗会が栃木県内のテストコース「GKNドライブラインジャパン・プルービンググラウンド」で開催されたため、実際に乗ってきた模様をお届けします。
今回は、「パワー6」のインプレッションからです。このタイヤは、「パワー5」の後継モデルとして開発されたオンロード用ラジアルタイヤです。一般公道での使用を前提にしたツーリングタイヤ「ロード6」と、サーキット走行も踏まえたスポーツタイヤ「パワーGP2」の中間に位置するタイヤで、主にワインディングをスポーティに走りたいライダーを想定。
サイズのラインナップは広く、下は250cc用から、上はドゥカティ・ディアベル用の240/45ZR17(リアタイヤ)も用意するなど、あらゆるカテゴリーをカバーするオールラウンドな製品になっています。
実際、テストコースには、ホンダ「CB250R」などの軽量モデルからカワサキ「Z900RS」、ホンダ「ホーク11」といった大排気量モデルまで持ち込まれ、同じ条件で従来製品(パワー5)と比較できる環境が整えられて準備万端。その中からヤマハ「MT-07」を選択し、コーナーが連続するハンドリング路、オーバル状の高速周回路、グリップを低下させた散水路を走行して進化の度合いを体感してきました。
従来モデル「パワー5」からの進化
まずは、パワー5で走り出します。フロント軽やか、リアしっかりがおおまかな印象で、これはミシュランの多くの製品に共通するもの。コーナーの進入ではスッと舵角がついて車体が旋回し始め、出口が見えてきたなら、トラクションとそれに伴うグリップ力を信じてスロットルを大きく開けて立ち上がっていく、というメリハリの効いたライディングを楽しめます。
では、パワー6はどうなのか。基本的なキャラクターはパワー5と同様ながら、ドライ路面では、ハンドリングの軽快感とバンク角が深まっていく際のスムーズさがバランス。寝かし始めのレスポンスはいいのに動きがシャープ過ぎず、路面からの手応えや接地感をきちんと伝えてくれる。そんなイメージです。
ワインディングを想定し、浅いバンク角で走らせた時は、車体の鼻先が曲がりたい方向へスッと向き、もしもコーナーの曲率が大きくなれば起こし、小さくなればさらに倒せる自由度を発揮。これまで走ったことのない、初見の道を走る際でも緊張感を強いられない特性と言えるでしょう。
最新技術のラバー構造「2CT+」を採用
パワー5からパワー6へ改良されるにあたり、大きく手を加えられた部分があります。それがフロントタイヤのラバー構造で、これまではセンター部分にハードラバー、両サイド部分にソフトラバーを配した「2CT」構造でした。今回は、その進化版である「2CT+」構造を採用。明確に3分割されていた2CTに対し、2CT+は、ハードラバーをソフトラバーの下地に回り込ませるように敷くことによって、剛性が高められているのです。
この効果は、ハンドリング路でフルバンクまで追い込んだ時や、高速周回路でトップスピードまで車速を伸ばした時のスタビリティに還元され、よりハードな走りもカバー。重量のあるモデルや、高い運動性が求められるスーパースポーツとの相性もよさそうです。
ウェット路面での高い安心感
そしてもうひとつ。明らかに向上し、多くのユーザーにとってメリットとなるのが、ウェット路面での安心感でしょう。ボイドレシオ(トレッド面全体に対する溝の割合)は、11%と決して高い部類ではありませんが、デザインの最適化とサイド部分に設けられたディンプル状の凹凸が高い接地感に寄与。水の抵抗を感じるほどの散水量の中、フルブレーキやスラロームを難なく繰り返すことができました。
同一条件で直接比較すれば、ロード6の排水性に分があるのでしょうが、スポーツ方向に振ったパワー6でもウェットグリップは充分な及第点に到達。天候が変わりやすい山間を走るような場面でも、頼りになるはずです。
また、サイドウォールにはチェッカーフラッグを模したデザインを施され、ベルベットを思わせる深みのある陰影によって質感を確保。足元を引き締める、プレミアムな見た目にも配慮されています。
パワー6の発売は、2024年1月25日から開始。サイズはフロント2種、リア8種の展開で、オープン価格となっています。
Writer: 伊丹孝裕
二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。鈴鹿8耐、マン島TT、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムといった国内外のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。