「リトルホンダ」を名乗るホンダのモペット「P25」はオシャレな人のペット・カーだった

1966年にホンダがリリースした「リトルホンダP25」は、女性ユーザーをターゲットに自転車感覚で乗れるよう開発されたモペットタイプの乗りものです。「ワン・ツー・スリー!」でエンジンが始動するペダルスタート式の後輪内水平SOHCエンジンを搭載していました。

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 自転車にエンジンを搭載し、ペダルでも走れるが、主にエンジンで走行する乗りものを「moped(モペッド)」(またはモペット)と呼びます。フランスを中心に欧州の大衆の移動手段として流行し、1960年代には欧州のモペットだけでその市場規模はおよそ160万台と言われていました。

バイクよりも自転車に近い感覚で手軽に乗れるホンダ「リトルホンダP25」(1966年型)は、排気量49ccの4ストローク単気筒エンジンを搭載するモペットタイプ
バイクよりも自転車に近い感覚で手軽に乗れるホンダ「リトルホンダP25」(1966年型)は、排気量49ccの4ストローク単気筒エンジンを搭載するモペットタイプ

 ホンダが欧州市場への進出のため、1963年にべルギー工場を開設し、最初に製作したのも「スーパーカブ」のモペット版「C310」です。

 日本国内でも、「自転車のように気軽に乗れる」そして「ヨーロッパのモペットの機能をスマートにミックス」したバイクを模索していました。それが1966年に新登場となった「リトルホンダP25」です。当時のキャッチコピーは「オシャレな人のおしゃれな車」と、バイクではなくご婦人の生活に寄り添った存在の乗りものとして打ち出されました。

 形式名はホンダ「P25」ですが、米国のロックバンド『ビーチボーイズ』のヒットソングにちなんだ「リトルホンダ」というペットネームの方がお馴染みではないでしょうか。

なんとも可愛らしい意匠のスピードメーターは速度30km/hまでの表示。常用速度は25km/hなのでこれで十分。メーター内の文字盤には「LITTLE HONDA」のロゴが入る
なんとも可愛らしい意匠のスピードメーターは速度30km/hまでの表示。常用速度は25km/hなのでこれで十分。メーター内の文字盤には「LITTLE HONDA」のロゴが入る

 ホンダは戦後の創業時から一貫して、誰でも手軽に乗れて生活の役立つ乗りものを提供してきました。「P25」が発売された1966年は、ロードレース世界GPにおいて全クラス制覇の偉業を達成した年ですが、その一方で、モペットまで開発・販売していた事が、より多くの人にホンダが愛されている理由でもあるでしょう。

「P25」にはペダルが付いていますが、後輪内部に排気量49ccのSOHCの4ストロークエンジンが搭載されています。車両的には50ccクラスの原付バイクですが、「原動機付自転車」と正式名称で呼びたくなる乗りものです。

 エンジンのスタート方法は、左手親指でレバーを押しながらペダルを漕ぎ、レバーを離して右手のグリップを回すと始動し、バイクのように走行できます。その掛け声は「ワン・ツー・スリー!」で、自転車から「リトルホンダ」に早がわりするワケです。

 常用速度は25km/hで、ブレーキは左右のハンドルレバーなので、バイクに慣れていない人でも自転車感覚で気軽に乗り出すことができました。

この角度から見るとユニークな後輪内エンジン。オイル注油口の後ろに、ペダル走行への切り替えレバーがある
この角度から見るとユニークな後輪内エンジン。オイル注油口の後ろに、ペダル走行への切り替えレバーがある

 燃料タンク容量は2.5Lと少なめですが、燃費が良く、当時のカタログには「東京から静岡まで走れます。ガソリン代は普通に走って1カ月に100円程度」という宣伝文句が記載されていました。

 現代の目線で見てもオシャレで可愛い「P25」は、欧州や米国にも輸出されました。発売された翌年に封切りされたフランス映画『個人教授』(1967年)の主人公の愛車として登場しています。

 名女優ナタリー・ドロンが年下の青年と恋に落ちる甘酸っぱい物語の中で、フランスの街を「P25」で颯爽と走る姿に憧れて、フロントキャリアにカバンを積んで真似したオジサン達もいたはずです。

 ちなみに、エンジン側面部分に設置されたクラッチのスイッチを上げると、自転車と同じようにペダル走行もできますが、ペダルで走行しても原付扱いなので免許とヘルメットが必要です。

ペダルは主にエンジン始動のために使用。ペダルだけでも走行可能だが、それでも原付扱いなので免許やヘルメットが必要
ペダルは主にエンジン始動のために使用。ペダルだけでも走行可能だが、それでも原付扱いなので免許やヘルメットが必要

「リトルホンダP25」(1966年型)の当時の販売価格は2万9800円です。

■ホンダ「リトルホンダP25」(1966年型)主要諸元
エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ
総排気量:49cc
最高出力:1.2PS/4200rpm
始動方式:ペダル始動
車両重量:45kg(乾燥)
燃料タンク容量:2.5L

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
※2023年12月以前に撮影

【画像】ホンダ「リトルホンダP25」(1966年型)の詳細を画像で見る(11枚)

画像ギャラリー

Writer: 柴田直行

カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員

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