ハーレーにはなぜハイオクガソリンなのか? 「サンダンス」柴崎武彦氏が語るオクタン価と圧縮比の話(後編)

エンジンのノッキング(異常燃焼)はヘッドやシリンダー、ピストンはもちろん、ご覧のようにクランクピンにまで深刻なダメージを与えます。日本のガソリン事情を考えると海外仕様のチューニングパーツをポン付けすることが如何に危険かはご理解頂けると思います。ちなみに現在のハーレーは純正のクランクがオーバーホール出来ないようバラでのパーツ供給がなく、アッセンブリーでの交換を推奨していますがユーザー側の金銭的負担は甚大です。サンダンスではクランクをバラした上でウエイトバランスを取り、シビアな芯出し作業を行いオーナー側の金銭的負担を軽減するよう努めています
まずヘッドとシリンダー、ピストンを取り外し、コンロッドが剥き出しの状態で前後左右に動かしてガタを確認した後、クランクケースを分解して取り出されたクランクアッセンブリー。プレス等を用いてここを全てバラバラにします
上の新品と比較すると中心に段減りが確認出来るノッキングを起こしたエンジンのクランクピン。この傷の深さからも巨大なパワーが如何にエンジンダメージを与えているかが良く分かります
エンジンがノッキングを起こしていない下のクランクピンと上にあるノッキングを起こしたエンジンのクランクピンを比較してもダメージのほどが伺えます。上のクランクピン、センター部のエグりをご覧頂ければお分かりのとおり、これが高圧縮が原因のノック現象によるクランクダメージの典型的な症状です
ヘッド燃焼室はご覧のようなビュレットという測量液を使い、体積を測定します。この車両(XL883L)の場合、実測での燃焼室体積は52ccだったので実圧縮比は10.6。これを安全な圧縮比である9.5にする為には燃焼室の体積を6cc分、拡大しなければなりません
燃焼室加工の際にはヘッドガスケット面に青ニスを塗り、シリンダーに合わせてボア径の円をケガキます。何処をどのくらい削るかということも多少、性能に影響しますので出来るだけプラグ側を削るのが良いでしょう
燃焼室加工の際にはヘッドガスケット面に青ニスを塗り、シリンダーに合わせてボア径の円をケガキます。何処をどのくらい削るかということも多少、性能に影響しますので出来るだけプラグ側を削るのが良いでしょう
今回、お話を伺った柴崎武彦氏は1982年にサンダンスを創設して以来、“走る、曲がる、止まる”というファクターに重きを置いたカスタムビルドを信条とするハーレーダビッドソンのチューニングのスペシャリスト。1989年にレース活動をスタートし、1992年から米国のデイトナスピードウェイで開催されるツインレース“BOT”にオリジナルのレーシングマシンである“デイトナウエポン”で参戦。1998年には“デイトナウエポン㈼”であの鈴鹿8時間耐久にも参戦を果たす。数々のレース活動やストリートでの経験を活かしたハーレーらしい鼓動感に溢れるマシン造りに定評のある人物です。また海外のH-Dシーンでも関係者から“Zak”の愛称で呼ばれ、親しまれています
2005年式XL883Lのノーマルシリンダーを生かしてφ81mmボアアップされ、排気量1000cc(正確には996cc)となったキットが組み込まれたマシンですが、ヘッド側の燃焼室体積が無加工の場合、ノーマルの圧縮比である9.4が10以上になり、ノッキングが発生した例。完全ノーマルの9.4:1でも空冷1000ccの2気筒エンジンでは限界に近い圧縮比であることは覚えておいておきたいポイントです。このエンジンは相当、ストレスがあったエンジン特有の青い焼き色がコンロッド小端部に確認出来ます
ヘッド燃焼室はご覧のようなビュレットという測量液を使い、体積を測定します。この車両(XL883L)の場合、実測での燃焼室体積は52ccだったので実圧縮比は10.6。これを安全な圧縮比である9.5にする為には燃焼室の体積を6cc分、拡大しなければなりません
空冷H-D Vツインエンジンの圧縮限界値を示すチャート表。オクタン価の高いガソリンが入手可能な米国と異なり、日本のガソリン事情ではコチラの数値がノッキングを起こさない安全マージンとなっています。石油元売り5社の“ハイオクガソリン虚偽記載”の報道があったことを考えても、この基準値は守って頂きたいところです
燃焼室をおおよそ削ったところで再度、ビュレット測定を行ってから6cc近く体積が増えたことを確認してから燃焼室の壁を平らに仕上げます。わずか6ccとはいえ、いざ削るとなるとかなりの体積になります。また排気量が大きくなるにつれ、圧縮を1下げる体積量は大変になっていきます。現在の日本のガソリン事情を考えても必須の作業です

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